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建設業のオシャレな社屋が地域住民コミュニティの場に!?【現場見学会#2 in 富山 §2~砺波工業にて~】

普段土木を学んでいる学生である土木学会学生小委員会の私たちが、富山の土木の魅力を語るという「現場見学会#2 in 富山」。
2022年11月4日~7日に学生小委員会の6人で富山県を訪問した様子をダイジェストでお届けします。
今回は、「建設業のオシャレな社屋が地域住民コミュニティの場に!?」というお話です。
前回のサクラクエストの記事もぜひ読んでくださいね!

11/5(土)2日目の行程

2日目はイベントが朝から晩まで目白押しです。
ざっと列挙すれば…
・防災訓練@砺波工業本社
・現場見学×2
・砺波工業本社社屋見学

なんて濃密な1日!
スケジュールを眺めているだけでも旅行に行った気分になりますね。

スケジュール

今回の視察に行くまでは、私のお目当ては、現場見学でした。
それは、河川工事が信濃川以来久しぶりで嬉しかったからや、港湾工事の現場が初めてだったからだけでなく、それが他でもない、富山県の庄川だったからです。

富山の川といえば急流で有名。常願寺川は言わずと知れた日本一の急流河川だし、庄川だって河床勾配は下流部で約 1/200、上・中流部では約 1/30~1/180 と十分すぎるくらいの急流河川です!

その庄川で、今まさに治水の現場が動いているところを観れるのです。
歴史的瞬間です!

明治時代のお雇い外国人デ・レーケが、
「70有余の河川みなきわめて暴流にして、山を出て海に入る間、長きは67里、短きは23里にすぎぬ。川といわんよりは寧ろ瀑と称するを充当すべし」
(意訳:こんなん川ちゃう、滝や!
と内務大臣に進言したという、あの富山県です!

もう行くっきゃないですね。

しかし、実際に行ってみると、もちろん現場見学も大変勉強になったのですが、本社の衝撃が大きすぎたので、この記事では本社での話をメインにしようと思います。

この本社、つい数年前に完成したばかりなんだそうです。
イケてるオフィスが受賞するさまざまな賞を総ナメした、
知る人ぞ知る、いま話題の新社屋でした!

砺波工業株式会社

防災訓練@砺波工業本社

実に、小学生以来です。
防災訓練。

みなさん、記憶ありますか?
防災訓練。
私はないです。

私は防災訓練の間、友達と遊んでいた記憶しかないし、
なんなら消火器とか生まれて初めて触れたのですが、
学生小委員会の他のメンバーは案外慣れた様子でした。

もし今後、火事に遭遇しても、一回でもこうやって発射したことがあると、
冷静に対処できそうです。

消火器の訓練

お次は、AEDの訓練。
ここ数年は自動車免許の教習の中にカリキュラムとしてAEDの訓練が入っているので、私も覚えがありました。
さわやかな秋の朝の、粛々と進んでいく訓練。そんな中…

AEDの訓練でなぜか会場の爆笑をかっさらったメンバーがいました。
だって、めっちゃリアルに助けを呼ぶんやもん。
しかも、心臓マッサージがうますぎてもはやその道のプロやったやん。

彼女いわく、
「だって、訓練も本番やと思ってやるべきやろ?」
うん、まったくその通りやで。

心臓マッサージがうますぎるメンバーたち

さて、そんな防災訓練でしたが、毎年1回地元の方を本社に招いて行なっているそうです。

私が何に驚いたかというと、この砺波工業の本社1Fに砺波の地域コミュニティが凝縮されていたことです。
この防災訓練だって、消防士さんをはじめとする自治体・行政の方や、関連する企業の方など、さまざまな関係者が一堂に会して行われていたのです。
また、地元の主婦の皆さんが砺波工業本社に集まって、「お!久しぶり〜」みたいな会話をしたり、地元の企業の従業員の方々も、おそらく研修の一環なのか、防災訓練に参加し、自社製品(野菜ジュースとか、なんか乳酸菌飲料みたいなやつとか)の宣伝をしていたのです。
地元の学校の生徒も来ていました。

