機龍警察 暗黒市場:月村了衛:重い、暗い、厚い、深い。

「機龍警察 暗黒市場」(7,8/2021年)

重い、ストレートに重い。そして暗い、厚い、深い。この読み応え、たまらない。警察小説をしっかり、じっくりと読んだ。質の良い読書をした喜び、ありがとう。

シリーズ第3弾はユーリが主役。武器のブラックマーケットが今回のテーマであり、彼のロシアでの過去が明らかになる。なんて悲しく辛い過去なんだ。

誰が敵で味方なのか。警視庁、そして警察庁でも見極めが難しい闇の中。それがロシアならば、もっと過酷な裏切りが日常である。ユーリもその波に翻弄されて日本にたどり着いたことが分かる。

さらに政治と正義の問題が更に深い闇を生み出す。正義の定義は時の権力者が決めることである。政治とは大げさに言えば世の善悪を決めることに他ならない。その中で翻弄される警察官たち。それは日本もロシアも同じである。

最後に頼れるのは人と人の繋がりなのか。それとも、人と人の繋がりを重視するから不安定な世の中になるのか、この作品が問いかける。人を信じることは大切だけど、もし信じる相手を間違ったらどうなるのか。もし信じ方を間違えたらどうなるのか。そして「信じる」と「裏切る」は表裏一体であるという事実も心を揺さぶる。

出来ればシリーズ頭から読んで欲しいけれど、ここから初めても全く問題無いと思う。機龍の存在があるからこそ、ここまでディープな世界観が書けるのだと思うと、今後の物語、楽しくてたまらない。

機龍というマシンが人を優しく冷たく包む様に震える、最高です。

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