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仏国寺(世界遺産)多宝塔の石彫模型で霊感商法 -『財閥王国 統一教 財産の内幕』(朝日ブックレット『霊感商法』1987年)- 30~40年前の旧統一教会の営利事業

(前略)

統一教は、「石商売」で独特なうまみを占めている、と財界では評されている。主な製品は大理石花瓶(壺)や仏国寺多宝塔釈迦塔を縮小・再現した大理石工芸品(石塔)だが、その主役は(株)一信石材工芸である。

(後略)

朝日ブックレット 86・追求ルポ 霊感商法
ルポ Ⅲ 韓国を歩く・3 財閥王国「統一教」の資金源の内情
多宝塔を生産する工場を訪れた文鮮明教祖

3代目の最高指導者が君臨する北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の建国は1948年ですが、息子を(複数)亡くしたり(複数)排除した後、未だ孫の世代に引き継ぐことなく教祖(故人・平安北道(北朝鮮)出身)夫人が率いる旧統一教会の創設は1954年です。共に創建から70年前後が経過していますが、その財力は一朝一夕に積み上げられたものではありません。

30~40年前の旧統一教会の財力について、韓国の雑誌「新東亜」(1986年12月号)に掲載された特集記事『財閥王国 統一教 財産の内幕著者は東亜日報社 新東亜部 次長(当時)尹在杰(ユン・ジェコル))を朝日ジャーナル編集部が抜粋・翻訳したもの(財閥王国「統一教」の資金源の内情朝日ブックレット 86 霊感商法)が目に留まりました。元の記事を抜粋したにも関わらず長文ですが、末尾に引用します。

1987年、霊感商法で売られていた壺、多宝塔などを公表する
「霊感商法被害救済担当弁護士連絡会(代表世話人、伊藤和夫弁護士)のメンバー

宗教を軸にした国際的錬金術のルーツに辿りつくことはできませんが、韓国・日本・米国・他の国々における営利事業の変遷の一端を垣間見ることはできそうです。(旧統一教会の財力について、お時間があれば、以前の記事『宗教を軸にした国際的錬金術 - 旧統一教会の(営利)関連企業』や『統一教会・文鮮明氏「全米・寿司ビジネス」の剛腕』もご参照ください。)

旧統一教会による霊感商法と言えば、壺や印鑑や似非宝飾品の他に多宝塔が有名ですが、この記事を読むまで、1995年に韓国で初めて世界遺産(文化遺産)としてユネスコに登録された仏国寺慶州市多宝塔(国宝)を模したミニチュア・レプリカ(石彫模型)であることを知りませんでした。

石塔(多宝塔の石彫模型)旧統一教会

統一教会(旧 世界基督教統一神霊協会、現 世界平和統一家庭連合)は韓国のシャーマニズムと融合し土着化したキリスト教(イスラエル修道院)から枝分かれしたと聞いていますが...

多宝塔の周辺を散策する観光客
仏国寺
仏国寺
仏国寺の多宝塔と釈迦塔
仏国寺(公式サイト)
仏国寺

(前略)

一信石材工芸

統一教は、「石商売」で独特なうまみを占めている、と財界では評されている。主な製品は大理石花瓶(壺)や仏国寺の多宝塔と釈迦塔を縮小・再現した大理石工芸品(石塔)だが、その主役は(株)一信石材工芸である。

昨年、この会社の売上額はしめて一五九億五千万ウォン。このうち輸出額が一二七億ウォンを占めている。関係者によると、この会社はどの会社よりも収益率が高く、昨年だけでも七〇億ウォンの経常利益を上げており、諸税と付帯経費を差し引いても二〇億五九〇〇万ウォの純益を残したという。

そのためか、証券市場で人気を集めている株の一つになっている。八五年一一月額面が一千ウォンの株が、八六年三月二六日にはおよそ二倍に迫る一九四〇ウォンで取引されもした。売上額純益率一三・三%は、韓国銀行が発表した八四年度産業体平均三・四%の実に四倍近くにもなる。

