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筋膜、Fascia(ファシア)は加齢に伴いどうなるのか

Yoshiro Morimoto 森本 義朗

さて、最近note頑張って更新していますが、今日も始めていきましょう。

注意:今日は長いです。論文に興味ない方は一番最後がオチですので飛ばしてください。

昨日の記事で書いたことの最後に本題に入れなかったと書きましたが、個人的に気になっていたこととして筋膜、Fascia(ファシア)に限らず徒手療法の世界ではよく即時効果を謳うことが多いですが、それは超長期的な変化にどれほどの影響力があるんだろう、という疑問です。

スクリーンショット 2021-01-06 14.33.42

Frontiers in Physiologyという雑誌の2020年6月のレビュー論文です。

Impact Factor=3.367。そこそこ、悪くないですかね。

タイトル翻訳すると

加齢に伴う筋膜組織・骨格筋・神経の結合の構造的・機能的変化

です。

注意:今日は長いです。論文に興味ない方は一番最後がオチですので飛ばしてください。

Abstract

ではアブストラクトから見ていきましょう!

Aging is a one-way process associated with profound structural and functional changes in the organism. Indeed, the neuromuscular system undergoes a wide remodeling, which involves muscles, fascia, and the central and peripheral nervous systems. As a result, intrinsic features of tissues, as well as their functional and structural coupling, are affected and a decline in overall physical performance occurs. Evidence from the scientific literature demonstrates that senescence is associated with increased stiffness and reduced elasticity of fascia, as well as loss of skeletal muscle mass, strength, and regenerative potential. The interaction between muscular and fascial structures is also weakened. As for the nervous system, aging leads to motor cortex atrophy, reduced motor cortical excitability, and plasticity, thus leading to accumulation of denervated muscle fibers. As a result, the magnitude of force generated by the neuromuscular apparatus, its transmission along the myofascial chain, joint mobility, and movement coordination are impaired. In this review, we summarize the evidence about the deleterious effect of aging on skeletal muscle, fascial tissue, and the nervous system. In particular, we address the structural and functional changes occurring within and between these tissues and discuss the effect of inflammation in aging. From the clinical perspective, this article outlines promising approaches for analyzing the composition and the viscoelastic properties of skeletal muscle, such as ultrasonography and elastography, which could be applied for a better understanding of musculoskeletal modifications occurring with aging. Moreover, we describe the use of tissue manipulation techniques, such as massage, traction, mobilization as well as acupuncture, dry needling, and nerve block, to enhance fascial repair.
直訳:老化は、生体内の深遠な構造的・機能的変化を伴う一方通行のプロセスである。実際、神経筋系は、筋肉、Fascia(ファシア)、中枢神経系および末梢神経系を含む広範なリモデリングを受ける。その結果、組織の本質的な機能や構造的な結合が影響を受け、全体的な身体能力の低下が起こる。科学的文献からのエビデンスは、老化がFascia(ファシア)の硬さの増加と弾力性の低下、および骨格筋量、強度、および再生可能性の損失と関連していることを実証している。また、筋肉とFascia(ファシア)の相互作用も弱くなる。神経系では、加齢により運動野が萎縮し、運動皮質の興奮性が低下し、可塑性が低下するため、変性した筋線維が蓄積する。その結果、神経筋装置が発生する力の大きさ、Fascia(ファシア)連鎖に沿った伝達、関節可動性、運動協調性が損なわれる。このレビューでは、加齢が骨格筋、筋膜組織、神経系に及ぼす悪影響についてのエビデンスをまとめている。特に、これらの組織内および組織間で起こっている構造的および機能的変化を取り上げ、加齢による炎症の影響について考察する。臨床の観点からは、超音波検査やエラストグラフィなど、骨格筋の組成や粘弾性特性を解析するための有望なアプローチを概説し、加齢に伴う筋骨格系の変化をよりよく理解するために応用できることを示している。さらに、Fascia(ファシア)の修復を促進するために、マッサージ、牽引、モビライゼーション、鍼治療、乾式針治療、神経ブロックなどの組織操作技術の使用についても述べている。

です!

