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12.筋肉のトレーニング

今回は、カラダの重要な運動器パーツである「筋肉」を強くする方法について書きます。

筋肉の鍛え方には大きく分けて2つの道筋があります。1つは筋力を増強させるトレーニング、もう一つは筋持久力を増強させるトレーニング。速筋線維と呼ばれる大きな力を発揮する筋線維が多い白筋(速筋)を太くするトレーニングが筋力強化トレーニングで、遅筋線維と呼ばれる持久力をもたらす筋線維が多い赤筋(遅筋)周辺の毛細血管を増やすトレーニングが筋持久力強化トレーニングです。

まずは筋力を強化/維持するための運動について説明します。

イヌも歳をとると、階段を登ったり、立ち上がったりすることができなくなることがあります。これは、主に後肢の筋力が衰えた結果です。前体重のイヌは前肢よりも後肢の方が衰えやすくなっています。階段を登ったり立ち上がったりする時には、後肢の筋肉に力を入れて、股関節や膝関節、足根関節などを伸展させなければなりません。関節を伸展させる時に力を入れる筋肉は「伸筋」と呼ばれますが、この「伸筋」は抗重力筋という、自分の肢で立つための筋肉とほぼ同じです。イヌが上手に立ったり歩いたりするための四肢の筋力強化運動は伸筋強化がポイントとなります。

自分の力で立てないイヌを自分の力で歩かせるためのリハビリテーション、再歩行リハビリテーションにおいては、まず「歩くための運動」ではなく「立つための運動」から始めます。その時に行われる運動療法が四肢の伸筋を強化する運動です。この、イヌのリハビリテーションで用いられる運動療法は、加齢とともに衰えつつある高齢犬の四肢の伸筋の筋力を維持するためのトレーニングにも大いに参考になります。

イヌの再歩行リハビリテーションでは、伸筋を強化/維持する運動として、立てないイヌを対象とした立位保持運動から、座り立ち運動、階段登り運動、エネルギーがありあまった若い犬などを対象とした重いバッグなどを背負わせた坂道登り運動まで、いろいろな運動療法を、そのイヌの状態に応じて適度な強度・頻度でやらせます。運動全般に言えることですが、やりすぎは禁物です。

次は持久力強化/維持のための運動です。いくら心肺機能がしっかりしていても、筋肉に十分な酸素が供給されないことには長い時間の運動はむずかしくなります。そのため、筋肉周りの毛細血管を増やして酸素が行き渡りやすくなる運動をさせることも必要です。いわゆる筋持久力の強化トレーニングです。これは、長時間の散歩、できればあまり途中の休憩時間を増やさないやや速足での長時間の散歩、こんな散歩を日ごろ継続することが手軽で効果的だ思います。チャンスがあれば、スイミングはさらに効果的な筋持久力強化/維持トレーニングとなります。

WDA(WIZ-DOG ACADEMY)では、スタッフやトレーナー、受講生などと一緒に、四肢に衰えが見え始めた高齢犬のための、筋肉、骨、神経などが上手に協調して機能するための後肢トレーニングの研究を開始しています。


科学的思考を育てるドッグトレーナースクール ウィズドッグアカデミー

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