新規事業の担当者が読んでおきたい本
最近本を整理していたら、過去に読んで眠らせていた本を発掘でき、少し懐かしくも楽しい気持ちになった。
新規事業に初めて触れた時は、右も左もわからずひたすら本を読んだり、ネットで記事をあさったりした。
そんなことを思い出しながら、これから新規事業に触れる方、より深く触れる方に向けて読んでおいたほうが良いと感じた本を紹介する。
新規事業の実践論
麻生要一さんの「新規事業の実践論」
まず、外せないのがこれである。麻生さんはリクルートの新規事業開発室長として、約1,500以上の新規事業を支援してきた実績を持つ。そのノウハウを生かして、今はアルファドライブを創業し、大企業向け社内新規事業の支援をおこなっている。
私は、日本で新規事業がなかなか育たない理由は、大きく「企業の体質」と「経験量の不足」にあると考える。
「企業体質」は新規事業で初年度から利益を求めたり、ユーザー目線ではなく企業の目線で事業を組み立てたりしてしまう部分を指す。「経験量の不足」は、新規事業を立ち上げる人材は上手くいくと大体その事業の責任者となり、また別の初めての人材が新しい事業を立ち上げる。経験のある人間がやったほうが確率は上がるのに、そうならない状況が日本の新規事業市場だと感じる。
この2点を補い、困ったときにどう進むべきかを細かく具体的に解説するのがこの「新規事業の実践論」である。
この本では、社内新規事業を社内起業として捉え、立ち上げるための具体的な方法論を「WILL」「創業メンバー」「事業ステージ」「立ち上げ方法」「社内での動き方」「経営陣のするべきこと・してはいけないこと」「社内起業かとして生きるための心得」という区分で細かく説明している。
例えば、企業内で新しく事業を起こす際に必ず発生する、「社内への説明」について、社内会議の攻略方法や会話の段階ごとの状態性、問題点などに気付けるような構成になっている。
新規事業を体系的につかみたい、という方は必読の一冊である。
RUNNING LEAN~実践リーンスタートアップ~
こちらは、有名な「リーンスタートアップ」をより実践向けに仕立てた一冊。
リーンキャンバスをベースに、チームの作り方、課題インタビューの方法、見込み客の見つけ方、ソリューションインタビューなど、様々な手法や考え方を順を追って説明してくれる。
この本では、基本的な事業創出の流れを「課題/解決フィット」→「製品/市場フィット」→「拡大」という3つに分け、それぞれのブロックで必要なこと、重要なポイントを伝える。
更に上記のような大きな流れに加え、細かい部分、例えば「セールスレターの書き方」などの具体アクションまで触れた、かなり親切な説明書となっている。
新規事業開発の入門書としては見逃せない一冊だ。
ビジネスモデル図鑑2.0
そもそも、新規事業を考えるときにビジネスモデルの知識が必須となるが、その知識を大きく飛躍させてくれるのがこの「ビジネスモデル図鑑2.0」である。
ビジネスを作る際、5W3H(いつ、どこで、誰が、何を、何故、どのように、いくらで、どのくらい)の検討が必須となる。この要素を組み立てたものがビジネスモデルであり、世の中のビジネスモデルを知っているのといないのとでは、アイデアの幅に大きな差が出る。
しかし、意外と身近なサービスですらビジネスモデルなんて知らないものである。考えてみて欲しい。例えば普段何気なく見に行く映画は、どのようなビジネスなのか。パッと答えられる方のほうが少ないと思う。
この、ビジネスモデルの知識不足を図鑑的に補ってくれる本書。
国内・国外の100のビジネスの仕組みを図に表し、どんなサービスがどのようなステークホルダーと、どのようなつながりを持っているのか、どこでお金が発生しているのかをわかりやすく説明している。
もし「こんなことがやりたいな~」と考えた際にこの図鑑を開いてみれば、すでにビジネスとして展開している似たようなサービスを見つけることができるかもしれない。
直接的に新規事業の実践的な方法は記載されていないが、新規事業に携わる者なら読んでおいて損は無い。
リクルートのすごい構創力
リクルートは、企業家を多数輩出する企業家養成機関となってきている。
会社のバリューには「新しい価値の創造」と掲げられ、常に新しいことにチャレンジする風土が根付いている。そんな企業の中の考え方やフレームワークを丁寧に解説したのがこの「リクルートのすごい構創力」である。
この本では、主にリクルートの十八番であるマッチングビジネスの手法が解説されている。これを「リボンモデル」と呼び、ビジネスのポテンシャルをはかったり進め方の指針を作ったりするフレームワークである。
リクルートは、旅行者と旅館を結びつける「じゃらん」や、髪を切りたい利用者と美容室を繋げる「ホットペッパービューティー」、結婚を控えるカップルと結婚式場を繋ぐ「ゼクシィ」など、ユーザーと企業をマッチングさせるビジネスを多く展開する。
このマッチングさせる流れをリボンに見立て、それぞれのフェーズ、状態がどう進めば最終的に結び目でマッチングされるのかを可視化するのが「リボンモデル」である。
この本では、リボンモデルを使ったビジネスの検討はもちろん、その後の事業の育て方や型を作って横展開していく具体的手法まで、細かく書かれている。
これからの世の中は、情報が溢れ、モノが飽和し、個人の選択がよりコストを伴う状態となる。ここで適切なヒト・モノ・コトがマッチングできる環境を作る部分に、大きなビジネスチャンスが存在する。
これを実現するための方法が書かれた貴重な一冊である。
132億円集めたビジネスプラン
最後は今では多くの人が知るネット保険会社「ライフネット生命」誕生の背景を、創業者である岩瀬さんが語った本である。
この本では、事業を検討し、立ち上げ、拡大していく大きな流れを、ライフネット生命の立ち上げストーリーをもとに解説している、超実践的な内容となっている。
内容としてすごいのは、当時の思考過程から実際の分析方法、戦略の立て方、更に財務戦略と組織作りなど、事業というよりは企業の作り方を網羅し、かなり具体的に記している点である。
ボストンコンサルティンググループ出身の岩瀬さんのロジカルな思考と、泥臭く動き回り事業が作り上げられていく過程を惜しみなく開示し、ストーリーとしてもかなり読みごたえがある。
実際に132億円を集めたビジネスプランを組み立てる方法を、その肌で体感してみるのはとてもいい経験になると思う。
いくつかの新規事業に役立つ本を紹介したが、事業立ち上げの過程では更に色々な本に知恵や知識を与えてもらっている。
そういった部分的なものも、いつか紹介できたらと思っている。
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他にも、新規事業にまつわる下記のような投稿をしているので、興味があればぜひ。
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