このように倍額商売をする秘訣についてこの会社の関係者は、自己開発した大理石花瓶が全国観光民芸品競進大会で大統領賞を授与されるかと思えば、仏国寺の多宝塔と釈迦塔を精巧に再現した大理石工芸品がどこでも好評を博しているためだ、と説明した。

これらの製品は主に日本に輸出され、韓国では内需はほとんどないのが実情。八二年の販売実績を見ると、花瓶が一万九二七八個、石塔が八三三個輸出されたのに比べ、国内販売は花瓶がせいぜい二四個どまりだ。理由は石塔一個の値段が三五〇万ウォンから四〇〇万ウォン台で輸出される高価品であるところに由来する。

海外販売ラインは、八三年まで日本のハッピーワールド社(東京都渋谷区神南)を通じて行ったが、八四年からは税金減免の特恵がある香港を通じて迂回輸出する戦略をとっている。

(後略)

朝日ブックレット 86・追求ルポ 霊感商法
ルポ Ⅲ 韓国を歩く・3 財閥王国「統一教」の資金源の内情

世界平和統一家庭連合(統一教)の 天宙清平祈祷苑と日本人信者


朝日ブックレット 86

追求ルポ 霊感商法

(1987年7月20日、朝日ジャーナル編、朝日新聞社発行)

ルポ Ⅲ 韓国を歩く

3 財閥王国「統一教」の資金源の内情


以下は、韓国の代表的雑誌『新東亜』一九八六年一二月号に載った特集記事「『財閥王国』統一教財産の内幕」(全文四〇ページ)を、朝日ジャーナル編集部が翻訳、抜粋し注をつけた。

筆者の尹在杰(ユン・ジェコル)氏は、東亜日報社 新東亜部 次長である。


ソウル龍山区漢南洞にあるUNビレッジーの九。ここが統一教(注1)王国の本拠地だ。文鮮明牧師と朝食をともにしながら、一週間に普通三〜四回の幹部会議を開いては文牧師の指示を直接受けるという。参加する幹部は普通七〜八人といったところ。文鮮明牧師の私宅であると同時に、統一教全体の公有財産(公館)の性格も帯びている。

この家は敷地一〇八〇坪(韓国の一坪は日本と同じ三・三平方メートル)、建坪三六一坪の超豪華住宅として、世間の噂になった前歴をもつ。外国の大使館として渡されそうになったこの家を、四〜五年前に文牧師が一二億五千万ウォン(一ウォンは現在〇・二円)で買い取った。現在の市価については、「ずうたいが大きい物件は値段を付けるのがむずかしいもの」と、文勝龍(注2)財団副理事長は正確な額を明かすことを拒んだ。

統一教会の資産としては、汝矣島(ヨイド)(注3)のラッキー双子ビル右側中央部に位置する、文字通り黄金広場――一万四〇五五坪もやはり値を付け難いという。坪当たり、五〇〇〜六〇〇万ウォンするのではないか、と関係者たちは示唆する。ほとんど一千億ウォンに近い「宝島」である。

どんな宗教でも同じだろうが、その宗教の勢力を見分けることができる二大指標は、信者の数と財産だ。それだけに、いかなる宗教を問わず自らの正確な信者数や財産の内訳を明らかにするケースはまれだ。

統一教もやはり例外ではなく、正確な信徒数や財産の規模は中核幹部といえども十分に把握できていないし、それさえも明らかにすることをひたすら拒否している。

政府の文化公報部が金東旭議員(新民党)の要求で、一九八五年一一月一六日、国会予・決算委に提出した資料で明らかにされた統一教の国内の資産は、土地一五〇八万八七七〇平方メートル(市価三一九億〇九六三万ウォン)と建物四四一棟(五万〇四二八平方メートル、市価三七億〇九九六万ウォン)である。

