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完全遠隔ライブイベント・音楽フェスを実現する方法【実験中】「Zoom×NETDUETTO(β2)×OBS Studio」

はじめに

はじめまして。高橋遼と申します。

一人の映像クリエイターとして、一人のアーティストとしてコロナによる自粛がエンターテイメントおよびクリエイションに与える影響を肌で感じています。

「人と人が会えない・場がない=”現場”が消滅する」ことは、多くのアーティスト・クリエイターが直面していることと思います。

※普段はこのようなことをしています。

SEMIOSIS  https://semiosis.tokyo/   音楽クリエイター 若狭真司、映像クリエイター 高橋遼のユニット。コンセプチュアル且つミニマルな映像 / 音楽作品に重きを置き、表面的な表現とは一線を画す、重厚かつ優れたパフォーマンスライブ、映像作品を生み出している。Designawards Asia, ATFF Film fes など数々の部門賞受賞。Amazon Fashion WeekにおいてPostelegantの楽曲演出、New Balance主催の「New Balance Premium Friday Fes」にてオリジナル楽曲制作&DJ/VJコンテンツの制作。その他に、フランス・パリ「Masion et objet」にて時計ブランドnormalとのコラボレーションインスタレーションの出展、CLASKA主催のイベントにて常設展「A PRIORI」および屋上でのライブパフォーマンスなど活動の場を広げている

すでに世界最大級のフェスTomorrowLandによる有名DJのライブ配信、Rhizomatiksさんによる「Staying TOKYO」など、新たな取組みをしているアーティスト・クリエイターの方々も多いと思います。

知名度のある人たちであれば、これまでのライブ映像・MV配信やインスタライブでも良いと思いますが、僕らのような無名のアーティスト・クリエイターは、のし上がる場所さえ失われつつあるのが現状。

だけど、僕たちにはプライドもあります。だから、本当は「助けて!」とか「寄付して!」とは大声で言いたくない。きちんと自分たちのパフォーマンスをして対価としてお金を受け取りたい。

いまこの瞬間の一番のストレスは、自分たちのパフォーマンスを最大限発揮できる場がないことだと思います。

そして、運営サイドの方々は、キャスト・スタッフ遠隔で身動き取れないことで、代替案も見つからない状況と想像しています。

LINEライブやインスタでライブ配信はできるけれど、画質も音質もあまり納得行かない。オーディエンスとリアルタイムで双方向のやりとりもあまりできない。VJも入れたい。

要は「しっかりと裏方を入れたコンテンツづくり」が課題だと思います。

そこで、一人の映像クリエイター/VJ/アーティスト目線で色々と考え、配信イベントとして、ある程度のクオリティを出せるであろう仕組みを考えました。

願わくはこのような仕組みで、一日も早くエンタメ業界が活路を見出してほしいと思っています。

(注記)配信における著作権などの扱いは一旦考慮せず、技術的な手段を記載しています。リーガルチェックは個別に実施してください。というかアドバイスほしいくらいです。

「完全遠隔ライブイベント・音楽フェス」の定義

全体の仕組みは以下です。

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アーティストおよびイベントの技術者(VJなど)、そしてオーディエンスが物理的に在宅になっている状況を大前提として、以下の定義・解決策を検討しました。

※遠隔でDJ/VJのテストをした様子です


目的:できるだけ専門的な機材やスペックに頼らない(≒在宅でもできる)。汎用性と拡張性があり、イベント単位でオリジナルの使い方ができる(≒独自の色が出せる)
必須要件:インターネットがつながっていること、PCがあること、配信の知識があること(≒学ぶ意思があること)

1.アーティストの声・演奏をリアルタイムで配信できる(バンドなどの場合セッションできること)

→ YAMAHAのライブセッションアプリ「NETDUETTO」による個人または大人数のセッション共有、配信ソフト「OBS Studio」上で音声ソースとして使用

2.アーティストの顔および演奏の様子をリアルタイムで配信できること

→ Zoomによる遠隔ビデオ通話を配信ソフト「OBS Studio」で取得

3.技術者(VJなど)が上記のコンテンツを遅延なく受け取り配信できること、演出を加えられること

→ YAMAHAのライブセッションアプリ「NETDUETTO」のフィードを受け取る、配信ソフト「OBS Studio」上で音声ソースとして使用
→ Zoomの画面共有によって遠隔でアーティスト及びVJ画面共有、配信ソフト「OBS Studio」上で映像ソースとして使用
→ OBS Studio上で、アーティストの映像・音声、VJの演出映像、画面上のステージデザインをレイヤーで表示・統合し、YouTube LiveやFacebookライブに配信

