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明日死んでも百年生きても触れたいのは彼だけ【自転しながら公転する】

自分は何故こうなんだろう
自分がどうなりたいか、どうしたいか

悩み一生懸命生きようとする女性の姿に誰もが共感する

自転しながら公転する_読書記録B

【本の基本情報】
〇ジャンル:日本文学
〇本の種類:単行本
〇著者名:山本 文緒
〇出版社:新潮社

■「自転しながら公転する」について

本作品は、2021年本屋大賞にノミネートされ見事第5位を獲得した山本文緒さんの作品です。
その他にも、第27回島清恋愛文学賞を受賞しています。

手に取ってみると、その本の厚さに、これは読了までには時間がかかるだろうなぁと感じます。
単行本で400ページを超える長編小説です。気合を入れて読み始めたのを覚えています。

本屋大賞で5位を受賞した作品だけあって
書店員さんからの評価も高く、特に女性の読者の方からは「共感できる」という声が多い作品です。
実際に私の身近で読まれた女性の方たちも、この作品は多くの女性が抱えている心の悩みを素直に表現しているという感想を言っていました。

女性目線の小説というイメージを持って読み始めましたが
読み始めて感じたのは
男性が読んでも十分に小説の世界に入り込めるということです。

登場する人物の人間関係など、現実にあるような関係がリアルに描かれているので
共感できる部分が多くあります。

男女問わず、楽しめる
両親や友人、そして恋愛という様々な場面にある人間の心を表現した人間的な作品です。

■家族・友人、そして恋愛。今の自分って

30代になった主人公の女性。
体調を崩している母親を病院に連れていく、そのために両親と一緒に暮らしている。

そんな主人公の職場での人間関係や友人との関係、そして恋愛。

ごく一般的にある状況の中で、一所懸命に自分のことを考えながら生きている主人公である30代の女性の心の中を実に繊細に描いています。

周りはどんどん変化して、成長して幸せになっていく
そんな周りを見ながら、どうして自分は、自分が思ったような理想の幸せにたどり着けないのか

でも理想の幸せって何?自分自身がそれは何か、どうなりたいのかが分からない。
今のままではダメだと思いながらも、何をどうしたらいいのか分からない。

一所懸命生きようともがき、悩む姿。
その主人公の姿が、読み進めれば読み進めるほど、リアルにそして身近に感じることが出来ました。

女性に限らず、男性でも同じような悩みを抱えている人は多く。
多くの方が共感できる主人公の姿が、だんだんと愛おしく感じられる、そんな優しくなれる作品です。

■「自転しながら公転する」を読んで!まとめ

本作品では、30代を迎えて両親と暮らし、仕事、友人、恋愛といった、普通の男女が送る毎日が描かれています。

この作品では主人公として30代の独身女性が描かれていますが
男性でも同じような状況で、同じような気持ちを持って暮らしている方は多いと感じました。

女性独特の心情がより繊細に描かれていることは確かだと感じましたが
男性でも共感できる部分がとても多く、また女性の心情を知ることもできる作品だと感じました。

主人公の女性が、一生懸命に生きる姿にとても身近さを感じてしまいました。
両親との関係も、友人との関係も、そして恋愛も。

全てにおいて、少しのズレがあって
何となくうまく行かない、でも何をどう変えたらいいのか分からない。
自分でも何が正解なのかが分からない。

そんな毎日を過ごしながら、将来の自分の幸せを考える、そしてまた不安な気持ちに駆られる。

この主人公の女性生き方に読み進めていいくうちに愛おしさを感じました。

一見恋愛小説かなと思うのですが、それはまさに30代の男女が抱える人生の悩み、将来に対する悩み不安を描いた人間ドラマだと感じました。

悩み、悩み、悩み、そしてやがて吹っ切れた時に
主人公の女性が選んだ道。

最後に見せた、その素敵な行動に最後の最後にグッと心を掴まれました。
誰でも自分の将来に不安があります。

自分自身でも決められない。

いい時もあれば悪い時もある。
まさに、この30代という年齢で誰もが経験する「自分の人生」についてじっくりと焦点をあてた作品だと感じました。

この作品を読んで、これは自分と同じ気持ちがと共感する方は多いのではないだろうか。
そして、この作品で次へと進むことの不安が、そして怖さが少し和らぐのではないかと感じました。

身近な優しさ、温かさを感じることが出来る作品でした。
読み終えたころには、この主人公の女性に、「よかったね」と声を掛けたくなりました。

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