見出し画像

あなたの愛は永遠に続くと言えますか【四月になれば彼女は】

愛の多様さに、あなたはどう向き合うか・・・

【本の基本情報】
〇ジャンル:小説
〇本の種類:文庫本
〇著者名:川村 元気
〇出版社:文春文庫

■「四月になれば彼女は」のあらすじ

4月、精神科医の藤代のもとに、初めての恋人・ハルから手紙が届いた。
だが藤代は1年後に結婚を決めていた。
愛しているのはかわからない恋人・弥生と。
失った恋に翻弄される12か月がはじまる―――
なぜ、恋も愛も、やがては過ぎ去ってしまうのか。
川村元気が挑む、恋愛なき時代における異形の恋愛小説。
※裏表紙より引用

■恋とは、愛とは、結婚とは。。。

本書は、まさに恋や愛といった人間の中の感情の1つについて、その正体とは?その正解とは?について描かれています。

主人公の男性と、その周りの男女が作り出す恋、愛、結婚といった、愛の形。
そのどれもが正解と言えるのか?それが真実なのか?永遠なのか?

当たり前のようで、実はとても深く
そして1つの形にとらわれない、多様な愛の姿。

本書を読んでいると、その当たり前と思っていた「愛」というテーマについて
自分自身の中でも考えさせられてしまいます。

答えは出ないのかもしれないけれど
その当たり前とも言える感情について深く考えることで、これまでの日常が残酷に見えてくることもあるかもしれません。

■「四月になれば彼女を」を読んで!まとめ

わたしは愛したときに、はじめて愛された。
それはまるで、日食のようでした。
「わたしの愛」と「あなたの愛」が等しく重なっていたときは、ほんの一瞬。
避けがたく今日の愛から、明日の愛へと変わっていく。
けれども、その一瞬を共有できたふたりだけが、愛が変わっていく事に寄り添っていけるのだと思う。
川村 元気(2019).「四月になれば彼女は」.文春文庫.P.264

この部分を読んで、すごく深く考えました。
お互いの愛が一瞬重なる。同じ大きさ同じ形。同じ速度。

それは本当に一瞬。

だけどその一瞬を感じることができた二人は、また変化にも向き合うことができる。

そんな意味を持っていると私は感じました。

人それぞれ愛の形や大きさ、重さ、表現は違う。
人の数だけその違いがある。
だけど、何かのタイミングでそれが重なることがある。

その瞬間を感じることができた二人は、貴重で奇跡的なことだと思いました。

恋愛の始まりの時点で、お互いの愛をしっかり理解していますと思うかもしれないが
それをお互いが同じように感じているか、それを確かめる方法はありません。

しかし、一瞬でもそれを感じることができる。
それは感覚的なものかもしれないけれど、その瞬間に出会えることは本当に奇跡なんだと思いました。

だからこそ人は、愛というものを求め続けるのだと思いました。

本書の中で、愛について考え続けた主人公が、最後、クライマックスに向けて
愛の瞬間に出会います。
そこから、その感情が溢れ出てくる様子が伝わってくる、臨場感にあふれた表現で最後まで目が離せずに読み抜きました。

最後の最後に、主人公が行き着く場所に
目をつぶると、その様子が実にリアルに想像できて、自然と安心感が、胸にジンと湧いてくるエンディングでした。

本書を読んで、日常でそれほど深く考えない、愛というものを再度考えてみることができました。
だからといって答えは出ないと思いますが、相手の事を再度想うきっかけとなりました。

一緒にいるのが当たり前、その当たり前が、お互いが感じる愛の一瞬を見逃してしまっているかもしれません。
もう一度お互いの愛を振り返ってみるのもいいかもしれませんね。

そして本書でもう1つ印象に残ったのは、最後に掲載されている、作家の「あさのあつこ」さんの解説です。
勢いのある雰囲気で書かれた解説が、実にこの作品の本質に迫っていると感じました。

四月になれば彼女は_記事TOP


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?