4.オーディエンスが満足度を得られること(安定してみれること、アーティストがリアルに反応を返してくれること)

→ 既に触れているYouTube LiveやFacebookライブであれば、無料かつ共有リンクの告知でOK
→ 大人数のアクセスにも対応する前提として、大規模SNSプラットフォームに依存することが現状ベター。

5.オーディエンスからお礼としてのフィーをもらう仕組み

→ YouTubeLiveのSuperChatなど、すでにライブ配信プラットフォーム上で機能している「投げ銭」機能に依存する。(※条件満たさないと難しい?)
→ その他の決済サービスでお金を払ってもらう。SNSで告知する

これらを統合すると、「完全遠隔ライブイベント・音楽フェス」は実現可能です。それぞれなるべく具体的に書きます。

1.アーティストの声・演奏をリアルタイムで配信できる(バンドなどの場合セッションできること)

ヤマハさんによる「NETDUETTO β2」利用してアーティスト↔配信する担当やVJなどが音源を共有できるようにします。

アーティストであれば、自宅にそれぞれの楽器や演奏の環境はあると想定。収録環境はそれぞれに依存すると思います。

使い方は以下参照です。

ポイントは演奏者以外に、配信する担当(OBS Studio)とVJ担当などが、上記のルーム内で”聞き役”として入っていることです。

コメント 2020-04-25 201824

ルームの音声をそのままOBS Studio上のソースとして利用すれば、配信の音源として使えるはずです。

また、VJが遠隔で音源を聞く必要がある場合は、ルームの音声をソースとして、自分のVJ環境と同期できると思います。

※ただし、NETDUETTOは2020年6月に新サービスSYNCROOMに移行するとのこと。執筆時点では機能しますが、今後はわかりません。

あと、自宅のネットが遅い場合やポケットWi-Fiは難しいです。そこは各々改善できるポイントなので何とか対応したほうがいいと思います。

2.アーティストの顔および演奏の様子をリアルタイムで配信できること

これはおなじみZOOMでビデオ通話で実現します。配信担当がPCで画面キャプチャデバイスとしてZOOMの画面を取り込み、ソースとして利用します。

ZOOMのカメラ設定を外部カメラにすれば、高画質の一眼レフなどで撮影することもできると思います。(※未検証)

OBS Studioでは、画面のトリミングができるので、大人数の場合レイヤーを複製してトリミングして調整すれば、一つのZOOMの会議内で任意の位置に映像を表示できるはずです。

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できれば音声はミュートにし、ビデオ会議の映像だけを取得。OBS Studio上で音声が乗らないようにケアするのがおすすめです。

※配信に関する音にあまり詳しくないのでもっといい方法があるかもしれません。

3.技術者(VJなど)が上記のコンテンツを遅延なく受け取り配信できること、演出を加えられること

※「OBS Studio」の使い方はググってください。いろんな人がすでにやり方の記事を書いていると思います。

コメント 2020-04-25 203213

こちらは、「配信担当が演出する場合」と、「配信担当が配信のみする場合」があると思いますので別々に記載します。

■配信担当がVJなどの演出をする場合

私の場合は、Resolume Arenaを使ってVJするため、通常イベントなどではMacからOUTした映像を使用してモニター投影やプロジェクター投影しています。

今回は、配信用にmouseのDAIV 5N(Windows機)+VJ用にMac Pro を準備し、Macの映像をキャプチャカード Black magic Intensity ShuffleでDAIV 5Nに取り込めるようにセットしています。

配信用PCに冗長性を持たせるため、業務用のクリエイター向けPCをOBS Studio運用に使っています。

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これによって、OBS Studio上では、Macから流れてくる映像をそのまま映像ソースとして読み込めるので、VJした映像はそのままDAIV 5Nから配信できるようになります。

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また、OBS Studio上でレイヤーを工夫すれば、画面のデザインもできるので単純に画面を出力するよりも、よりステージ演出に近い構成が可能です。

配信担当が配信のみ(遠隔でソースを受け取る)場合

ZOOM画面共有による遠隔VJは可能(※ググれば出てくる)なので、VJ側とZOOMでつなぎ、画面共有された映像をOBS Studio上で表示すれば実現できると思います。

コメント 2020-04-25 210547

私の場合、こちらでDJした音源をNETDUETTOで流す→友人がTouch Designerでビジュアル構築→ZOOMで出力した映像をZOOM画面共有でもらい、そのままOBS Studio上でソースとして読み込みテストしてうまくいきました。

