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小学館からも「セクシー田中さん」に関する調査報告書が出たので読み比べてみた

 どうも、ゑんどう(@ryosuke_endo)です。

 日本テレビの調査報告書が出されたのを受けてなのか、時期が重なっただけなのか、示し合わせたのかはわかりませんが、小学館側からも「セクシー田中さん」問題に関する調査報告書が公表されました。

 内容を読んでみた率直な感想を書くならば「おいおい…ここまでか」と。

 今回は、この二つを読み比べてみた内容を書いていくことにします。

合致している点

 まずは、2社から出された報告書の内容から合致している部分についてみていきます。

 概ね、スケジュールや経緯といった事実関係については双方での齟齬はありません。そりゃ、そうだよって話なのですが…

スケジュールと経緯

初回打ち合わせ
 両社の報告書とも、2023年3月9日に日本テレビと小学館の担当者が初めて面談し、ドラマ化に向けた準備を進めることが決定されたと記載​​​​。

企画決定
 日本テレビの報告書では、2023年4月25日に10月期のドラマとして正式に決定したことが記載されており、小学館の報告書でも同様の経緯が記載されていることを確認。

脚本家の選定
 
両者の報告書において、4月にドラマ版「セクシー田中さん」の脚本家が選定され、プロットが進められたことが記載されています​​​​。

原作者とのやり取り

プロット修正
 原作者である芦原妃名子氏から、ドラマ版「セクシー田中さん」のプロットや脚本の修正を求める意見を提出し、それに基づいて再度修正が行われたことが両社の報告書に記載あり。

トラブルの発生

コミュニケーションの不足
 
両社の報告書に、原作者の意図を反映させるためのコミュケーションが不足していた旨の記載あり。両者とも対面での打ち合わせが不足し、電子データでのやり取りが主であったため、細かなニュアンスや意図が伝わりにくかったことを指摘。

 合致している部分は、遠くから見ていても「そうだろうなぁ」って思っていたことが記載されているだけで、改めて珍しい事実関係があったわけではないってことがわかるものとなっています。

 問題は次ですよ、次。

齟齬がある点

 複数の報告書が出されることの意義って、ここにあると言えます。両者で意見の食い違いや視点の違いから起こる齟齬。

 視点が異なる以上は、どうしたって認識に違いがあったりするものですが、「セクシー田中さん」における問題点を如実に表していると思えるものでした。

脚本家とのトラブル

 「セクシー田中さん」騒動に関しては、脚本家とのトラブルがあったことがインターネットを彷徨っているだけでも理解できましたが、双方の視点で明らかな齟齬があります。

日本テレビの視点
 日本テレビの報告書では、脚本家が原作に忠実でないプロットを提出し、これに対する原作者の不満が原因でトラブルが発生したとしています。が、日本テレビ側は、原作者の要望に可能な限り応えようと努力したとも述べています​​。

小学館の視点
 一方、小学館の報告書では、日本テレビ側が脚本家に対して原作者の要望を十分に伝えなかったことが問題の一因であるとし、双方の意見に食い違いがあることがわかります。

 また、脚本家が原作のエピソードを入れ替えたり、オリジナルのシーンを多く含めたりしたことが、原作者の強い不満を引き起こしたと明確に脚本家や日本テレビ側の責任を糾弾するものとなっており、原作者側に立った憤りを感じさせるものとなっている点は注目に値します​。

契約と監修の問題

日本テレビの視点
 さらに、日本テレビ側は契約条件や脚本の監修について、可能な限り原作者の意向を尊重し、契約書も適切に整備していたと記述しています​。

小学館の視点
 が、小学館の報告書では、日本テレビ側が契約条件や監修体制について十分な説明を行わなかったことが問題として挙げており、ここでも双方で食い違いが起こっています。

 特に、契約の詳細や監修のプロセスについての説明が不十分であり、これがトラブルを引き起こしたと明記されていることから、日本テレビ側の責任を強く追求するような姿勢だと言えます。

SNS対応

日本テレビの視点
 この辺りは我々でも目にすることとなった点ですが、SNSでの炎上について。

 なんと、日本テレビ側は迅速に対応し、原作者や脚本家に対する非難を最小限に抑えようと努力したと書いています。なるほど。あれがそうなのかと。

小学館の視点
 一方、小学館の報告書には真逆のことが書かれており、SNS炎上に対する初動対応が遅れたことが問題として挙げられ、SNSでの発言に対する適切な指導やサポートが不足していたことが原因と記載されています。

 なんとも悲しいことではありますが、事実として、日本テレビ側と小学館側とで熱量というか、思い入れに大きな隔たりがあったと思えるような内容となっている点は見過ごすべきではないでしょう。

個別の問題と組織の問題

 双方の報告書を読んでみると、当然ながら登場人物が被ってくる点があります。

 たとえば、小学館の報告書内で触れられている日本テレビ社員Yは、日本テレビの報告書内でいう社員Aに相当するのですが、この社員の立ち振る舞いや対応を見てみると以下のような形です。

