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12/21開催【スタートアップピッチ】1次産業の革命児来る ~豚、魚、ジビエを扱う4社が登壇~ イベントレポート

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。 

今回は、2021年12月21日(火)のイベント 

【スタートアップピッチ】1次産業の革命児来る ~豚、魚、ジビエを扱う4社が登壇~

についてレポートしていきたいと思います! 

本イベントでは、世界の1次産業に変革をもたらす注目のスタートアップ4社をお招きし、ピッチをしていただきました。

・今後、我々の食生活がビジネスの視点からどのように変わっていくのか興味のある方
・顕在化している1次産業の課題をどのようなプロダクトで解決していくのか知りたい方

に特に必見の内容となっておりますので、ぜひご確認ください!

以下、各スタートアップにピッチをしていただいた内容をご紹介します!

■1社目:リージョナルフィッシュ株式会社/梅川様

1社目は、リージョナルフィッシュ株式会社 代表取締役社長 梅川 忠典様にご登壇いただきました!

<リージョナルフィッシュ株式会社 代表取締役社長 梅川 忠典様>

300RF梅川

・リージョナルフィッシュの事業内容

リージョナルフィッシュ社は、水産物のゲノム編集技術を用いた品種改良によって、日本の水産業を変える会社です!

人類は、昔から現在に至るまで、特に農作物において品種改良を行ってきました。
農産/畜産分野では、1.2万年という非常に長い歴史の中で、ほとんどが品種改良されているのです。
私たちが普段口にする物の中で、天然品種はなんと「三つ葉」くらいしかない、と言われているそうです。

一方で、水産分野では養殖の歴史でさえ50〜100年ほどしか経っておらず、品種改良自体が大変新しいものとされています。
水産物の品種改良は30年程度の時間を要するため、この養殖の歴史の中で品種改良を行うには十分な時間がなく、現在も水産物のほとんどが天然種です。

苺の品種で有名なあまおうと山に自生している山いちごを想像してみてください。
私たちが普段、野菜や果物を食べるときには当たり前に品種改良されたものを食べていますが、
お魚を食べるときには、”天然のものが美味しい”、と思いますよね。
それだけ水産物の品種改良は進んでいないのです。

そんな一般的に時間のかかる水産分野の品種改良ですが、
このリージョナルフィッシュ社では、ゲノム編集技術を用いた品種改良で、
30年かかる品種改良をたった2〜3年で行うことができます

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中には「品種改良」と「遺伝子組換え」を混同してしまい、人為的に手を加えているものなんて、、、とネガティブなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、
実は遺伝子組換えと品種改良には、大きな違いがあります。

<遺伝子組換えと品種改良の違い>
遺伝子組換え:別の生物の遺伝子を入れる(人間が存在しないと生まれない)
品種改良:別の生物の遺伝子を入れない(自然界でも存在する)

つまり、品種改良では自然界でも起こりうるものを作ることになります。

従来の方法で品種改良を行う場合は、
放射線でランダムにDNAを切断し、成功したものだけを取り出す方法であったため、30年ほどの時間を要しました。
しかし、リージョナルフィッシュ社が提供する独自のゲノム編集育種法を用いると、人工制限酵素で、狙ったDNAの位置を切断できるため、
2〜3年で自然界で品種改良された場合と同様のものを作ることが可能となります。

ここで、リージョナルフィッシュ社で品種改良された商品を2つご紹介します!

①世界初のゲノム編集動物食品となる「22世紀鯛」
可食部が1.2倍になり、飼料を2割減にすることに成功しました。

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②ゲノム編集を用いた高成長トラフグ「22世紀ふぐ」
成長性が1.9倍、飼料が4割減にすることに成功しました。

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上記以外にも、リージョナルフィッシュ社では現在20種類以上の開発を行っています。
可食部増加や飼料減少など生産者のメリットだけではなく、
味の改善など消費者のメリットになる食品なども開発しています!

リージョナルフィッシュ社では、
効率的な水産物のタンパク質を作り、今後の人口増加に伴う世界のタンパク質不足を解決する
といった夢を描いています。
ゲノム編集技術による品種改良によって、

①タンパク質不足問題を効率的な魚で解決し、さらに
②日本の水産業の衰退地域の産業振興

も行っていきたいそうです。

より安価で美味しく、タンパク質豊富なお魚を作ることを可能にする技術を通じて、私たちの未来の食卓を豊かにしてくれるでしょう!

■2社目:株式会社Fant/高野様

2社目は、株式会社Fant 代表取締役 高野 沙月様にご登壇いただきました!