このような地域コミュニティの空間が成り立つためには、いくつかの障壁をクリアしている必要があります。
まず、箱物。これは砺波工業のオシャレな新社屋の1Fが丸ごと、地域のコミュニティスペースのような内装になっています。音響もなかなかいいです。
写真展や演奏会のようなこともできそう!
しかも、砺波の地元のお祭りの巨大な龍の屋台がちょうど収まるように設計されているのです。ここまで徹底して地域コミュニティに貢献できるように綿密に設計された社屋は、聞いたことがありませんでした。

次に、時間的・金銭的リソース。防災訓練にしても他の企画にしても、それなりのコストがかかります。これを実現するには、経営方針に基づく明確な意図が必要でしょう。
そして、コミュニティ本体。コミュニティはどのように維持されるのでしょうか。有益なコミュニティとはなんでしょうか。そもそも人は繋がるために繋がるものなのでしょうか。どういうわけかはわかりませんが、この空間でコミュニティが成り立っているように見える。

真っ先に私は疑問に思いました。
砺波工業は、なんのためにこの防災訓練などの地域活動をわざわざ1日の業務を止めてまで行なっているのでしょうか。
事業の多角化の一種なのか。それとも他の事情で防災訓練を行う必然性があるのか。

結論を先に言ってしまうと、砺波工業という会社を砺波の住民に受け入れてもらうためでした。砺波工業は、砺波で生まれた会社ではあるものの、これまで首脳部はより都会の高岡市に置いており、今回の社屋移転を機に、本社機能が砺波に帰ってきたんだそうです。当然、知名度はないところからの再出発。
合意形成にかかる苦労も、地元の人との信頼関係が醸成されているかどうかで大きく変わってきます。地元の人との信頼関係を醸成するためには、何かがあったときではなく、日頃のコミュニケーションこそ重要なのだ、ということを学びました。

だからこそ、こういうスペースをうまく使って、地域の人々にとって有益な場を作っていきたいなあと思いました。日本には他にもこのような住民開放型オフィスを備えた会社があるのでしょうか?
もっと知りたくなりました。

現場見学×2

河川工事(庄川)

庄川ってご存知ですか?
上流を辿ると白川郷・五箇山合掌造り集落があることで有名な川です。

そこで何の工事が行われていたかというと、堤防の法面強化工事です。
というのも、去年の大雨で決壊してしまったからです。

さて、河川工事には、工事できる時期とできない時期があるのを知っていましたか?
6月1日~10月31日までの5ヶ月間(出水期と言います)は、梅雨や台風による大雨で河川が増水しやすい時期なので、「点検などの河川管理体制を強化するとともに、原則として河川工事を行わない期間」と決められています。逆に、出水期以外の11月1日~翌年5月31日までの7ヶ月間は非出水期と呼ばれていて、河川工事を実施する期間と決められています。
そういうわけで、私たちが行った11/5のタイミングは、まさに工事が本格的に始まったばかりだったのです!

庄川の工事風景

そこで行われていたのは「瀬替え」という工程。
つまり、決壊した堤防の法面を強化する工事を行うために、川の流れを反対側に寄せて川底の地面を露出させること。

私は百人一首が大好きなので、「瀬替え」と聞いて、
瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の われても末に あはむとぞ思ふ
(意訳:川の流れが早いので、岩に直撃した急流がわれてもまた合流するように、いま離ればなれになってもいつかきっとまた逢おうな。)
という歌を思い出しました。
小学校、中学校、高校、大学の友達で、かつて一緒にたくさんの時間を過ごした人も、それぞれの人生を選んで進んでいきます。どんなに同じ志を持っていても、多くの場合、離ればなれになります。でもそれを寂しがることに時間を使うのではなく、むしろ人生の線がその期間に交差しているということが尊いのだから、交差している時間を大切にしたいと思うのです。川の流れが早いので…

そういう意味では、人生の川だっていつでも瀬替えしていいのです。
いつかきっとまた逢おうな。

農家レストラン大門でお昼をいただきました。美味!

