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【映画感想】THE FIRST SLAM DUNK

どうも、ゑんどうです。

上映前から何かと話題になっていた作品、『THE FIRST SLAM DUNK』を劇場で観戦してきました。

1990年から1996年にかけて全276話を『週刊少年ジャンプ』連載し、途中でアニメ化もされた『SLAM DUNK』は、連載期間を丸々と小学生として過ごした立場としては切っても切り離せない存在で、マイケル・ジョーダンの活躍も相まってバスケットが大好きになったことは今でも忘れません。

映画公開日に観戦したかったのですが、どうにも予定をつけることができず。公開からしばらく経ってからの観戦となりましたが、ツラツラと買いてみようと思います。

■ 知っているのに知らない結末

原作がマンガで、劇中で扱われる試合が例の試合なんだから『結末』を知っている人が大半なはずで、リアルタイムで連載終了を味わい「マジかよ…終わりかよ…」と志半ばで心を折られながらも、完全版が発売されるとわかった瞬間から買いはじめた立場のぼくだって当然わかっています。

展開だってわかるし、どういう試合展開になるのか、どの時間帯に誰が活躍するのかも知っています。

最強の対戦相手が何度も何度も心を身体を挫きにくるのにも関わらず、井上雄彦先生も含めた過去からの積み重ねを糧に何度も立ち上がり、這い上がる様子を描いている本作は劇場というよりも体育館、アリーナで観戦しているような興奮を味わうことができました

湘北高校メンバーたちが回想する過去との対峙から、いま目の前にいる強敵に立ち向かう様は観戦しているだけなはずなのに、彼らの過去を知っているクラスメイトや部活仲間のような錯覚を想起させ、彼らはフィクションであり、虚構な存在であるはずなのに、高校時代を共に過ごしたかのようなリアルな生態を想像することができます。

メガネくんこと木暮公延がコンビニに入る様子から何を手に取るのか、手にとってレジでどんなお金の出し方をするのか、そして、購入した商品をどう扱うのかまで”思い出す”ことができるので、ここが井上雄彦先生のすごいところだなって毎回思う次第です。

結末を知っていて、キャラクターたちの性格や試合でのパフォーマンス、それらを加味した展開も含めて知っているはずなのに、一喜一憂することになります。

希望を抱きながら試合に入り、何度も苦しく、絶望しそうになりながらもコート上のメンバーたちと一緒に乗り越えようと観戦者の立場ながら必死になるのです。

そしてクライマックスではマンガで描かれていない描写も入っており、最強の相手である彼らの象徴的な人物が嗚咽を吐きながら涙する場面に立ち会うわけですが、その場面では観戦者であるぼくたちもどう接したらいいのかわからなくなる。

知っているのに知らない結末なのです。

■ 連載当時の臨場感を音楽でさらに煽り立てる

今回の作品、「音楽がすばらしかった」と率直に思えたのでした。

上記しているように、ぼくをはじめとした多くの観戦者は試合の結末や、結末に至るまでの過程を知っているはず。しかし、マンガには場面ごとに音楽が入ることはありません。

試合の最終盤、添えるだけの場面前後は静寂と歓喜、喜びと絶望などを音楽で目一杯表現されており、クライマックスに近づくにつれて鼓動が早くなり、心拍数が高まり、身体が熱くなっていくことを体感するにまで至りました。

正直、映画でここまで体温を上げられた経験がありません。

それだけ試合にのめり込むことができるだけでなく、試合にのめり込めるだけの要素として音楽が適切に使われており、何度も引き剥がしては食いつかせられるような前後にグラグラと揺さぶられるような体験を意図的につくっていることがわかります。

試合の臨場感をアニメーションで表現しながら音楽で煽りに煽りまくってくる。

連載終了時、試合のクライマックスではコマ割りがページ割りになるほど、ダイナミックな描き方をしていたこと、ぼくは何度も読み返したから覚えています。

今回、はじめてのスラムダンクだった人たちは終盤の静寂と興奮を初体験したわけですが、あの瞬間をマンガでも表現していた井上雄彦先生の画力は本当にすばらしいと言わざるを得ません。

同時に、今回の映画では音楽を効果的に使うことによって、画力だけではない一つの作品として臨場感を提供してくれている点に、井上雄彦って人物の底なし感を味わったような気分にもなるのです。

■ 話題の声優交代は「試合」と「普段」を見れば納得しかない

今回、声優陣の一新は公開前から大きな話題となり、ネット上では賛否どころか否定的な意見が多く見受けられました。

一ファンとしては、旧声優陣が本当にステキにキャラクターたちに人格を吹き込んでいたと思うところから、寂しい気持ちにもなったのは正直なところです。

しかし、実際に劇場で試合だけではない彼らの”様子”を目の当たりにすると、井上雄彦先生が「お芝居に関しても、普通のコート上にいる、バスケ部の高校生の感じをより大事にする。」といった旨をインタビューで答えていたことに偉く納得感のある作品に仕上がってました。

同インタビューでは「誇張した表現をバスケのプレイも含めて使いたくない」とも述べており、それぞれのキャラクターが発する普段の声がハマっているのか。ハマったのか。そこを大事したいと思っていたからこその声優交代になったんだと納得感があるのです。

それは以前までの声優陣に対するリスペクトでもあり、せっかく仕上げてくれていた声をキャラクターを捨てなければならない、いや捨ててもらうことになる。それをお願いすることはできないし、したくないってことだったのだと理解しました。

キャラクターたちがしっかりと出来上がっているからこそ、彼らの”普段”も大事にしたい。普段があるから”試合”がある。

そんな人間らしさを表現したかったんだってことがわかる内容でもあったのです。

おわりに

大好きな作品を、さらに大好きになることができました。

劇中、魚住選手がチラッとだけ映り込む場面があるのですが、それ以降、まったく登場しません。それ以外にも海南の選手たちが映り込むこともありましたし、ほんの少しだけ(体感的にはmmレベルで)動く仙道も。

キャラクターへの小さなところまで配慮するあたり、井上先生のスラムダンク愛が本当に上手に表現され、良質な作品に仕上がっているので、ぜひ多くの人に観戦してもらいたいと思える映画でございました。

ではでは。

ゑんどう(@ryosuke_endo


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