会う人を洗脳する彼女の存在とは!そしてその本性とは! 【BUTTER】
会う人を洗脳する彼女の不思議な魅力
彼女の不思議な感覚を作り上げたものとは
【本の基本情報】
〇ジャンル:日本文学
〇本の種類:単行本
〇著者名:柚木 麻子
〇出版社:新潮社
■「BUTTER」について
本作品は、第157回直木三十五賞の候補作品です。
惜しくも受賞はのがしたものの、話題性は十分な作品でした。
書店でも人気の小説として特設コーナーにも並べられているのをよく見かけました。
確かにこの「BUTTER」というタイトルと不思議な装画が人の目を引きます。
「BUTTER」というタイトルでその小説の内容を色々と想像した人も多いでしょう。
そして、読んでいくうちに想像を超える内容に引き込まれていきます。
■料理と人間のリアルな描写が特徴!
この作品は読み進めていくと
バターを使った料理のリアルな描写が実に多く描かれています。
メインの内容は、高齢の男性を殺害した容疑で刑務所に入っている女性に
1人の編集者が彼女への単独取材を行うというものです。
最初は、この料理の描写が、この女性とどう関係があり、何の意味があるのかと不思議に感じますが
容疑者となった女性の心理的な部分と、彼女に単独取材をする女性記者の心理的な部分とが
料理というものを通して実に絶妙に絡み、繋げていくのが見えてきます。
料理や食欲、それを提供するもの、それを提供されるもの、男女のリアルな心情の絡みあい
これらの関係性にどんな影響を及ぼすのか、料理と人間の心理が実にうまく、リアルに描写されているのが本作品の大きな特徴と言えます。
さらっと読んだだけでは、この二つの絶妙な絡みを読み取ることは難しいかもしれません。
または、分からないという状況になるかもしれません。
殺人容疑をかけられた女性を中心にして、料理というものでつながった人間たち
彼らの過去と彼女の持つ不思議な魅力。
それらの関係性がジワリジワリと明らかになっていきます。
大きな驚きというよりも、現実の普段の生活の中でも起こりうるであろう静かに進むこのリアルを描いている不思議な作品だと感じました。
■「BUTTER」を読んで!まとめ
本作品は、大きな驚きやハラハラドキドキという展開は感じませんが
なぜか、じっくりと読み込んでしまうという不思議な作品でした。
この小説のメインの背景である
高齢男性を殺害した容疑をかけられた女性に対する独占取材と世間の反応。
実はこの背景は実際に起こった事件をモデルとしていると思われます。
だからこの小説にジワジワとのめりこんでしまうのでしょう。
想像できない、現実離れした作品ではないということが
より読者をひきつけ、それが実際の起こったことであるかのような錯覚に陥らせます。
淡々と進む容疑者と、その料理の描写、そして容疑者と接する人たちの心情の変化。
容疑者の女性に、徐々に共感し、自分を重ねて肯定的な気持ちを持ってしまう人間の心の奥に潜む心情。
誰にも言えなかった心に眠る感情が徐々に表に現れていく様子が実に繊細に描かれています。
女性同士の関係の中で起こる、実に複雑な人間関係とその心情
容疑者である女性を中心に、バターを使った料理が繋ぐ複雑な人間関係が実に細かく描かれた
最後までじっくりと読み込んでしまう作品でした。