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『PERFECT DAYS』に出てくるリデザイン公共トイレ「THE TOKYO TOILET」

ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』に感動したという人は少なくないだろう。私もその1人である。

とはいえ映画の感想は人それぞれ。良かったという人も、あんまりだったという人もいる。ただ映画を観ていて、劇中に登場するトイレには、実際に行ってみたくなったのではないだろうか。

『PERFECT DAYS』は、役所広司さん演じるトイレの清掃員、平山さんの何気ない日常を、魅力ある周囲のキャラクターや木漏れ日の溢れる美しい映像、ヴェンダース監督のセンス光る選曲などによって彩った映画である。

平山さんが普段、掃除してまわっているのは「THE TOKYO TOILET」というプロジェクトにおいて、16人の建築家をはじめとするクリエイターらが、渋谷区にある公共トイレをリデザインしたもの。これらの個性的なトイレが『PERFECT DAYS』の見どころの一つなのだ。

というかそもそも映画がつくられたのは、このプロジェクトを広く知ってもらうためという背景もある。

映画を鑑賞してから、実際に17カ所にあるすべてのトイレに行ってみた。「THE TOKYO TOILET」の公式サイトで「東京のトイレを立ち寄りたくない場所から一度は入ってみたい場所へと変えた」と説明しているが、まんまと乗せられてしまった形だ。

今回は、平山さんが普段掃除しているトイレ、代理で掃除したトイレ、映画には登場しなかったトイレの3つに分けてかんたんにご紹介したい。

平山さんが掃除しているトイレ

タコ公園のイカトイレ

by 槇文彦(建築家)

恵比寿東公園トイレ
恵比寿 1-2-16
映画の中で一番最初に出てくるトイレでもある
確かにイカの形をしている

このトイレは映画冒頭と、平山さんの姪のニコと一緒に来た時と、2回登場。

森のコミチ

by 隈研吾(建築家)

鍋島松濤公園トイレ
松濤2-10-7
階段を上って奥が子どもの迷い込んでいたトイレ
陽が傾きかけた時間だったのでほぼ日陰
陽の当たる時間ならもっと良さそうである
「ユニバーサルトイレ」の中はこんな感じ

ザ トウメイ トウキョウ トイレット

by 坂 茂(建築家)

この鍵をかけると壁が不透明になるトイレは有名なので、映画を観ていなくてもご存知の方はいるかもしれない。

代々木深町小公園トイレ
富ヶ谷1-54-1
黒人の女性が平山さんに使い方を聞いていたトイレ
寒い季節は壁の色が変わるのに時間がかかるらしく、
今の季節はずっと不透明らしい、夏にまた来てみたい
トイレの正面には、田中泯さんが踊っていた丘

すぐ隣の公園に、同じく坂 茂さんによる「ザ トウメイ トウキョウ トイレット」の色違いがある。柄本時生さん演じる平山さんの後輩たかしのところへ、恋人であるアヤちゃんがやってきたのも、この公園だ。

はるのおがわコミュニティパークトイレ
代々木5-68-1
先ほどのトイレと同じく、今時期は常に不透明である
裏から見るとこんな感じ

地図を見てみると、平山さんがいつも昼休憩をしていた代々木八幡宮が割と近い。踏切を渡って山を越えたらすぐである。

正面奥の山を越えたら…
というか木の生えているあたりが代々木八幡宮だ
裏からも行けるが、一旦正面へまわる

代々木八幡宮のふもとに次のトイレがあった。

ナルホド、このトイレの清掃が終わってそのまま代々木八幡宮へ上がってお昼、という流れだったのか。

Three Mushrooms

by 伊東豊雄(建築家)

代々木八幡宮の森から生まれた3本のキノコのようなトイレというコンセプトだそうだ。

代々木八幡公衆トイレ
代々木 5-1-2
平山さんはいつも左にある階段から上へ登る
代々木八幡宮の正面入り口は反対側
映画では、ここでの清掃を終えてお昼を食べていた
○×ゲームをしていたのもこのトイレ
代々木八幡宮で、
平山さんが撮影していた木々(多分)

ANDON TOILET

by 坂倉竹之助(建築家)

西原一丁目公園トイレ
西原1-29-1
ここについたのはちょうどお昼時
木の陰が良い感じである
たかしが幼なじみのでらちゃんに
耳を引っ張られていたのがこのトイレ
映画のテーマである「木漏れ日」をトイレ内でも感じられる
なんかもう、住みたいレベルだ