さて、なんとも和訳しても難しい展開でした。そしてこのレビュー論文、すごく長い。でもサルコペニアのことや生化学的なところまで踏み込んでレビューしていてとても興味深いです。ひとまず長いので自分的にヒットしたところをいくつかピックアップします。

Connective Tissue and Aging

まずConnective Tissue and Agingのところに注目してみます。

ちなみにこの前にもサルコペニアの話や生理学的な話が沢山ありますので、気になる方は本文を読んでみてください!

Muscular fascia is composed of many different molecules, such as structural proteins (collagens, laminins, fibronectin, vitronectin, tenascin, and elastin), growth factors (TGFs and IGFs) glycosaminoglycans, proteoglycans, metalloproteinases, cytokines, and water.
直訳:筋膜(ここ気になりますがMuscular fasciaと書いてあるので一応筋膜でいきます)は、構造タンパク質(コラゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、テナシン、エラスチン)、成長因子(TGFs、IGFs)グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、メタロプロテアーゼ、サイトカイン、水など、多くの異なる分子で構成されている。

こちらの部分、文脈的には完全にFascia(ファシア)の話ですね。

おそらく引用が2002-2011年となっていますので、その当時の筋膜、の発想でしょう。

その歴史的背景は↑このあたり↑に書いてます。

Fascia, due to its structure and composition, has elastic, viscoelastic and plastic properties that strongly influence the biomechanical features of the locomotory apparatus, as demonstrated both in humans and animal models.
直訳:Fascia(ファシア)は、その構造と組成により、弾性、粘弾性、可塑性の特性を有しており、ヒトと動物モデルの両方で実証されているように、運動器の生体力学的特徴に強く影響を与えている。

弾性だけでなく「粘弾性」というのが面白い表現ですね。

粘弾性(ねんだんせい、英: viscoelasticity)とは粘性と弾性の両方を合わせた性質のことである。 基本的にすべての物質が持つ性質であるが、特にプラスチックやゴムなどの高分子物質に顕著に見られる。
from Wikipedia

ちょっとわかりにくい言葉でもありますので、リンク貼りますね。

↑コチラのページはとてもわかり易い表現で書いてあります。

可塑性」という言葉もあります。コチラは中枢領域でが得意な方はよく聞くものかと思います。神経可塑性についてはこういうのでしょうかね。

一般的に可塑性とは

固体に力を加えて弾性限界を越える変形を与えたとき、力を取り去っても歪(ひず)みがそのまま残る性質。塑性。
Oxford Languagesの定義

です。

このあたり、とても重要な部分ですので勉強すると面白いです。

Muscular connective tissue changes with advancing age, as reported also in studies in animal models. In particular, its thickness and the amount of collagen cross-linking increase, and its elasticity decreases.
直訳:筋結合組織は、動物モデルの研究でも報告されているように、加齢とともに変化する。特にその厚さとコラーゲン架橋量は増加し、その弾力性は減少する。

弾力性が低下し、架橋量が増加する、イメージできるかと思います。

Additionally, the composition of the muscular connective tissue varies; as an example, the amount of collagen type IV rises, and that of type VI reduces.
直訳:また、筋結合組織の組成は様々であり、例えば、IV型コラーゲンの量が増加し、VI型コラーゲンの量が減少する。

IV型コラーゲンが増加してVI型コラーゲンが減少する、ということは所謂線維化する、というイメージかと思います。

As a result, the extracellular matrix becomes more rigid and muscles increase their stiffness, thus resulting in impaired muscle function.
直訳:その結果、細胞外マトリックス(ECM)が硬くなり、筋肉の硬さが増し、その結果、筋肉の機能が低下する。

ECMが硬くなる。これイメージできますでしょうか。

一般的に液体成分のイメージが強いECMですが、骨もまたECMでできています。成分の量が部位によって違います。つまりECMが硬くなる、というのは加齢によって成分量に変化が出る、というイメージかと思います。そうなれば当然筋肉も硬くなるでしょう。筋肉の機能の低下、このあたりは単純に筋肉が硬いから機能が低下する、という考え方に陥らないように注意が必要に感じます。筋肉の機能(muscle function)、という表現も現在特にスポーツ領域などでは曖昧な表現とも言われています。このあたりもう少し掘り起こす必要がありそうです。

