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4.においが大事

イヌの鼻の機能は、ヒトのそれに比べてはるかに高いと言われています。外部の嗅覚情報(分子)を受け取る嗅覚受容体の数も違えば、その情報を信号に変えて脳に送る嗅神経の数も違います。この数の違いからも機能性の差は明らかなのでしょうし、それゆえに普段の生活における嗅覚の利用頻度も大きく異なるのも当然なのでしょう。

また、ヒトにはないあるいはほとんど使われていないと考えられている「鋤鼻器(じょびき)」というフェロモンを捕捉する器官も機能していて、ヒトには理解しにくい知覚-感情のルートも備わっているようなのです。

「犬の能力 NATIONAL GEOGRAPHIC 2020年11月号」は、「3週間前にガラスのスライドにつけた指紋さえ、イヌはにおいで識別できた。さらに、このスライドを屋根の上で1週間放置し、雨風や日光にさらした後でもにおいを検知できた」と嗅覚の鋭さを指摘し、「時の経過によるにおいの変化が分かる以上、彼らの時間間隔はにおいに結び付いていると思われる。においが薄れてゆく過程は、時計の針の動きのように規則的で予測可能だからだ」と、イヌたちにとって嗅覚が生活する上で重要な位置を占めていることを示唆しています。

多くの研究者が指摘するように、イヌはにおいを嗅ぐことを単なる情報取得手段としているのではなく、快刺激を得る手段ともしているのかもしれません。

イヌが散歩中に草むらのにおいを嗅ぐ行為は、時として、飼い主には不可解な行動に映るでしょう。しかし、思春期の子どもが親から関心事へのアプローチを制止されたら不愉快に思うように、においとり行動を無理矢理やめさせる行為は、イヌにとって非常な嫌悪刺激、ストレッサーとなっているのかもしれません。

ヒトの知覚-感情-行動とイヌの知覚-感情-行動がまったく異質のものであること、特に嗅覚という知覚経路はイヌにとって非常に重要な情動発生システムを担っていることを認めるだけでも、イヌにとってはいくばくかの幸せを得られるのではないかと思います。


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