しかし、筆者の取材によれば統一教が所有中の不動産の内容はこれよりもはるかに広くて多いし、その評価額も最小限、数千億ウォンに達するものと推定された。

これをもっと詳しく説明すれば、

▽汝矣島のMBC(文化(ムンフア)放送)の向かい側にある世界宣教本部建築用敷地一万四〇五五坪

▽韓国版ディズニーランドが建てられる予定の清平・雪岳面一帯の六百余万坪

▽坡州郡積成面一帯の教会墓地用敷地五十余万坪

▽最近開発計画中の済州道地帰島(無人島)等の二十余万坪

▽泰安半島一帯の二十余万坪

▽全羅北道井邑付近の五万余坪

▽城南、利川等の百二十余万坪

などである(注4)。

統一教の傘下企業体は、おおよそ一五といわれている。いわゆる「統一グループ」と財界で呼ばれているこれらの企業体は、「株式会社・統一」のように国内屈指の会社から群小製造業の水準に至るまで多種多様である。

「統一グループ」と呼ばれる企業体はすべてが韓国統一教会の財団本部である統一教維持財団(李相憲理事長)の支援と監督を受けている。維持財団は名実ともに、統一教のすべての団体と機関、それに企業体の金づるである。従って維持財団はこれらの監査役を受け持ってもいる。

維持財団は、龍山区青坡洞の道路沿い裏側のみすぼらしい建物に入っている。しかし近々、麻浦区桃花洞に新築中の桃源ビルディング(地上一五階、地下三階)に移る予定。統一教全体の金づるの責任者は、名目上、理事長の李相憲氏と見受けられるが、実際の主人公は文牧師の六寸(また従兄弟)の文勝龍氏(注2)(六六)である。

「銃を売る宗教集団」から

株式会社・統一

われわれが公式的にたどりつける統一教の企業的ルーツは、一九五九年一二月青坡洞の一角にできた鋭和散弾空気銃製作所だ。最初は売れ行きが芳しくなく、文牧師が自ら乗り出して販売戦略を練りもした。だが、高等学校・大学で軍事教練が正式科目として採択されて訓練用木銃が大量に必要となった。この木銃を独占同様に生産し始めて以来、新たな活路を見いだした。もちろん「銃を売る宗教集団」という非難もなくはなかった。

一九六八年、統一産業と商号を変えた同社は、七〇年代に入ってからは政府当局の政策的配慮により相当な恩恵を受けながらさらに発展のきっかけをつかむことになる。特に一九七二年、かつて空気銃をつくりながら蓄積した技術が認められ、防衛産業体として指定された。

この時から統一産業は、各種火砲をはじめ兵器製作に参加しつつ急激に伸びた。七五年六月には昌原工団に一万五千坪規模の工場をつくり、三年後の一九七八年には金属工作機械総合生産業体に指定されると同時に、自動車産業発展の牽引車的役割を担うこととなった。

つまり、自動車の推進軸・調向装置等を生産する標準車両専門企業に指定されたのだ。さらに、機械精密度一級業体に選ばれてから徐々に業界に認められだし、ついには一九八〇年六月に二万七千坪規模の第二工場を稼動させながら韓国機械工業の先頭グループに躍り出ることになる。

同時に、一九八〇年、同会社はマンニングセンターTNV-50(注5)を政府計画に先駆けて生産、国産第一号機に指定され、業界を驚かせもした。この統一産業が一九八二年、経営難に陥った東洋機械工業を引き取る、と名乗り出るに及んで財界の注目を集めた。国内屈指の自動車部品会社であった東洋機械が第二次オイルショックに打ち勝てずにふらついた末倒産したものを、統一産業が起亜と接戦の果てにとうとう買い取り、商号も今日の「株式会社・統一」に変更した。合併当時、文牧師がじきじき訪れたという。

現在資本金三八〇億ウォン、四五〇〇人の従業員を率いており、昌原工業団地内に第一〜第四工場を合わせて総敷地一四万坪、建坪五万一千余坪を所有している。統一教会財団の持ち株率は四八%にのぼる。