Studies in humans and animal models showed that with advancing age the basal lamina becomes thicker and destructured, and the content of collagen type IV, laminin, and the antimyogenic cytokine, osteopontin, increases in skeletal muscle, thus hindering its regenerative potential.
Moreover, a decrease in the number of fibroblasts and stem cells in tendon during aging has been also reported in humans and animal models.
直訳:ヒトや動物モデルの研究では、加齢とともに基底層が厚く破壊され、骨格筋ではIV型コラーゲン、ラミニン、抗筋原性サイトカインであるオステオポンチンの含有量が増加し、再生能力が低下することが明らかになっている。
さらに、加齢に伴う腱の線維芽細胞や幹細胞の減少は、ヒトや動物モデルでも報告されている。

この辺はよくわかりません。笑

でも先程のコラーゲンの含有量の増加には触れられているのと、線維芽細胞と幹細胞の減少、という点ですが、アンチエイジングやガンなどの研究でよくピックアップされるところです。

A recent study by Wilke and collaborators demonstrated that aging is associated with variation in the thickness of the fascia. Indeed, the age-related modifications are specific for different body sites. Fascial thickness of the lower limb decreases with age (−12.3–25.8%), whereas fascia of the low back region increases (+40.0–76.7%) .
These changes in connective tissue have been suggested to reduce joint flexibility. Moreover, the amount of intramuscular connective tissue in the gastrocnemius muscle of elderly adults is reportedly higher than that of young adults.
直訳:Wilkeと共同研究者による最近の研究では、加齢がFascia(ファシア)の厚さの変化と関連していることが実証された。実際、加齢に伴う変化は体の部位ごとに特異的である。下肢のFascia(ファシア)厚は加齢とともに減少し(-12.3-25.8%)、一方、腰部のFascia(ファシア)厚は増加(+40.0-76.7%)している。
このような結合組織の変化は、関節の柔軟性を低下させることが示唆されている。また、高齢者の腓腹筋の筋肉内結合組織量は若年者に比べて多いと報告されている。

Fascia(ファシア)内のIV型コラーゲンの増加、さらにそれを踏まえてのFascia(ファシア)厚の増減、を考えるといいと思います。

Although connective tissue content may change with aging, the amount of cross-linking of intramuscular collagen remains stable, according to the results of a study in the vastus lateralis of young and old adults. Aging results also in a reduction in water content within tendon, as reported in the Achilles tendon of old rabbits, an increase in cross-links between tendon fibrils and a decrease in collagen content and density. Reducing sugars can link to amino acids of collagen fibers and generate AGEs, which accumulate throughout life and result in increased tissue stiffness and strength.
直訳:結合組織の含量は加齢に伴って変化することがあるが、筋肉内コラーゲンの架橋量は、若年者と老年者の側頭筋を対象とした研究結果によると、安定している。高齢ウサギのアキレス腱で報告されているように、老化は腱内の水分量の減少にもつながり、腱線維間の架橋量が増加し、コラーゲンの含有量と密度が減少する。糖質の減少は、コラーゲン線維のアミノ酸と結びつき、AGEsを発生させ、生涯にわたって蓄積され、その結果、組織の硬さと強度の増加につながる。
In addition, reduced elasticity and increased stiffness of aged musculoskeletal system can also be caused by degeneration of connective tissue, which leads to reduced joint mobility in the elderly. At the molecular level, it has been reported that Wnt signaling, the expression of metalloproteinase (MMP) and tissue inhibitor of metalloproteinase genes, which regulate ECM degradation and remodeling, change with advancing age. Barros and colleagues demonstrated that elastic fibers of the cervical interspinous ligaments undergo fragmentation and degeneration, and oxytalan fibers, which confer resistance to the tissue, degrade during aging. As a consequence, ligaments are more susceptible to ruptures following mechanical stress.
直訳:また、高齢者の筋骨格系の弾力性の低下や硬さの増加は、結合組織の変性によっても引き起こされ、高齢者の関節可動性の低下につながる。分子レベルでは、ECMの分解やリモデリングを調節するWntシグナル伝達、メタロプロテアーゼ(MMP)の発現、組織阻害遺伝子が加齢とともに変化することが報告されている。Barros氏らは、頸椎間靭帯の弾性線維が断片化と変性を受け、組織に抵抗力を与えるオキシタラン線維が加齢に伴って劣化することを実証した。その結果、靭帯は機械的ストレスを受けると断裂しやすくなる。
Despite age-related modifications of connective tissue, the effect of these changes on the mechanical properties of tendons, such as strength, stiffness, and elasticity, is still debated, due to conflicting reports. Interestingly, a recent pilot study demonstrated that acute resistance exercise differentially affected young and old adults in the context of metalloproteinase gene expression. These results support the evidence of stimulus-dependent ECM remodeling in the elderly.
直訳:結合組織の加齢に関連した修飾にもかかわらず、腱の強度、剛性、弾性などの機械的特性に対するこれらの変化の影響は、相反する報告のため、まだ議論されている。興味深いことに、最近のパイロット研究では、急性の抵抗運動がメタロプロテアーゼ遺伝子発現の文脈で若年成人と老年成人に異なる影響を与えることが実証された。これらの結果は、高齢者における刺激依存性ECMリモデリングの証拠を支持するものである。