※協力してくれたTaro Kashiwagi(@tr_kswg0222)

- 配信イベント特有の「画面共有っぽさ」を消したい

また、現在よくある”画面共有っぽさ”を消すために、ステージデザインのPNG画像を用意し、それぞれの画面ごとに仮想的なスクリーンをつくります。

このようにすれば、透過した部分を仮想モニター的に扱えるので、あたかもステージ演出かのような見え方になります。付け焼き刃ですが、画面をそのまま出すよりはよっぽどいいと思います。

OBS Studio上でシーンを作れるので、スイッチングしながらいくつかのシーンを作って配信してみてもいいと思います。私も試行錯誤中です。

また、ステージ構成なども要素になるので、イベント演出の方は新しいジャンルの仕事になるかもしれません。

要はOBS Studioでソースが取り込める限り、映像演出は無限に幅が広がるということになります。映像クリエイターとしては腕の見せ所じゃないでしょうか。

4.オーディエンスが満足度を得られること

オーディエンス側の環境はPCやスマホなど、色々な場面を想定しなければなりません。

やはりその場合は、今までのプラットフォームに依存するべきだと思います。

一番は「YouTube Live」だと思います。普段からYouTubeに慣れているユーザーであれば、ライブの配信への導線も違和感ないと思います。

また、視聴者としてストレスなのは、映像や音楽が止まってしまうことや、安定的に視聴できないことだと思います。

上記を考慮すると、すでに映像配信プラットフォームとして実績のあるところを選定するのが良いと思います。

また、ライブ配信についたコメントを取得できるのであれば、ライブ中にオーディエンスの反応やリクエストを受けて違う曲を演奏するなど、双方向性も担保できるかもしれません。

また、アーティストも普段のライブのようにMCや司会を入れたり(≒ZOOMの通話をそのまま配信すれば実現)、音楽だけでないパフォーマンスもできると思います。

5.オーディエンスからお礼としてのフィーをもらう仕組み(投げ銭の仕組み)

こちらも配信プラットフォームの機能に依存するべきと思います。

YouTubeであればSuper Chatで投げ銭ができますし、OBS Studioで配信できるプラットフォームで既に投げ銭を採用していれば問題ないのではないでしょうか?

ただ、一定条件を満たさなければならないこともあるので、別の決済サービス等を利用して、別途SNSで告知しても良いかもしれません。

※執筆時、この記事を見つけたので貼ります。

Disclamer

・配信における著作権などの扱いは一旦考慮せず、技術的な手段を記載しています。配信実施は自己責任でお願いします。

・試行錯誤の方法なので、今後各ソフトの共有方法によって実現不可能になるかもしれません。

・ボーカル含めたバンドセッションの配信テストは未実施です。NETDUETTOの仕様を見る限り可能かと思います。

・それぞれのソフトウェアの使い方は個別にググってください。他の方々がわかりやすい記事を書かれています。

・機材選定については、一旦自分の自宅にあるものをつなぎ合わせているので、ベストではありません。PCスペックは業務用で余裕をもたせていますが、複数ソースの使用や複雑なビジュアルだとわかりません。

最後に

雑ではありますが、「完全遠隔ライブイベント・音楽フェス」の実現方法を書かせてもらいました。

いままでライブ配信を真面目に考えていませんでした。正直、勉強中です。

ただ、長期的に考えなければいけないのは、きちんと双方に満足した状態でお金が回る仕組みであり、一方的な支援でもないコンテンツだと思います。

また、イベントやフェスで偶然いいアーティストを見つけられるなど、リアルイベントにしかない”偶然性”の演出も必要と考えます。

それを実現するために、アーティスト・技術・運営みんなで手を組んでやるしかない状況だと思います。

また、イベントやフェス運営の方々、ライブハウス・クラブ運営の方々は長期に渡るコロナの自粛の場合、世論的にも何もできない状況になると思われます。

少なくとも配信の拠点として箱を活用する、など方法があると思いますので、この記事がその一助になればと思います。

この遠隔配信の仕組みは、応用すれば様々なイベントに使えると思います。そして、とりあえずPCがあればできるので、設備投資もそこまでかからないと思います。誰かの・何かの救いのきっかけになれば嬉しいです。

※もし他にも活用のアイデアがあれば、ぜひ共有してください。

最後に、僕らのこともサポートしてくれたら嬉しいです。SNSのフォローやSpotifyのリンクからフォローなどお願いします。



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