初期対応
 2023年3月9日の初回打ち合わせにおいて、日本テレビ社員Y(日本テレビ側の報告書でおそらくA)は、小学館側から芦原氏が自分の作品を大切にし、細かい指示をする「難しい作家」であることを日本テレビ側に伝えられたと小学館側は明記しているのですが、日本テレビ側は「原作を大事にする」という発言を明確に覚えていないと回答​​。これは、初期段階でのコミュニケーション不足を示唆しています。

社員 A と社員 B は、3 月 9 日、小学館において日本テレビ社員 X 氏と 日本テレビ社員 Y 氏と面談した。面談の目的は日本テレビからの挨拶であっ たが、社員 A は、芦原氏が自分の作品を大切にする方であり、作品の世界観 を守るために細かな指示をする所謂「難しい作家」であるから、原作に忠実 で原作を大事にする脚本家でないと難しいと伝えた。

対して日本テレビ社員 Y 氏は、原作が大好きで、すごく面白いからドラマ化したいと述べ、当然、 原作に忠実にするとのことであった。なお本委員会からの質問に対して、日 本テレビ社員 Y 氏は、「『原作を大事にして欲しい』という趣旨はお聞きしま したが、脚本家はどういった方がいいという話までは出ていなかったと記憶 しています」「 『当然、原作に忠実にする』という発言はしておりません」と 回答している(特別調査委員会からの質問(以下「本委員会質問」)に対す る回答)。

同日の面談では放映開始時期について日本テレビが同年 10 月期を 考えているとのことだったが、社員 A らは 10 月期では、芦原先生はこだわ りが強いから、脚本監修の時間が足りなくなる恐れがあり、1 月期が望まし い旨を話した。

 もう明らかにコミュニケーションの齟齬が発生しており、議事録はどうなっていたのかと。

脚本家の選定

 脚本家の選定においてもコミュニケーションミスが発生しており、4月5日に脚本家候補が提案され、19日に件の脚本家に決定した際、とある社員は、芦原氏の意向を十分に伝えたかどうかが曖昧。

 4 月 5 日、日本テレビから脚本家候補者として本件脚本家ほか 1 名の提案が あり、同氏の代表作リストも添えられていた。この時点では芦原氏は異論を述 べず、その後同月 19 日に本件脚本家に決まった。 

 同日、日本テレビ社員 Y 氏 から漫画が未完であることからオリジナルドラマの着地点の相談を受け、社員 A は、所謂「ネタバレ」を避けるため最低限の全体構成案を示し、それをベー スにするように求めた。

 その後日本テレビからは本件脚本家が書いたプロットが送られてきたが、芦 原氏は登場人物の性格のとらえ方について説明したり、細かい修正を加えたり、 原作中のエピソードの入れ替えに対してはやむを得ない場合を除いて原作に従 うことを求めたりして、日本テレビはプロットの修正版を作成した。その経過 15 は以下に詳説するとおりである。

 芦原氏は修正等を求める都度、その理由まで をも明確に書き、社員 A が日本テレビに伝える作業を繰り返した。しかし再度 日本テレビ側から送られてきた修正版プロットや修正版脚本に、芦原氏の修正 要請が反映されていないこともあった。一方、芦原氏の前記傾向から、原作が ないドラマオリジナル部分の扱いが重要と考えた社員 B は芦原氏の意思を確認 し、その後、次ウ項(ウ)のとおり、日本テレビ社員 X 氏に芦原氏が脚本を書 く場合もあることを伝えた。

 日本テレビ側は、4月15日の初面談で原作へのこだわりが強いことを伝えたと述べていますが、これが十分に伝わらなかったことはことの顛末を見る限りは明らかでしょう。

対応の問題点

プロット修正の対応
 原作者である芦原氏からの修正依頼が頻繁にあったにもかかわらず、その要望が十分に反映されなかったことはすでに明らかになっていますが、特に、エピソードの順番やキャラクターの描写に関する意見が反映されなかったことが、芦原氏の不満を増大させたと見て間違いなさそうです。

契約と監修の不備
 さらに、契約条件や監修体制についても十分な説明が行われなかったことが伺えます。

 特に、契約の詳細や監修のプロセスについての説明が不十分であったため、芦原氏が脚本に納得できないまま進行したことを含め、あらゆる面で原作者へのフォローが欠如していたとみて間違いなさそうです。

おわりに

 結局、コミュニケーションの問題だったり、主観と客観が入り混じる中で仕事をすることの大変さを実感する内容でしかなかったのですが、もうね、何よりも原作者である芦原氏が絶望しながら仕事をせざるを得ない状況になっていたんだなってことが苦しいですね。

 自分の仕事に当てはめることってのは中々に難しいことなのですが、もうね、悲しいですよ。

 今後も、同じようなことが起こってほしくはないのですが、日本テレビ側の報告書を読む限り、中々に難しそうです…。

 はぁ…もうちょっと晴れやかな気分になりたかったんですけどね。

 ではでは。

 ゑんどう(@ryosuke_endo)


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