ここまで訳しておいて言いますが、徒手のみでどうにかしようと思えなくなってきますね。

Coupling Between Fascia, Skeletal Muscle and Aging

Muscles and fascia cooperate for the correct functioning of the locomotory apparatus. Their intimate relationship makes the performance of movement strictly dependent on the status of both of them. As an example, appropriate preparation of fascial structures by a warm-up and stretching protocols is essential for optimal results and minimal risk of injury in physical exercises. The structural and molecular changes of skeletal muscle and fascia with advancing age influence the transmission of force in the locomotory system. Intramuscular fascia connects different muscle fibers and muscle bundles within the muscle to form the force-generating structure connected to the bone.
直訳:筋肉とFascia(ファシア)は、運動器が正しく機能するために協力している。筋とFascia(ファシア)は密接な関係にあるため、運動のパフォーマンスは両者の状態に厳密に依存している。例えば、筋膜構造の適切な準備として、ウォーミングアップやストレッチを行うことは、最適な結果を得るために必要不可欠であり、運動時の怪我のリスクを最小限に抑えることができる。加齢に伴う骨格筋と筋膜の構造的・分子的変化は、運動系における力の伝達に影響を与える。筋肉内筋膜は、筋肉内の異なる筋繊維や筋束をつなぎ、骨とつながった力を発生させる構造を形成している。

このあたりは皆様のイメージ通りかと思います。

Indeed, studies in rats showed that the force generated by muscle fiber contraction is transmitted both longitudinally and laterally, through the intramuscular fascia, to the surrounding muscle fibers, till the tendon and the bones. Moreover, molecular features, structure, and orientation of fascial fibers determine how force is transmitted and transferred through connective tissue to other surrounding elements. In humans, recent data showed that the length of muscle fascicles is affected by the coupling between muscle and fascia.
直訳:実際、ラットの研究では、筋繊維の収縮によって発生した力は、筋肉内のFascia(ファシア)を介して、腱や骨に至るまで、周囲の筋繊維に縦方向と横方向の両方で伝達されることが示されている。さらに、筋膜線維の分子的特徴、構造、配向によって、力が結合組織を介して他の周囲の要素にどのように伝達され、伝達されるかが決定される。ヒトでは、最近のデータでは、筋線維の長さが筋とFascia(ファシア)の結合によって影響を受けることが示されている。

縦と横両方で伝達される、というのは面白いですし、個人的には重要なことと思っています。とは言え外界からコントロールできるものでもないのかな、と考えてもいます。徒手の際も運動を促すときもコントロールの際にイメージしておく、という感覚です。