関係者によると、(株)統一の最も大きな特色は、統一教が世界的に名高い工作機械会社であるドイツのバンデラ等を買い取り、外国人技術者を直接連れてくること。最新技術導入とともに技術革新を果たしたことだ。

アメリカのロックウェル・クラーク社、イギリスのG・K・N社とミハナイト社、西ドイツのZF社及びバンデラ社と車軸変速器ならびに鋳造工法等についての技術導入契約も結んでいる。

八六年一一月、制御装置技術開発で大統領表彰を受けた。この会社の文成均(ムンソンキュン)社長(六二)は、文牧師と姻戚関係にあり平安北道定州出身。「学位のない機械工学博士」として通っている。

一信石材工芸

統一教は、「石商売」で独特なうまみを占めている、と財界では評されている。主な製品は大理石花瓶(壺)や仏国寺の多宝塔と釈迦塔を縮小・再現した大理石工芸品(石塔)だが、その主役は(株)一信石材工芸である。

昨年、この会社の売上額はしめて一五九億五千万ウォン。このうち輸出額が一二七億ウォンを占めている。関係者によると、この会社はどの会社よりも収益率が高く、昨年だけでも七〇億ウォンの経常利益を上げており、諸税と付帯経費を差し引いても二〇億五九〇〇万ウォの純益を残したという。

そのためか、証券市場で人気を集めている株の一つになっている。八五年一一月額面が一千ウォンの株が、八六年三月二六日にはおよそ二倍に迫る一九四〇ウォンで取引されもした。売上額純益率一三・三%は、韓国銀行が発表した八四年度産業体平均三・四%の実に四倍近くにもなる。

このように倍額商売をする秘訣についてこの会社の関係者は、自己開発した大理石花瓶が全国観光民芸品競進大会で大統領賞を授与されるかと思えば、仏国寺の多宝塔と釈迦塔を精巧に再現した大理石工芸品がどこでも好評を博しているためだ、と説明した。

これらの製品は主に日本に輸出され、韓国では内需はほとんどないのが実情。八二年の販売実績を見ると、花瓶が一万九二七八個、石塔が八三三個輸出されたのに比べ、国内販売は花瓶がせいぜい二四個どまりだ。理由は石塔一個の値段が三五〇万ウォンから四〇〇万ウォン台で輸出される高価品であるところに由来する。

海外販売ラインは、八三年まで日本のハッピーワールド社(東京都渋谷区神南)を通じて行ったが、八四年からは税金減免の特恵がある香港を通じて迂回輸出する戦略をとっている。

株式会社・一和

ドリンク・ジンセンアップやメッコルでわれわれになじみの深い「株式会社・一和」は、むしろその知名度や親しみやすさの面で(株)統一をしのぐ統一グループの代表的な企業。一和は統一教が主管する雑誌や週刊誌等に対して最大広告主として振る舞ったりする。

一九七一年、ソウル市城東区松亭洞で資本金一千万ウォンの小規模業体として始まった。当初、一和製薬株式会社と呼ばれたこの会社は七六年、(株)一和に商号を変えたのち徐々に成長、七九年には高麗人参製薬社を引き取ると同時に今日の主力商品であるドリンク・ジンセンアップを発売し始めた。

百五十余社をかかえる財力

八〇年、現在の会長である洪成枃氏が就任してから一和生水を財団に引き取る(八一年)一方、八三年にはメッコル・ドリンクを開発、急成長の街道を突っ走っている。(株)一和の主力製品は人参加工製品。人参業界の輸出ランキング一位で、全輸出額の五〇%を上回る。

従って人参製品に関する限り他の会社の追随を許さないというのが自慢。一和は海外統一教信者相手の輸出だけで年平均一五%の成長を土台に、国内市販へと急旋回したのは一九七六年ごろだった。「コリアゲート」として知られている「朴東宣事件」発生とともに一和が脱税の嫌疑をかけられたためだ。この事件で対米輸出が困難になるや、一和は自救策として内需市場を切り開いた。

