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女になりたいと思う瞬間

時間というのは、残酷だ。
魂がちぎれる、とまで思った痛みすら、
研磨して滑らかにしてしまう。

私は女になりたい 窪 美澄

若い頃の恋愛は、エネルギッシュで儚くて、何度でも立ち上がれた。
でも、年を取ってからの恋愛は、致命傷になる。

47歳、バツイチの奈美は離婚してから仕事一筋の美容整形医師だ。
仕事一筋の奈美が、たまたま薄毛治療で病院に来ていた
業平公平と出会って、ひょんなことから交流を深めていく。

自分が一人で立つため、弱い自分をどこかに忘れるため
恋愛をしないというか、できない。
そして、そんな自分にも気がつきたくない。
この奈美の気持ちがよくわかる。

毎日を一人で生きているように感じている私にとっても
とても共感できる。
苦労してるやん。今も
そんなことを思ったこともなかった。
すべての責任は自分にあると。
この気持ちは痛いほどわかる。
私も自分の人生のいろいろは、すべて自分の責任だと思っている。
いや、今もそうだと思っている。
むしろ子供たちのいろいろも自分のせいだと。

そう思っている女が恋に落ちるのなんて一瞬だ。
すべてを受け入れてもらった時だ。
自分でいいのだ。こんな私を女として、受け入れてくれる。
欲しい言葉をくれる。
それだけで十分だ。

絶対に忘れるものかと心に誓った。
つきあう、と決めた夜に、なぜそう思ったのかは不思議だが、
これが自分にとって最後の恋になるだろう、という
強い予感があったからだ。

私も、最後の恋をする時そんなことを思うのだろうか。
絶対に忘れるものかという、瞬間なら今もあるが、最後の恋ではなかった。
これから先、恋をするかわからないから最後かもしれないが。

大人になって、女でいることの難しさを感じるようになった。
仕事で責任が増せば増すほど、それは強くなる。
それを、一瞬で女に引き戻せる相手はそうそういない。
恋は、そうそう現れるものではないのだ。
だからこそ、面白くもあり、楽しくも苦しくもある。
私は思う時が来るのだろうか。
奈美が最後に思ったように
もう一度女になりたい
と思う瞬間が。

Written by なおこ

アラフォー女


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