Indeed, heterogeneous fascicle strains have been detected in the medial gastrocnemius muscle following submaximal plantar flexion activity or knee extension. This result has been explained by epimuscular force transmission. Intermuscular mechanical interactions also have important implications in patients affected by cerebral palsy (CP), who suffer from motor disability. It has been suggested that the co-activation of antagonistic muscles of the knee, which causes the limited joint motion in CP patients, is due to altered force transmission through myofascial structures. This makes fascia a key structural and functional element of the contractile apparatus of muscle. As a consequence, the mechanical features of the entire muscle cannot be merely described as the sum of the isolated fascia and muscle fibers.
直訳:実際に、最大足底屈伸運動または膝伸展後の内側腓腹筋において、不均一な筋肉束の歪みが検出されている。この結果は筋外力伝達によって説明されている。筋肉間力学的相互作用はまた、運動障害に苦しむ脳性麻痺(CP)の患者において重要な意味を持つ。CP患者の限られた関節運動の原因となる膝の拮抗筋の共作動は、筋膜構造を介した力伝達の変化によるものであることが示唆されている。これにより、Fascia(ファシア)は、筋肉の収縮装置の重要な構造的および機能的要素となる。その結果、筋肉全体の機械的特徴は、単に孤立したFascia(ファシア)と筋線維の総和として記述することはできない。

ここも重要です。組織的な、あるいはバイメカ的な発想のみでここを考察すると、少々エラーが起きるのではないかと思っています。

運動には必ず中枢及び末梢神経を外してはなりません。

The fluid component of fascia assists in the hydrostat function of the tissue and dissipates energy, whereas the elastic component, made by fibrous protein structures, can store and release elastic energy. Besides the capacity of fascial components to generate force by myofibroblast contraction, fascia can also modulate its composition and structure in response to biomechanical stimulation, thus allowing its adaptation over time to meet the body’s needs. Several studies have demonstrated that muscles located in anatomically separate body regions can exchange tensional stress through a tight link and cooperation with fascial structures, thus contributing to the accomplishment of locomotory tasks and movement proprioception. In the anatomical compartment comprised between leg and trunk, this complex architecture has been described as a myofascial force transmission chain.
直訳:Fascia(ファシア)の流体成分は、組織のハイドロスタット機能を助け、エネルギーを散逸させるのに対し、繊維状タンパク質構造からなる弾性成分は、弾性エネルギーを蓄えたり放出したりすることができる。Fascia(ファシア)成分が筋線維芽細胞の収縮によって力を発生させる能力に加えて、Fascia(ファシア)はまた、生体力学的刺激に応答してその組成および構造を調節することができ、したがって、身体のニーズを満たすために時間をかけて適応させることができる。いくつかの研究では、解剖学的に分離された体の領域に位置する筋肉が、Fascia(ファシア)構造との緊密な連携と協調によって緊張ストレスを交換することで、運動課題の達成と運動のプロプリオセプションに寄与することが実証されている。このような複雑な構造は、足と体幹の間にある解剖学的コンパートメントでは、Fascia(ファシア)力伝達チェーンと呼ばれている。

ここも重要です。先に出た弾性、粘弾性、可塑性の話をより詳しく記載しています。若干気になるこの「myofascial force transmission chain」の話、、命名が若干組織ベースな印象はありますが、以前の記事で書いたようなFascia systems的な要素、そしてプロプリオセプションの話が出てくるところ。ここ要チェックです。やはり末梢神経がここでどのように、そしてどうやって作用しているのかを外してはなりません。

Data collected so far suggest that myofascial force transmission is extremely relevant during muscle lengthening, such as in eccentric contractions and stretching activity. Indeed, the presence of intermuscular mechanical interactions in the lower leg muscles under passive joint motion has been clearly demonstrated by several ultrasound-based studies.
Some pieces of evidence indicate that the close interaction between muscular and fascial structures and the physical continuity of connective tissue along the myofascial chain weakens with age, thus reducing the magnitude of mechanical force transmission. In this context, it has been shown that alteration in myofascial force transmission can influence the effects of nonlocal exercises, as the self-myofascial release of the plantar fascia on hamstring extensibility. Fascial tissue can densify and develop fibrosis with age, thus reducing muscular force production and joint range of motion. Moreover, decreased physical mobility occurring in the elderly could be partially explained by increased stiffness and reduced elasticity of the extracellular matrix due to dehydration and increased collagen content. Indeed, during aging, the connective tissue of patellar tendon increases fiber cross-links and reduces collagen content, and Achilles tendon and plantar fascia diminish their connecting fibers.
直訳:これまでに収集されたデータから、Fascia(ファシア)の力伝達は、偏心収縮やストレッチ活動などの筋伸長時に非常に重要であることが示唆されている。実際、受動的な関節運動下の下腿筋における筋間の機械的相互作用の存在は、いくつかの超音波を用いた研究で明確に証明されている。いくつかのエビデンスは、筋肉とFascia(ファシア)構造の間の緊密な相互作用、および筋膜鎖に沿った結合組織の物理的連続性が加齢とともに弱くなり、その結果、機械的な力の伝達の大きさが減少することを示している。この文脈では、Fascia(ファシア)力伝達の変化が、ハムストリングの伸展性に対する足底筋膜の自己筋膜リリースのように、非局所的なエクササイズの効果に影響を与えることが示されている。Fascia(ファシア)組織は、加齢に伴って緻密化して線維化するため、筋力産生および関節可動域が低下する。さらに、高齢者に見られる身体可動性の低下は、脱水およびコラーゲン含量の増加によるECM(細胞外マトリックス)の硬さの増加および弾力性の低下によって部分的に説明される可能性がある。実際、加齢に伴い、膝蓋腱の結合組織は繊維の架橋が増加し、コラーゲン含量が減少し、アキレス腱と足底筋膜はその結合繊維が減少する。