アメリカ国内にはいまも一和の子会社があって、人参エキスを持ち込んで現地で原液を加工、ジンセンアップを生産・販売している。この会社の八五年の総売上額は三九六億ウォン、このうち輸出が一五〇億ウォン程度で三七%を占める。一和の株式の教会財団所有分は九七%、二五〇〇人の従業員を抱えている。

いままで知られている統一教の外形的規模は▽宗教団体五▽教育機関一八▽言論機関一一▽社会団体二▽文化事業団体八▽企業体一五〇等、その数からだけ見ても巨大財閥をしのぐ財力と勢力を保有している。

統一教が保有する米国内の財産目録のトップは何といっても、ニューヨークの中心街三四番街にあるニューヨーカー・ホテルだ。統一教は、アメリカに渡って四年目の一九七六年五月一三日、ヒルトン・ホテル社から四二階建て、二千室を備えたニューヨーカー・ホテルを五百余万ドルで買い入れたと発表、世間を驚かせた。現在その一〇倍以上の五千万ドル(約三七五億ウォン)は下らない、と専門家たちは見ている。

統一教ニューヨーク本部の年間予算は、正確には分からないが、さる八一年の場合三六〇〇万ドル(約二七〇億ウォン)、そして八六年度予算はおおよそ一億ドル規模(約七五〇億ウォン)に達するといわれている。「ニューヨーク・タイムズ』紙によると、最近、統一教が南米に進出、八〇年代前半(八一〜八四年)に合わせて七千万ドル(約五二五億ウォン)にもおよぶ巨額の投資を行った。数百万坪を超える土地とウルグアイ三番目の銀行であるバンコ・デ・クレディトをはじめモンテビデオ所在のビクトリア・プラザ・ホテル、三つの印刷所及び新聞社(『ウルティマス・ノーティシアス』)を購入した。

統一教が保有している資産の総額は、いかなる者も知るすべを持たない。さる八四年九月一六日、統一教を特集記事で扱った『ワシントン・ポスト』紙にしても「統一教の財産は数十億ドルに達する」とだけ報じるにとどまった。同紙はまた「統一教の巨額資金は大部分が日本の東京から送られてきたもの」という記事を載せた。

この記事の骨子を見ると、統一教東京支部が七五〜八四年の九年間、最低八億ドル(約六〇〇〇億ウォン)をニューヨークにある統一教世界本部に送り、各種事業と活動に使ったという。

外貨持ち込みもさまざまに

統一教が日本で儲けた金は主として、神がかり的だと宣伝されている大理石花瓶と石塔(多宝塔、釈迦塔)、象牙印鑑等を信徒たちが売って集めたもの、と同紙は報じながら、アメリカの信徒たちが毎年出す金も約二千万ドル(約一五〇億ウォン)以上になるだろうと述べた。「統一教団体の活動を口実としてアメリカと極東にしきりに出入りする方法を文牧師はたびたび使った。外国人がアメリカに入国する際五千ドル以上は持ち込めないことになっている(一九八五年に一万ドルに調整)。そのため、リトル・エンジェルスの巡回公演もしくは世界各地の宣教大会を主催するなど、各種イベントを利用した。彼にとって外貨の持ち出し、持ち込みは別に大きな問題ではなかった。

副島(注 副島嘉和・元『世界日報』編集局長)によると、一九八二年七月、ニューヨーク・マジソンスクウェア・ガーデンで二千組の合同結婚式が挙行された時、四〇〇人の日本人は各自が二千ドルずつ持参したという。合計八〇万ドルにもなるこの金は『ワシントン・タイムズ』紙に寄付された」(『文鮮明帝国』――フランス語版)