あまやどり

by 安藤忠雄(建築家)

神宮通公園トイレ
神宮前6-22-8
上の写真とは逆側、円形で入り口が両サイドにある
私の下手な写真では伝わらないが、
中がとてもカッコ良いのである

恵比寿公園トイレ

by 片山正通(インテリアデザイナー) / Wonderwall®︎

恵比寿公園トイレ
恵比寿西 1-19-1
「緑」がある
ほかのトイレにも多い共通点
ニコちゃんが床掃除を手伝ったトイレ内

平山さんが代理で掃除したトイレ

主人公の平山さんが、自分の業務エリア以外のトイレを清掃するシーンがある。登場回数は少ないが、ここもまたすごく印象的なトイレたちだ。

TRIANGLE

by 田村奈穂(プロダクトデザイナー)

役所広司さんの、イチオシのトイレはここだそう。

東三丁目公衆トイレ
東3-27-1
実はこのど真ん中に軽トラが停まっていたが、
お願いしたら車を動かしてくれた

THE HOUSE

by NIGO®(ファッションデザイナー/クリエイティブディレクター)

神宮前公衆トイレ
神宮前1-3-14
平山さんが駐禁を切られそうになるトイレ
すぐ近くの歩道橋の上から
映画もここから撮影したのではないかと思われる

WHITE

by 佐藤可士和(クリエイティブディレクター/ SAMURAI代表)

恵比寿駅西口公衆トイレ
恵比寿南 1-5-8
ライトアップがキレイなのでおすすめは夜
だからなのか、映画で登場するのも夜
夕方はこんな感じ

Hi Toilet 手をつかわないトイレ

佐藤カズー(クリエイティブディレクター) / Disruption Lab Team

七号通り公園トイレ
幡ヶ谷2-53-5
このトイレも木の影が良い感じである

ここは外観が良かったために、外ばかり見て内装をちゃんと見ずに失敗した。

タイトル通り、トイレ内での全ての動作をボイスコマンドで行えるトイレなのに、試さなかったのである。次世代の、「非接触トイレ」なのだ。ここを訪れた方は、ぜひ私と同じ失敗をしないでいただきたい。

映画には登場しなかったトイレ

ここからは映画には登場しなかったトイレの紹介だ。いずれも個性的で素晴らしいトレイたち。

まちあかりのトイレ

by 小林純子(建築家)

笹塚緑道公衆トイレ
渋谷区笹塚1-29
右側の小さい2つの円柱は「子ども用」

…With Toilet

by マイルス・ ペニントン教授 / 東京大学DLXデザインラボ

幡ヶ谷公衆トイレ
幡ヶ谷 3-37-8
存在感があったので交差点の反対側から撮影
床にある円形の穴に専用のベンチの足が入る
私が行った時にはベンチはなかったが、
あったらずっと居座ってしまいそう

器・泉(うつわ・いずみ)

by 藤本壮介(建築家)

西参道公衆トイレ
代々木 3-27-1
今回まわった中で一番好きだった
1本だけ生えてる木がニクい
さまざまな高さの手洗い場があることで
子どもからお年寄りまで使えるようになっている

裏参道公衆トイレ

by マーク・ニューソン(インダストリアルデザイナー)

裏参道公衆トイレ
千駄ヶ谷4-28-1
石垣があるトイレ
床にも案内表示があった

Monumentum

by 後智仁(クリエイティブディレクター・アートディレクター/WHITE DESIGN代表)

広尾東公園トイレ
広尾 4-2-27
世界人口と同じ79億通りのライティングパターンがあるらしい
来たのは夕方4時くらい、昼にまた来てみたい


以上、16人のトップクリエイターによる17カ所の公共トイレである。

私は2日間かけてすべて徒歩で回ったが、見学したり撮影したりなどの時間を入れると合計で7時間くらいかかった。レンタルサイクルやLUUPを使えばもっとかんたんに回れると思う。

また近い範囲に何個か集中しているエリアもあるので、数回に分けて見て回るのも良いだろう。公式サイトにMAPがあるので、興味のある方はぜひとも見てみていただきたい。

全てのトイレをまわった後に、もう一度『PERFECT DAYS』を観に行った。役所広司さん演じる平山さんがどう行動して何を見たのか、より身近に感じられるようになったと思う。せっかくの機会なので、トイレも映画も存分に堪能してみてはいかがだろうか。


▼「THE TOKYO TOILET」公式サイト


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