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この熱く激しい思いをぶつけられるのはあなただけ 【冷静と情熱のあいだ Rosso】

ずっと、ずっと、この日を待っていたんだ。

​【本の基本情報】
〇ジャンル:小説・恋愛
〇本の種類:文庫本
〇著者名:江國 香織
〇出版社:角川文庫​

■「冷静と情熱のあいだ」のあらすじ

穏やかな恋人と一緒に暮らす、静かで満ち足りた日々。
これが私の本当の姿なのだろうか。
誰もが羨む生活の中で、空いてしまった心の穴が埋まらない。
十年前のあの雨の日に、失ってしまった何よりも大事な人、順正。
熱く激しい思いをぶつけあった私と彼は、誰よりも理解しあえたはずだった。
けれど今はこの想いすら届かない―――。
永遠に忘れられない恋を女性の視点から綴る、赤の物語。
※裏表紙より引用

■本当に愛し合った二人の想い

本書は、恋愛小説である。
激しく愛し合った過去の二人。

今は、違う彼との何の不自由もない生活。

しかし、その生活の中で、なんとも満たされない思いを抱えている自分がいる。
彼の事は好き・・・

だけど・・・

この言葉が、聞こえてきそうな場面が何度もあります。

本書では、過去に激しく愛し合った男女の女性側からの想いや行動を描いた作品です。

誰もが羨むような今の彼との生活の中で
彼女は、自分の心に一生懸命言い聞かせます。
今が幸せなのだと。

しかし、その閉じ込められた。
自分で閉じ込めたその想いは、ある出来事をきっかけに爆発します。

本当に愛し合った二人の想いが、再び重なるとき、その感情は、激しい情熱をもって蘇ります。
冷静と情熱のあいだ。
まさに二人の感情の流れを描いていると思いました。

■「冷静と情熱のあいだ Rosso」を読んで!まとめ

先ほども書きましたが、本書は恋愛小説です。
激しく愛し合った昔の彼を、忘れようとするけど忘れられない。

そんな女性の想いを舞台を「ミラノ」において描いたものです。

彼女は昔の彼と、あの雨の日に別れました。
本書では度々、ミラノの雨の町の様子が描かれています。

その町の雨の様子は、彼女の心の中を描いていると感じました。
芸術的で繊細な街並に雨が降ることで、何か寂しさを感じる街並へと変化する。

必死で今が幸せだと言い聞かせる彼女の心の中にある、過去の彼を忘れられない辛さと寂しさ。

彼女の心の中とミラノの雨の降る街並みが重なっているなぁと感じる部分が度々ありました。

そして、最後に彼女が訪れた「フィレンツェ」。
この町ではミラノとは対照的に、晴れの日が多く描かれています。

彼女の中にある情熱的な部分を表すように、壮大で明るい景色が印象に残るように描かれています。

本書は、過去に熱く激しい恋愛をし、その恋愛が終わってしまった女性の想いを描いています。
その想いと並行して、背景となる街並みが想いの変化を絶妙に表現していると感じました。

冷静と情熱、そのあいだで揺れる女性の心。
その心を、繊細であり、時に壮大と思える姿の街並みと重ね合わせることで
読者の頭には彼女の感情の変化が、よりリアルに浮かぶのではないだろうか。

そしてその背景が、本書をただの恋愛小説にせず
繊細で美しい、微妙な心の変化、実にうまく表現され、彼女の心がよりリアルに読者へと伝わる一助となっていると感じました。

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