続いて私たちは、うんと北上して富山湾の沿岸に向かいました。

港湾工事(伏木富山港)

伏木富山港は、国際海上貨物輸送網の拠点として非常に重要な港なんだそうです。

現代においても、国際海上貨物輸送網の拠点としてとくに重要とされ、昭和61年には“特定重要港湾”に、平成23年4月には港湾法改正により、全国で18港、本州の日本海側では2港のみの“国際拠点港湾”に指定されました。
さらに、同年11月には国の日本海側拠点港の選定において日本海側の“総合的拠点港”、加えて、国際海上コンテナ、国際フェリー・国際RORO船、外航クルーズ(背後観光地クルーズ)の“機能別拠点港”に選定されました。
日本海側港湾の貿易および観光における国際競争力を強化し、中国、韓国、ロシアなど環日本海諸国の経済発展を日本の成長に取り込むこと、また、太平洋側港湾の代替機能を強化し、大規模災害時の物流ネットワークを構築することが、いま、伏木富山港に求められている役割です。

富山県HPより

富山って「美味しい」というイメージしかなかったのですが、実は、
伏木富山港の取扱貨物量全体に占める農水産品の割合は小さく、
林産品、鉱産品、金属機械工業品、化学工業品がメインです。

しかし、水深が足りないのです。
今、コンテナ船は大型化していく一方であり、
22000TEUを取扱うには水深18mが必要。
水深14mではせいぜい3000TEU。
つまり、このたった4mの水深の差で、扱える貨物の量が7倍以上変わってしまうのです。

水深が足りないとどうなるかというと、大型コンテナ船は他所の港(韓国の釜山とか、シンガポールとか香港とか)で一旦荷を下ろして、より小さな船に積み替えて、それから日本に入ってくる。
想像するだけで身震いするような、壮大な輸送コストです。

じゃあ伏木富山港はどうかというと、今やっと水深14m岸壁の整備に取り組んでいるところです。
国際海上貨物輸送網の重要拠点が水深たった14mというのも、逆に面白いかもしれないですね(笑)。
いや、私たちの世代が力尽きるまでに絶対に、世界で通用する物流インフラを備えた港を日本中に建設したいものです。

港湾工事(伏木富山港)の横で撮った、美しすぎる水たまり。

工事自体は、水深14mに向けて浚渫したあとの大量の土を置いておくスペースを作るための仮設工事でした。
従来工法だと何日もかかるものが、砺波工業の技術だと、ものの30分でできる、みたいな話をお聞きしました。

砺波工業本社社屋見学

社屋の中の、社員の皆さんが普段働いている職場や役員室など、一通りの部屋を案内していただきました。
すごくフラットで、社長室を含めた役員室が他の社員から丸見えなのです。

そして、調度品はコクヨで揃えてありました。何といっても、創業者の黒田善太郎が、ふるさとの越中(富山県)の誉れとなるように「国誉」と名づけたことが由来の会社ですからね。

ちなみに、私は麻の葉紋様が好きです。
どのくらい好きかというと、扇子も財布も草履もティッシュケースも何もかも麻の葉紋様で揃えるくらい好きです。
だから、この応接室のテーブルが一番テンションが上がりました。
我ながら単純。

応接室の麻の葉テーブル

2022年のおわりに

今回は富山県の砺波工業さまに現場見学をさせていただきましたが、
もし

「富山だけじゃなく、うちに来て土木の魅力を知ってくれ!」

というお誘いがあれば喜んで飛んでいきます。
ぜひ応援・コメントをお待ちしております。

またノリで5000字近く書いてしまった…
最後まで読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
この記事が誰かの役に立てば嬉しいです。
ではみなさん、よいお年をお迎えください。

to be continued…