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12.圧電効果

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)という、骨がスカスカな状態になる症状に陥った高齢者の話や、運動不足のせいなのか日光浴不足のせいなのか、はたまた栄養の偏りのせいなのか、骨折しやすくなった最近の子供の話などをよく耳にしますよね。骨はカラダを支える大切な運動器官。骨が大切なのは犬も同じです。いえ、こと骨の丈夫さに関して言えば、ヒトより激しく動き回って遊ぶ犬たちの方が、より重要なのかもしれません。

犬たちがいつまでも楽しく健康に過ごすために、どうしたら丈夫な骨が作れるのか?

今回は骨のお話です。

骨が作られる仕組

ヒトや犬のカラダは、皮膚も筋肉も、そして骨も毎日毎日少しずつ新しいものに作り変えられています。これを新陳代謝と言います。生き続けるためには非常に大切なカラダの中の反応です。

骨は、破骨細胞(はこつさいぼう)というコラーゲンやカルシウムを除去する細胞に破壊(吸収)され、骨芽細胞(こつがさいぼう)という骨を作る細胞により再生(形成)される、そんな反応が日々繰返されて新陳代謝されています。こう書くと破骨細胞って悪者のようにも思えますよね。でも、破骨細胞のおかげで骨に貯蔵されたカルシウムが体内に供給されるわけで、カラダにとってはこの2種類の細胞の働きのバランスがとても重要なんです。

運動時に、骨芽細胞が骨を形成する合図になるのは、骨への縦方向への衝撃です。

骨は硬いのですが弾性を持っていて、衝撃によりゆがみが生じます。図のように、ゆがんだ側と反対側に電気分極が生じ、骨の構成成分となるカルシウムイオン(Ca2+)などがマイナス極の方に集まります。骨芽細胞が分泌するコラーゲン等が糊の役目をして周辺のカルシウムイオンなどを骨に吸着させます。こうやって硬い骨ができあがるわけです。

圧電効果による骨形成イメージ図

丈夫な骨を作るには?

骨作りには日光浴やホルモンも大切ですが、健康な犬において丈夫な骨を作るには、運動もことのほか大切です。今回は主に運動に関してお話します

前述したように、骨を形成するには衝撃がポイントとなります。破骨細胞は電位差には影響されませんので、衝撃がなくなると相対的に骨芽細胞の働きが弱まり、骨の形成量が減ってしまいます。壊すばかりで、作られる作業が少なくなると骨はスカスカになってしまうんですね。骨への衝撃が少ない寝たきりの人や宇宙飛行士などは骨が弱くなってしまいます。つまり、衝撃が与えられないと両細胞のバランスが崩れてしまい、「強度」「密度」「しなやかさ」を持った骨は作られなくなる、というわけです。

では、骨に衝撃を与える運動ってどんな運動なのでしょう?

ただ歩くだけでもいいのですが、より効果的な運動として、階段の上り降りを加えるとよいと思います。ジャンプや急なダッシュも効果は高いと思いますが、あまり高負荷の運動を、急にやらせたり限度を超えてやらせたりするとケガをするリスクも高くなります。普段のお散歩コースに階段を入れてみる、広い場所でロングリードで走らせてみる、そんな程度で骨の形成には十分効果があると思いますよ。

最近、骨芽細胞が働くときに出るオステオカルシンやオステオポンチンというタンパク質が、記憶力や免疫力を向上させると報じられました。イヌもヒトも、一緒にお散歩すれば、骨が丈夫になり若々しく元気になります。是非、毎日散歩に連れ出してやりましょう!

■ ひとつだけ、老婆心ながら、栄養に関して一言。骨を丈夫にしたいから、と子犬のころから過剰にカルシウムを与えると、逆に骨形成を阻害することがあります。特定の疾病の治療のために信頼できる獣医から指示されているのであればやむをえませんが、健康な仔犬へのカルシウムのサプリメント補給などは、控えた方が安全だと思います。

WIZ-DOGドッグトレーナー 田端 圭子


科学的思考を育てるドッグトレーナースクール ウィズドッグアカデミー