科学的に証明された〝シンプル・イズ・ベスト〟の文章術。
僕の場合、仕事で大きなウエイトを占めるのは、原稿の修正と編集のチェックです。
伝えたいことはなにか。
より伝わるためにどうするか。
与えられた尺に収まっているか。
最後まで見てもらうためにどうするか。
そして〝三方よし〟の出来になっているか。
様々なことを考慮した結果、中身を大幅に変えることも珍しくありません。そんな作業をしたあと、割とよく言われるのが次の感想です。
「シンプルになったね」
実は僕、この言葉に長らくモヤモヤさせられてきました。
どうして「よくなった」ではなく、あえて「シンプルになった」なのか。もしかして、本心では物足りないと思っているけど、僕に忖度して言葉を選んでくれたのでは……。
しかし最近、その葛藤が解消されました。
〝認知負荷〟という理論を知ったからです。
認知負荷とはどんなものなのか、例え話をします。
あなたが誰かに道を尋ねたとしましょう。そのとき、相手からこんな説明をされたらどんな気持ちになりますか?
「今いるのが〇〇通りです。このまま▽▽メートルほど進むと✕✕というお店があります。そこを左折すると△△街道に出るので、◇◇銀行がある交差点まで行ってください。今度はそこを右折すると~~」
「そんなに詳しく言われても……」とうんざりしませんか?
実は人間の脳が一度に処理できる情報って、意外と少ないんです。だからこそ、人になにか伝えたいとき、教えたいときは、与える情報をシンプルにしてあげる必要があるわけです。
これが、認知負荷の考え方。
おもしろい事例を紹介しましょう。
昨年、イタリアのサクロ・クオーレ・カトリック大学から発表された調査です。彼らはアイトラッキング技術を用いて被験者の視線を追いました。提示したのは動画広告と静止広告。さあ、広告効果が高かったのはどちらだったと思います?
答えは静止動画。
動画広告は認知負荷が大きいため、静止広告よりも回避される傾向があったそうです。
文章においても、同じことが言えそうですね。
✅修飾語ばかりで一文が長い
✅難解な語句、言い回し
✅あれもこれもと要素を詰め込む
✅話の流れを淀ませる余談
✅丁寧すぎる情景描写
✅見た目に余白がない
✅覚えなくてはいけない前提が多い
✅主語(主体)がコロコロ変わる
✅専門用語を乱発する
✅漢字ばかりで見た目がゴテゴテ
これらは認知負荷が大きい典型例です。
さあ、僕が長らくモヤモヤさせられてきた問題は、これで解決しましたね。
「シンプルになった」とは「認知負荷が小さくなって伝わるようになった」ということ。つまり、褒め言葉として受け取ってよさそうです。
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