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13.骨のトレーニング

今回は骨のトレーニングです。

骨のトレーニングとは、ひとえに「骨密度を高める」トレーニングです。

骨はコラーゲンの土台にカルシウムやマグネシウム、リンといったミネラルが付着してできあがります。土台となるコラーゲンは食事で摂取するたんぱく質が体内で分解・再合成されてできあがりますので、材料となるたんぱく質やミネラルを経口摂取することが必要です。また、いくらたんぱく質やミネラルを摂取したところで、それが骨形成につながるためには、ビタミンや各種ミネラルなど触媒となる栄養成分やホルモンなども必要です。

骨を強くする材料もいろいろあるんですね。でも、残念ながら材料が集まっただけでは骨は強くなりません。運動が必要なんです。

自然界で見られる現象に、「圧電効果」あるいは「ピエゾ効果」というものがあります。物体にひずみを与えるとプラスとマイナスの電荷が発生するという現象です。実は、骨の強化過程では、この圧電効果が重要な鍵を握っています。

骨の土台は毎日破壊と形成が繰り返されています。破壊作業は淡々と進められますが、形成作業には電荷の発生が必要です。ひずみによる圧電効果でマイナス電荷が発生した側で骨芽細胞という細胞によるコラーゲン形成作業が活性化するのです。

骨のひずみが大きいスポーツ、ウェイトリフティングの選手は骨密度が高く、低衝撃の環境下で行われるスポーツ、スイミングの選手はさほど高くなりません。特段の運動もせずに気圧の低い環境で過ごした宇宙飛行士の骨密度はかなり低くなっていると言われています。これらの違いは、圧電効果が生まれる環境下での運動がなされるかどうか、ということによるものなのです。

さて、イヌの骨を強化するのはどうしたらいいのでしょうか? フライングディスク競技やアジリティをやらせれば骨は強化されるでしょう。ただ、後肢への衝撃が大きすぎる運動は、主に膝関節を傷めるリスクも高くなります。そのため、WDA(WIZ-DOG ACADEMY)は、骨の強化トレーニングとして、普段の散歩中での階段の下り歩行を勧めることにしています。主に前肢の骨強化策となりますが、後肢の骨に衝撃を与える運動はケガとの隣りあわせとなりますので、なかなか効果的な運動はやらせにくいんですね。安全にやらせるとなると、バランスボードに後肢を乗せて揺らしたり、腰におもりを乗せて歩かせるくらいのものでしょうか。あまり手軽にできる運動ではありません。立ったまま歩かせる普通の「散歩」でも十分な効果は得られるだろうと考えているのです。

骨を鍛えることは、オステオカルシンという、骨を強くするだけでなく、認知機能の改善や血糖値を下げる効果も期待されている成分の分泌にもつながります。

是非、イヌたちの骨に軽いひずみが生じるような運動機会を与えると骨を強くする、ということを頭の片隅に置いて散歩していただければ、健康長寿のささやかな一助になると思います。


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