ここはファシアの日本語訳を「筋膜」にしたほうがいいかもしれません。myofascialと書いてますし、文脈的にももしかしたら。

「筋肉とFascia(ファシア)構造の間の緊密な相互作用」という部分、このあたりをどこがどのようにコントロールしているのか。前述のプロプリオセプションがどのように関わっているのか。想像するとより膨らむかもしれません。

後半は今までのレビューに近しい内容ですね。

Connective Tissue, Inflammation, and Aging

A key feature of aging tissue is, also, the so-called inflammaging, which describes a low-grade chronic systemic inflammation in the absence of overt infection. This “sterile” inflammation is a highly significant risk factor for morbidity and mortality in elderly people. Chronic inflammation influences tissue functions via several mechanisms: persistent production of reactive molecules by infiltrating leucocytes might damage structural elements of tissues; production of cytokines might modulate inflammatory responses and alter phenotypes of nearby cells. Most of the inflammatory responses take place in the extracellular matrix, which can interact with immune cells and change their functions, thereby influencing tissue regeneration. Although early inflammation after tissue damage is important for remodeling and adaptations, decreased inflammation seems to be associated with improved tissue regeneration and gains of muscle strength.
直訳:老化組織の重要な特徴は、また、いわゆるinflammagingであり、これは、あからさまな感染がない状態での低悪性度の慢性的な全身性炎症を記述している。この「無菌的」な炎症は、高齢者の罹患率および死亡率の非常に重要な危険因子である。慢性炎症はいくつかのメカニズムを介して組織機能に影響を与える:白血球の浸潤による反応性分子の持続的な産生は、組織の構造的要素を損傷する可能性がある。炎症反応のほとんどは細胞外マトリックスで行われ、免疫細胞と相互作用してその機能を変化させ、それによって組織再生に影響を与える。組織損傷後の初期の炎症は、リモデリングと適応に重要であるが、炎症の減少は、組織再生の改善と筋力の向上に関連しているようである。

加齢に伴う炎症、inflammaging。これは個人的にも大変興味のある分野です。

実際、入院患者さんでもこのinflammagingの状態をよく散見します。これと組織の関連性があるのであれば、老化にも直結する部分です。ここは深く追っていきたいところですね!