日本にある統一教の事業体もアメリカに劣らず多いと伝えられている。なかでも聞き慣れているのがハッピーワールド社だ。漢字で「幸世」と翻訳される同社の傘下に百五十余の群小企業があるという。ハッピーワールドが販売するのは、主に大理石花瓶、慶州仏国寺の多宝塔、釈迦塔を縮小した石塔類、人参、象牙印鑑だという。価格は普通一〇〇万円以上一千万円の線といわれている。

日本の事業体を見ると▽幸世商事▽統一産業▽世一観光▽幸世建設▽幸世不動産▽幸世自動車▽エミ(愛美)書店等である。

この他に▽オーストリアの西洋ろうそく製造工場▽ネパールの新世界言語教育院▽イタリアの化粧品生産会社、統一産業▽アフリカ・ザンビアの農場と企業体▽イタリア、フランス等の販売会社であるセイロ▽中央アフリカの農場とダイヤモンド鉱山等がある。

ハッピーワールドなどを運営している日本統一教は、純収益七〇億円を毎月アメリカの統一教本部に送金していると伝えられる。統一教の勢力は韓国内よりも日本がより強いように見受けられ、創価学会や天理教と並んで三大宗教として浮上している。

(注1)世界基督教統一神霊協会(統一教会)をさす
(注2)「文昇龍」の誤りか
(注3)ソウル市の漢江に浮かぶ、市内屈指のオフィス街のある中州
(注4)これらを尹氏は、「統一教維持財団で確認した」と言う
(注5)先端的な自動工作機械

尹在杰氏(東亜日報社)に聞く

――統一教会(統一教)関係の財産を調べたきっかけは?

尹 韓国内で、六三階建てで有名な大韓生命ビルや全州大学が統一教のものだといった噂が流れ、確認したいと思った。これらの噂については関係者が強く否定した。が、統一教の財産がどのぐらいあるのか、に関心を持つ読者は多い。普通二〇万部ぐらいの売れ行きの『新東亜』が、この号では三万部以上増えたことも関心の高まりを裏付ける。

――記事内容は大変具体的だが、どのように調査したのか。

尹 二つの面からだ。一つは統一教を脱けた人たちの話。もう一つは統一教側が、教勢PRにプラスになると判断し、明かした内容だ。

統一教の中枢にいる四人、即ち財政担当の文勝龍(前ページ 注2同)氏、広報担当の朴普煕氏、それに金栄輝氏、郭錠煥氏にも、インタビューした。

――記事掲載後、統一教会側から、事実関係に関する抗議はあったか。

尹 三カ所について、統一教文化部から抗議があった。第一は石塔(注 多宝塔)輸出の問題で、「事実と違う」といってきた。

第二は統一教東京支部のニューヨークヘの八億ドル送金についてで、「数字が正確でない」、第三は日本からアメリカへの毎月の送金で、「金額と事実が違う」といった趣旨の抗議内容だったと記憶する。

書いた根拠は、組織脱退者の話、『ワシントン・ポスト』紙の引用、アメリカからの外電などが主なものだった。現在までのところ、『新東亜』は訂正を出していない・我々は取材に基づく情報を持っている。

――韓国内でいま、統一教会はどう受け止められているのか、教えてほしい。

尹 一方には、キリスト教団のように、これを邪教だと見て、なくさなければならないと思っている人たちがいる。

しかし他方、若い世代などには肯定的な見方もある。たとえば文鮮明氏がニクソン氏を慰めているシーンなどに民族的プライドが満たされる青年層がいる。海外にまたがるその活動は国家発展に寄与するのではないか、という見方だ。

統一教はまた、「国祖檀君の聖殿を建立しよう」との主張にもくみしている。韓国の若い層は民族主義志向が強い。そこを狙った布教上の戦略だと思う。

文氏はいつも言っている。

「私は外国語を使うのを好まない。ハングルだけを使っている。いつかハングルが世界語になるだろう」。彼はもちろん賛美歌も歌うが、民族的な『アリラン』も歌う。統一教の布教のしかたは、非常に怜悧です。

(聞き手 本誌・藤森研)


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