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小2男子と夏の秘密 〜国家機密とおバカの狭間で〜

「きのこっていう人間おるやんかー」

声の甲高い小2くらいの男子2人がそれぞれの小さい自転車にまたがり道幅いっぱいに広がって蛇行運転しながらわたしの横を通り過ぎていった。

小2男子特有の自転車運転技法。
彼らほど気まぐれに公道を走る者はいない。

譲るよ。いくらでも。今のうちにできる自由を自由の意味も分からず目一杯使いな。
彼らの側を通る人々の心の声が聞こえてくるようだった。

もちろんみんな、きのこっていう人間?と思いつつ。

小2男子がきのこ頭のお友達につけたあだ名と思った瞬間、人間という言葉でその線が打ち砕かれる。
お友達の表現方法として人間という総称をつかうだろうか?

きのこっていうやつ。だろそこは。
なぜ、やつじゃない?
やつの丁寧語として人間を使ったのか?

いや、あの自転車の乗りこなし方からするに彼はやつという言葉を普段から使いまくってる筈だ。そして「人間」という言葉が「人」よりも無機質な「人」の表現であることも理解している筈だ。
そこをあえて使ったとすると?
笑いか?
だが通り過ぎいく彼の背中から特に笑いのセンスは感じられない。
人間とあえて表現することによって起こるシニカルを狙った上での人間使いでもないようである。

彼とともに蛇行運転にはげむコナンくんのようなメガネの少年はきのこっていう人間よりも自分たちがこれからどこに向かうかということに夢中で、私たち、一時停止するか端によけるかして彼らに道を譲った私たちがその話題の続きを大いに待ち望んでいることにも気付かず、大声で「てかどこ行くー?なぁどこ行くー?」とコナンくんとはかけ離れた空気の読めなさで、きのこの件を煙に巻いていった。

んだよ、話続けろよと思いつつ、まてよ?もしや?と私はこのコナンくんをきのこの発言者よりも重要人物に押し上げることにしてみた。

メガネは、きのこみたいな人間というワードを意図して煙に巻こうとしたのだと。
そう、きのこ人間は恐らくいるのだ。
見た目は人間、中身はきのこな人間が。
菌どこを寝ぐらとし、きのこしか食べず、かぐやかなきのこ臭をみにまとう新人類が。
彼らの側にいるのだ。
しかし、それはまだ口外してはならない。
決して世間に漏れてはならないのだ。
メガネの少年は理解している。
新たな人類として受け入れられる土壌ができるまで、きのこのことは黙っていろと、しかるべき機関から血判を求められたのだ。
なのにおバカな友達がともするとすぐに口を滑らそうとする。
だからほんとは家にいてプログラミングの勉強でもしてるほうがよっぽど楽しいのにバカみたいに蛇行運転に付き合ってバカみたいに行き先を考えあぐねている少年を演じている。
あぁ、ボーイズビーアンビシャス。
もっと少年らしく振る舞え。
大丈夫、誰にも言わないから秘密を聞かせて。

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