Manipulation Techniques and Fascia Repair

Over the course of a lifetime, fascia can be injured due to excessive or prolonged loading, traumatic events, strenuous physical activity, and surgical procedures. As a consequence of damage, repair mechanisms are activated to restore the original structural and functional features of the tissue. Impairment of this process can cause a reduction in the performance of the locomotory apparatus and musculoskeletal disorders. Therefore, strategies improving myofascial regeneration are pivotal. A broad range of tissue manipulation techniques has been proposed to enhance fascial repair. A study in the treatment of tension-type headache suggests a combination of soft tissue techniques and neural mobilization to be most promising in relieving myofascial-induced pain and dysfunction. The authors highlight the importance of the treatment stimulus to mechanically stimulate nerve and fascia. Indeed, a study performed on people suffering from delayed-onset muscle soreness showed that the sensitivity of high-threshold mechanosensitive receptors is a predictor of pain and motor impairment. Thus, approaches modulating the activity of these receptors may be helpful for functional recovery. This is in line with recent clinical data showing that hands-on based conservative treatments can be effective in relieving pain in injured athletes. These treatments include nerve block, injection, ultrasound and laser therapies, manipulation, mobilization, massage, and traction, as well as acupuncture and dry needling. However, it is not clear whether aging influences the effect of these treatments. There is evidence that multimodal rehabilitation, including classic massage, transcutaneous electrical nerve stimulation, and ultrasound therapy improves pain and function in older women (aged >60) suffering from back pain. A systematic review found limited evidence of pain-reducing effects of physical therapy (three studies, two of them applying soft tissue treatments) among older adults with dementia. In summary, we can only hypothesize that the fascial tissue of elderly people is susceptible to soft tissue stimuli, but its effect has to be determined.
直訳:一生の間に、Fascia(ファシア)は、過剰または長期にわたる負荷、外傷性の事象、激しい身体活動、および外科的処置によって損傷を受けることがある。損傷の結果として、修復メカニズムが活性化され、組織の元の構造的および機能的な特徴を復元する。このプロセスが障害されると、運動器の性能が低下し、筋骨格系の障害を引き起こす可能性がある。したがって、Fascia(ファシア)再生を改善する戦略が極めて重要である。Fascia(ファシア)修復を強化するために、幅広い組織に対する徒手療法(英語はtissue manipulation techniquesです)が提案されている。緊張型頭痛の治療に関する研究では、Fascia(ファシア)誘発性疼痛と機能障害の緩和には、軟部組織の手技と神経モビライゼーションの組み合わせが最も有望であることが示唆されている。著者らは、神経とFascia(ファシア)を機械的に刺激する治療刺激の重要性を強調している。実際、遅発性筋痛に苦しむ人々を対象とした研究では、高閾値のメカノ感受性受容体の感度が痛みや運動障害の予測因子であることが示された。したがって、これらの受容体の活性を調節するアプローチは、機能回復に役立つ可能性がある。これは、怪我をしたアスリートの疼痛緩和には、実地に基づいた保存的治療が有効であることを示す最近の臨床データと一致している。これらの治療法には、神経ブロック、注射、超音波およびレーザー治療、マニピュレーション、モビライゼーション、マッサージおよび牽引、さらには鍼治療および乾式針治療が含まれる。しかし、加齢がこれらの治療法の効果に影響を与えるかどうかは明らかではない。古典的なマッサージ、経皮的電気神経刺激、超音波療法を含む複合的なリハビリテーションが、腰痛に悩む高齢女性(60歳以上)の痛みと機能を改善するというエビデンスがある。システマティックレビューでは、認知症の高齢者における理学療法の疼痛軽減効果についてのエビデンスは限られている(3件の研究が行われ、うち2件は軟部組織治療を適用したもの)。まとめると、高齢者のFascia(ファシア)組織は軟部組織の刺激を受けやすいという仮説を立てることしかできないが、その効果は確定しなければならない。

リモデリング、という言葉はある種都合のいい言葉だと思っています。正確に理解せずとも表現できるので。マニュアルセラピーでもこのリモデリングを促す、という形であらゆる誤ったものが世の中に出回りました。