<株式会社Fant 代表取締役 高野 沙月様>

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・Fantの事業内容

Fant社は、飲食店や食肉卸業からのハンターへのジビエのオーダーシステム
ギルド肉プロジェクト
を主な事業として行っています。

日本において、狩猟される全体量に対してジビエ(狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉)料理への利用率は、わずか7%しかありません。
そのため、農林水産省では「ジビエ」の利用拡大に向け、2023年までに利用率を2倍にすることを目標としています。

ジビエ料理の利用率が低い理由の一つには、既存のサプライチェーンが抱える課題があります。

<ジビエの既存のサプライチェーン>
①ハンターによる捕獲

②食肉処理施設での処理加工

③飲食店や食肉卸業での販売

このサプライチェーンの中で、
ハンターにとっては、食肉処理施設以外の販路がなく身近にそのような施設がないので売り手が見つからないという問題、
一方飲食店にとっては、ジビエの仕入れ価格が高い、という問題があります。

そこで適切なジビエのサプライチェーンを作るためにスタートしたのが、
Fant社のギルド肉プロジェクトです!

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<ギルド肉プロジェクトの仕組み>
①飲食店がギルド肉プロジェクトを用いて
「○月○日までに鹿を¥20000の報酬で獲ってきて」
と依頼をする

②ハンターがその依頼に応え、狩猟を行い
食肉処理施設に搬入する

③報酬から手数料と解体費用を差し引いたものが
ハンターの手元に入る

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このプロジェクトによって、ハンターや食肉処理施設、飲食店にとってそれぞれのメリットがあります。

具体的に言うと、ハンターは、狩猟の前に売り先・価格などの条件を自分で選択できるようになります。
また、食肉処理施設では、在庫管理や受注などの業務負担が軽減され、食肉処理に集中できるため、より多くの食肉を扱うことが可能になります。
そして飲食店にとっても、オーダー制なので納得感のある金額で取引ができることに加え、いつ・どこで・誰が捕獲したかが明確になるため、安全・安心です。

実際に北海道の飲食店では既に導入されており、猪の肉を使った料理や鹿肉バーガーなどが提供されています!

ジビエの国内市場規模は1500億円と言われており、
現在ハンターが20万人いて、飲食店が80万店あります。

このFant社のギルド肉プロジェクトには、ハンターが約1000人登録されているそうですが、今後、サービスがより拡大していくことが期待できます!
狩猟文化をあたらしく
というビジョンの元、Fant社が狩猟の世界をより未来が非常に楽しみです。

■3社目:株式会社Eco-Pork/神林様

3社目は、株式会社Eco-Pork 代表取締役 神林 隆様にご登壇いただきました!

<株式会社Eco-Pork 代表取締役 神林 隆様>

300Eco-pork神林

・Eco-Porkの事業内容

Eco-Pork社は、テクノロジーで「豚肉」の未来を作る会社です。

豚肉は、世界で年間15億頭も生産されており、米や他の農作物を上回る
世界最大級の産業です。

そんな豚肉産業ですが、大きく2つの課題があります。

①世界の肉需要に供給が追いつかない
1社目のリージョナルフィッシュ社でもお話がありましたが、人口増加に伴って今後世界の肉需要に供給が追いつかないと言われています。
そのため、養豚の生産量向上が必須の課題となっています。

②SDGs「飢餓をゼロに」への対応
①に対応するため、養豚の生産量を向上させなければならないのですが、その際にはもちろん豚の餌が必要となります。
しかし、餌の量を増やすと豚の穀物消費量が米の生産量を上回ってしまいます。
さらに養豚を増やすと、人類の食料確保ができない問題が生じてしまいます。
そのため、養豚の資源効率改善が必要とされています。

そこで、Eco-Pork社では、
豚のデータとAIを用いて豚肉の生産量の向上と環境負荷の低減を目指しています

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Eco-Pork社が目指しているのは、AIによる豚の育成トレーナーです。

豚肉を生産するには、ざっくりと以下のような式が成り立っています。

「豚≒豚の状況 × 餌 × 水 × 飼育環境」

つまり、豚肉の生産量を向上するには、豚の状況を把握し、適切な餌や水、飼育環境を提供することが重要なのです。

実際に、日本では豚にトレーナーがつくと、
平均で生産量が50%アップし、餌の消費量が30%減少することがわかっています。

しかし、トレーナーの人材にも限りがあるため、トレーナーを増やすのは現実的ではありません。
そこで、Eco-Pork社では、テクノロジーを使ってトレーナー業務をAIが行うことで、人材としてのトレーナーを必要とせずに、全自動での豚の管理を可能にします

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実際に、この製品を導入することで簡単に生産管理ができるようになり、導入農家では出荷売り上げが平均7%/年の改善を達成しています。
また、IoTで豚舎環境をモニタリングすることで常時、豚の状況を把握できるようになり、豚の体重や体温などを簡単に管理することが可能になります。

Eco-Pork社は、AIトレーナーによって生産量や資源効率をアップさせ、豚肉の未来を創出します!

