SaaSの営業がキャズムを超えるために知っておくべき4つの分類(SaaS Enterpriseとは)
前回のnoteではSaaSの営業の存在価値が低い理由
前々回のnoteではSaaSの営業が難しい理由
をご説明いたしました。
その上で、今後、日本国内のSaaSがさらなる発展をしていくためには、
営業がキャズムを超える(=Enterprise領域に進む)必要がある。
というお話でございます。
このnoteで伝えたいこと
SaaSの営業におけるEnterpriseは、単なる大企業担当ではありません。
SaaS×サブスクリプションという新しいビジネスモデルにおいては、今までの営業手法からマインドを転換する必要があります。
なので、SaaSの営業におけるEnterpriseとはなにかを正しく理解し、みんなでキャズムを超えてSaaSをもっとメインストリームにしていこう!という思いでこのnoteを書いています。
また、私自身がSaaSにおいてインサイドセールス、SMB、Enterprise、マネージャーとすべてを経験しており、営業目線で解説するという点もちょっとしたポイントです。
一般的なEnterprise営業とは・・・
一般的に語られるEnterprise営業とは、
大手企業や政府機関などの、大きな法人を担当する営業を指します。
また、中小企業担当の部隊をSMB(Small & Middle Business)、
それよりも小規模な企業の担当をSOHO(Small Office,Home Office)
と区別することが多く、
Enterprise
↓
SMB
↓
SOHO
↓
Consumer(B2C)
のような順序になります。
それぞれの区分けは、企業毎に異なりますが、
従業員数1000名であったり、売上500億円であったり、売上や従業員数で区切られることが一般的。
また、Enterpriseを担当する営業は
・高単価の大型案件を専門とする
・長い期間、商談を追っていく
・担当する企業、案件数は少ない
という特徴があります。
SaaSの営業におけるEnterpriseとは
では、SaaSにおけるEnterpriseとは何かを先に定義したいと思います。
下の図をご覧ください。
こちらは、SaaSの製品を、
・製品の価格(ACV=100万円程度がだいたいの区切りくらい)
・製品の複雑性(及び、顧客獲得にかかるコスト)
の2軸でマトリックスにしたもので、SaaS Sales Modelと呼ばれています。
この分類に沿っていくと、
以下の4パターンに分けられます。
複雑性:低×価格:高=Transactional
複雑性:低×価格:低=Self-Service
複雑性:高×価格:高=Enterprise
複雑性:高×価格:高=Graveyard
では、この4象限とそれらの営業について解説していきます。
(各サービスのプロットは、私が行いましたので、多少の違いがあるかもしれませんので、ご意見はお気軽にどうぞ!!お知り合いの方はお手柔らかに・・・)
Transactionalに分類されるSaaSとその営業
Transactionalに分類されるSaaSは、
インバウンド×対面営業
と考えてもらえたら分かりやすいです。
基本的には、業種や業界などに関係なく、「人事向け」や「マーケ向け」「営業向け」 などの特定の職種の人が使うサービスであるケースが多く、(ホリゾンタルSaaSと呼ばれています。)
例えば、HRMOSなら人事向け、bellFaceならインサイドセールス向けなどといった具合です。
これらのサービスの場合、業種、業界、企業規模を問わず多くの企業がターゲットになるため、個別の案件に時間をかけていては、成長ができません。
そのため、Salesforceが提唱し、実践している*The Modelのような分業制が非常に有効となります。
(*The Modelについては、こちらの方のnoteがわかりやすかったです。)
弁護士ドットコムのTakujiさん
マーケティングが多くのリードを集める
↓
インサイドセールスが案件化させる
↓
フィールドセールスは成約に集中する
上記のように、
・数多くの案件を
・効率良く
・確実に受注する
ことがミッションです。
そのため、営業として求められることは、
とにかく、活動量×スピードです。
(ある種、軍隊的な統率も求められるため、体育会系な風土の組織が多い印象です・・・いや、多い。)
ここに属する営業としては、
SalesforceのSMB部隊をはじめ、日本のインサイドセールスの顔的な感じになりつつある、ビズリーチの茂野さん率いるHRMOSや、UZABASEのSPEEDA(ここのインサイドセールスは電話かかってくるまでが本当に早くてすごいなと思いました。)等が挙げられます。
サブスクリプションの真髄、Self-Service
左下のSelf-Serviceに分類されるサービスは、基本的に営業が相対せずに、
顧客自らの意思で、自分でサービスを買う。という分類です。
Self-Service型が成り立つ前提の条件として、
・顧客自ら導入を手動(DIY型)
・低価格
・導入決定する人=使う人のロータッチ
・ホリゾンタルSaaS
などがあります。
今回は営業がテーマなのでSelf-Serviceについての深い言及はしませんが、
以前の私のnote(月額課金とサブスクリプションの違い)
で寸止めになっていた、「プライス・パッケージングの最適化」とあわせて、Self-Serviceについても近いうちに解説します。
売れないですよね、Graveyard
複雑性(顧客獲得コスト)が高く、安いサービスは死ぬでしょう・・・
ということで、これ以上の説明は割愛します。
以下読み物として・・・
死んでいったスタートアップの墓場
キャズムを超える鍵、Enterprise
最後にEnterpriseです。
念の為、先程の図を再掲します。
ここで着目いただきたいポイントは2つです。
①Self-Serviceに分類される企業がEnterpriseの営業部隊も持っている
(Slackをはじめ、DocusignやBOXなど)
②Enterpriseは現時点では外資系企業が中心
(自国でSaaSがキャズムを超え、グローバル展開している)
①については、
セルフサーブで低価格で1部門からスモールスタートできる一方、
顧客が効果を感じたタイミングで全社へ一気に展開がはじまり、その結果、高額の契約を結ぶ企業が多くいるという事実もあります。
BOXやSlackは顕著で、もともと個人を中心にSelf-Serviceでサービスを展開し、企業の1部門(もしくは企業内の個人)をユーザとして獲得する。
そして、導入によって効果を感じたユーザが中心となり、全社展開をされていく。結果として、1企業と数千万円レベルの契約を結ぶなんてことも珍しくありません。
Self-Serviceから始まったBOX社も、現在ではARR500億円をこえていますが、そのほぼ大部分が大企業向けの営業部隊から生み出されています。
また、これらの企業のポイントはリテンションレート(もっと正確にいうと、Net Revenue Retention)が高いということです。Slackはリテンションレートが140%を超えています。
リテンションレートをもっと噛み砕くと、年間100万円の契約があった場合、来年その顧客がいくらお金を払うか。という指標で、
Slackの場合は140万円以上支払ってもらえることになるのです。
(すごい・・・)
②ついては、
キャズムを超えるために営業がやるべきこととして、
ターゲティング
アウトバウンド
商談のマネジメント
忍耐
その他諸々・・・
を解説したい・・・のですが、想像以上に書きたいことがあり文字数も3000字を超えてしまったので、続編とさせてください。(引っ張ってるつもりはありませんのでご容赦を!)
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