正直なところ、このリモデリングを徒手で、というのはきっかけづくりにはもちろんいいのでしょうけど、過剰な行為は副作用のほうが多いのではないかと思っています。

Conclusions「結論」

Aging is associated with metabolic, structural, and functional modifications of cells, tissues, and organs, which lead to a gradual decline in psycho-physical performance. In particular, the locomotory apparatus loses its effectiveness, due to the molecular and cellular changes occurring in the myofascia, the skeletal muscle tissue, the nervous system, and their structural and functional coupling. Genetics, epigenetics, environment, diseases, lifestyle, nutrition, and injuries also have a prominent role in tissue remodeling occurring with aging. Thanks to recent scientific progress, many phenomena and mechanisms associated with aging have been defined, but still much remains to be investigated. From the perspective of healthy aging, it is crucial to identify and hinder all the age-dependent modifications through specific strategies targeting etiologic factors, and also psycho-social issues. Indeed, ultrasound-based techniques can provide a detailed morphological characterization of skeletal muscle and connective tissue, thus allowing a specific analysis of the detrimental changes occurring in the myofascia with aging. Moreover, tissue manipulation techniques might contribute to improving myofascial regeneration in the elderly. Physical activity has been also suggested as an effective strategy for counteracting the deleterious consequences of aging, given that skeletal muscle plasticity might be only partially lost in elderly individuals. However, this issue is still debated, due to contradictory results. Nevertheless, the constant progress in technology and biomedical research holds great promise for fighting the burden of aging by targeted therapeutic interventions.
直訳:老化は、細胞、組織、臓器の代謝、構造、機能の変化を伴い、精神的・身体的パフォーマンスの低下をもたらす。特に、Fascia(ファシア)、骨格筋組織、神経系、それらの構造的・機能的結合に生じる分子・細胞の変化により、運動器はその有効性を失う。遺伝学、エピジェネティクス、環境、疾患、生活習慣、栄養、怪我なども加齢に伴う組織のリモデリングに大きな役割を果たしている。近年の科学的進歩のおかげで、老化に関連する多くの現象やメカニズムが定義されてきたが、まだ多くのことが解明されていない。健康的な加齢の観点からは、病因因子や精神社会的な問題をターゲットとした特定の戦略を通じて、加齢に依存したすべての変化を特定し、阻害することが極めて重要である。実際、超音波をベースにした技術は、骨格筋と結合組織の詳細な形態学的特徴を提供することができ、加齢に伴うFascia(ファシア)に生じる有害な変化を具体的に分析することができる。さらに、組織に対する徒手療法(英語はtissue manipulation techniquesです)は、高齢者のFascia(ファシア)再生の改善に貢献する可能性がある。また、高齢者では骨格筋の可塑性が部分的にしか失われていないことから、運動は加齢による悪影響を打ち消すための有効な戦略であることが示唆されている。しかしこの問題は、矛盾する結果が出ているため、いまだに議論されています。それにもかかわらず、技術と生物医学研究の絶え間ない進歩は、ターゲットを絞った治療介入によって老化の負担と戦うための大きな可能性を秘めている。

論文ピックアップはここまでです。

読んでくれた方に感謝、です。なかなかエビデンスという意味ではこのフィールドはまだまだ、まだまだというのがわかります

リハビリの世界には即時(超短期)ゴールと超長期ゴールがいると思う

徒手療法が好きな方が表現する
「ほら、変わったでしょう?」
というやつ。きっとあれは超即時効果であり、それを把握することもとても重要だと思っています。

そういう意味で、リハビリの世界でもSTG、LTGだけでなくImmediate Term Goals(ITG)が必要に感じています。これが弱いから「リハビリセラピストは触診や治療技術が弱い、下手だ」、と他分野のセラピストに言われるんだと思います。

一方で急性期や回復期のセラピストが陥る「ゴール設定を退院時に持ってくる」問題(そしていまや生活期のセラピストにもいると思っています)。

リハビリテーションの専門家として、やはり医学モデルと社会(障害)モデルの並走をしていく方向にするため、XLTG(Extra Long Term Goal)を想定してはどうだろうか、と考えています。

今回の研究でも述べていましたが、加齢や老化はまだ未発達なフィールドです。だからこそ、

Aging is associated with metabolic, structural, and functional modifications of cells, tissues, and organs, which lead to a gradual decline in psycho-physical performance. In particular, the locomotory apparatus loses its effectiveness, due to the molecular and cellular changes occurring in the myofascia, the skeletal muscle tissue, the nervous system, and their structural and functional coupling. Genetics, epigenetics, environment, diseases, lifestyle, nutrition, and injuries also have a prominent role in tissue remodeling occurring with aging.
直訳:老化は、細胞、組織、臓器の代謝、構造、機能の変化を伴い、精神的・身体的パフォーマンスの低下をもたらす。特に、Fascia(ファシア)、骨格筋組織、神経系、それらの構造的・機能的結合に生じる分子・細胞の変化により、運動器はその有効性を失う。遺伝学、エピジェネティクス、環境、疾患、生活習慣、栄養、怪我なども加齢に伴う組織のリモデリングに大きな役割を果たしている。

という観点、これは社会モデル的であり、マルチファクター的です。

組織的なミクロと社会モデルのようなマクロの並走を、今後も追いかけていきます。


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