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授業で地域のことばっかりやるのって、大人からのすり込みなんじゃないの。

最近良くも悪くも「地域課題解決型」の教育を小学校、中学校、高校で目にすることが多くなりました。もちろん大学でも。

PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)、アクティブ・ラーニング、探究学習など、生徒や学生が主体的に学ぶ場が増えることには大賛成です。

なんてったって僕はパウロ・フレイレの『被抑圧者の教育学』に大きな影響を受けていますし、ファシリテーターとして仕事もしているので、対話的で主体的な学びは大好きです。

でも、その学びの場が「地域」だけに向くのは、どうなのかな?と思ったりもします。だって、地域に関心がある子もいれば、世界に関心がある子もいるはず。

それにも関わらず、主体的な学びの場の題材は、自分のまちや地域であることが多いのです。

確かに日本は大きな人口減少社会のなかにあって、東京への一極集中、地方の人口減は大きな課題です。だから大人たちが、子どもや若者にまちや地域のことに関心を持ってほしいのは、本当によくわかります。

なんなら自分は地方をフィールドに「わかもののまち」というNPOをやったり、商店街で小さな図書館を運営しているくらいですから、若者たちには地元のまちづくりに参加してほしい!と、常日頃考えています。

でも、それを公教育の現場でやってしまうのはどうかと思うのです。(もちろん、学校外の場であっても)

とくに中高生の時代は、自分の将来を方向付ける時期と言っても過言ではありません。就職をしたり、特定の専門分野を選択して進学をしたりと、大きな変化が伴う時期です。

自分は、年間10回くらいは全国のいろんな大学に呼ばれて講演をする機会があるのですが、ここ数年の驚きは、どの学部で講演をしても「まちづくりに関心がある!」と言ってくれる学生さんがいることです。なんなら国際系の学部で講義をさせていただいたときでさえなのです。

自分は「まちづくり」の最前線で仕事/活動をしているので、こういう学生さんに会うと正直めちゃ嬉しいです。あ、また同志を見つけた!って気持ちになれます。

でも、最近そんな学生さんが増えていることを肌で実感して、大人が、この社会が、洗脳してしまったんじゃないかと、ちょっと怖くなったりもします。

誤解が生まれそうなので、先にお伝えしておくと、自分は地域やまちのことに子ども・若者が関わるのは大賛成です。それでまちで主体的に活動をしてくれる子が増えてくれるのは本当に嬉しいことです。

そして、「まちのここを変えたい」「まちづくりをしたい!」と言ってくる子ども・若者の思いに応えられ、挑戦を応援できるまちでありたいとも考えています。そんな思いで、ここ3,4年は、静岡市で高校生まちづくりスクールの事業も担当しています。

しかし、その思いは必ずしもまちや地域に関することだけでなくてもいいのではないかとも思うのです。最初にも言ったように、世界に目を向ける子がいてもいいし、東京でバリバリ働きたい!と思う子がいてもいいと思うのです。

だって、だれがどこでどんなことをしたいかなんて、どこに住むかなんて、その人の自由じゃないですか。

でも、地方の人口減のまっただ中にいる大人たちは、「東京に住みたい」「世界に行きたい」という子ども・若者を見ると、ちょっと怪訝そうな顔をして「でも、いつかは戻ってきてね」と言っちゃったりするわけです。

これは本当に難しい問題です。なんなら、この記事を書いている自分自身もたまに「戻ってきてね」と言っちゃったりしますから。

自分が心配しているのは、子ども・若者が大人に忖度をし過ぎて、自分自身の将来さえ、自分で決めることができなくなってしまっているのではないか、ということです。

いまの子ども・若者たちは、大人の空気を読むのがとっても得意です。少子高齢化の時代ですから、生まれた時から大人の方が多いのです。大人の空気を読むのが、子ども・若者世代の生存戦略です。

そんな時代の子ども・若者だからこそ、大人の言うことを素直に聞いてしまいます。昔みたいに、盗んだバイクで走り出す若者もほとんどいません。(そんな自分も25歳ですが 笑)

こんな時代だから、大人の一言一言は大きな影響力を持ってしまうのです。それも学校で、「地域に関心を持て」「まちづくりに参加しろ」と教えていたら、その影響はより強くなります。

何度も言いますが、自分は学校で地域やまちのことを取り上げるのは大賛成です。なんなら、そうした授業の外部講師として呼ばれることもよくあります。

でも、それだけじゃダメなんじゃないの?ってのを言いたいのです。もっと色んな可能性や選択肢を考えることができて、「東京に住みたい」「世界に行きたい」という子ども・若者と出会ったときに「いいね!」と言える社会でありたいと思うのです。

少なくとも私たち大人は、自分の発言がどれくらいの影響を持っているのかを考えなければいけないと思います。それが目の前の子ども・若者の人生にどれくらいの影響を与えているのかを。

そんなことを考えながら、この週末も「わかもののまちづくり」に関するワークショップを担当するのです。



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