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素晴らしき世界 Ⅱ

連休中に、普段は会う機会のない専門学校時代のクラスメイトと集まり、ドライブに出掛けた。とはいえ8ヶ月ぶりの再会で、新鮮味はない。それぞれが想像通りの風貌で、衣類が冬服から夏服に変化しただけである。
今回のドライブは遠方から遊びにきてくれたSちゃんを中心に計画された。ガンプラを積み散らかすのが趣味な彼のために、僕の地元で玩具屋をめぐることに。
ガンプラ道を極め、ひたすら猛突進する人間の嗅覚は凄まじい。初見の店舗であっても、目的のコーナーへ辿り着くスピードは、地元民の僕でさえも置き去りにする。
彼は社会人になってからも、青春がずっと続いている。むしろ、学生時代より財力を得て無敵になった。
彼の部屋を写真で見たことがあるのだが、未開封のガンプラが天井までびっしり積み重なり、ベッドと作業スペース以外はすべて侵食されていた。プラモデルとわずかな生活スペースの領域はなんとなく区切られているように見えたが、それでも混沌とした8畳に狂気を感じざるを得ない。写真も縦で見ればいいのか、横で見ればいいのか迷うほどだ。あと、ガンプラとは無関係だが、蛍光灯からスイッチの延長紐が垂れていて、実家を思い出した。紐の長さを調節する球を、回し蹴りしていた中学時代の記憶も同時に甦る。
ドライブ前は、「収集癖はあるが、響くものしか買うつもりない」と冷静を装っていたが、解散する頃には両手いっぱいに買い物袋をぶらさげ、へらへらと浮かれていた。そこらのガンプラに、ばしばしハートを射抜かれているのだ。
学生時代から全く変わっていない風貌と精神構造に、愛らしさと羨ましさを感じたが、僕にはすべてのガンプラが同じにしか見えなかった。

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