テクノロジーによって、効率的に豚肉の生産量を増やしていくという、
非常に楽しみなサービスです!

■4社目:株式会社ウーオ/板倉様

最後に、株式会社ウーオ 代表取締役 板倉 一智様にご登壇いただきました!

<株式会社ウーオ 代表取締役 板倉 一智様>

300ウーオ板倉

・ウーオの事業内容

ウーオ社は、「すべての町を、美味しい港町に」というビジョンを掲げ、
日本の水産業にとって新しい流通を作っています!

ウーオ社が目指す世界は、現在ブラックボックス化している水産業の川上の市場をオープンでフラットな市場にすることで、需要/供給バランスを最大化し、バイヤー間で競争が生まれる世界です。

ウーオ社が提供するプロダクトは2つありますが、それぞれどんな課題を解決するものなのか見ていきましょう。

①産直鮮魚マーケットプレイス「UUUO」

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これまでの水産流通の構造は以下のようなもので、一方通行の流通しか行うことができませんでした。

<水産流通の構造>
漁師→漁港→仲介業者→荷受→仲卸業者→小売・飲食→生活者

さらに、上記の流通構造では、中間プレイヤーが非常に多く複雑です。

それに伴って、消費地と産地それぞれに課題がありました。

消費地の課題
①鮮度のばらつきや、水揚げ日が不透明
②複数の産地で産直をする場合、日夜産地と連絡を取る必要性がある
産地の課題
①販売先や販売魚が限定的
②各販売先への電話対応などのアナログ的なオペレーション負荷が大きい

そこで「UUUO」では
産地と消費地をマーケットプレイス化し、オープンな市場を作りました

アナログで一方的な産地と消費地をマーケットプレイス化することで
各産地から天然鮮魚はもちろん、冷凍食品や養殖など幅広い商品を仕入れることを可能にします。

また、消費地側では欠品リスクがなく、各産地では、販売網の拡大を行うことも可能です。

まさに、水産流通の双方向の課題を解決するプロダクトです。

②水揚げ/相場情報配信サービス「Maehama Cloud」

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現在の水産業では、水揚げや相場の情報などが非常にアナログな方法(電話やメール、ファックス等)で交換されています。

そのため、消費地側では全国各地の水揚げ情報を網羅的に把握できていません。
これによって、仕入れのチャンスロスが頻発しています。
例えば、

①実は隣の産地では大量だったのに、知らずに仕入れられない
②電話での情報収集のため、聞き漏れがあって仕入れられない

等です。

また、産地側でも他産地や消費地の情報が開示されていないことが多いため、いくらで買って、いくらで売れば良いのか、ということは、勘と経験に頼っている部分が大きいそうです。
それに加えて、水揚げ〜セリまでの限られた時間内で案内をする必要があるものの、電話を中心としたコミュニケーションのため、案内先が限定的になることもあります。

そこで「Maehama Cloud」では、
水揚げ量・魚種などを産地ごとに網羅的に見ることができるようにし、
見落としや発注ミスを減らして、消費地にとっては仕入れの幅が広がり、産地にとっては販路を拡大することを可能とします。

これまでのアナログでの情報交換による課題を、「Maehama Cloud」で一気に解消できるのです!

今後ウーオ社は、ご紹介した2つのプロダクトを1つにして、需給データから取引・決済までの一貫したプラットフォームを作ることを目標としているそうです。
日本にとって、新しい水産業の世界が作れそうですね。

日本の水産業の課題を現代の技術を使って解決する、非常に素晴らしいサービスです!

まとめ

今回は、豚・魚・ジビエを扱う代表的な4社のお話をお聞きしました。

1次産業は、他の産業と比べて比較的歴史の長い産業です。
そのため、長期にわたって蓄積された課題や、アナログな部分が多く残っている産業とも言えます。
今回のピッチでは、そんな1次産業をテクノロジーや次世代の技術を使い、大きな変革を与え、より良い未来を作っていく4社の姿を見ることができました。

私たちの食生活にも直結してくるからこそ、今後ますます4社の活躍が期待されますね!

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!
引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!

次回は、【スタートアップピッチ】次世代の新常識「メタバース」~バーチャルと現実の融合が生むビジネスの可能性~ のイベントレポート
をお届けします!

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