【ロシアのウクライナ侵攻から間もなく2年】日本では報道されないウクライナの現実・日本人の知らないウクライナ国民の今サイバーハッキングとも戦うウクライナの民間企業、戦禍でもビジネスを止めないデジタル国家への変貌、政府の仕組みつくりで甚大な被害からの復興も進行中

こんにちは、株式会社DIVERTの高野です。ウクライナのAI/IT企業「MUTEKIグループ」との合弁事業に合意し、2023年12月に日本の営業拠点としての法人を東京都立川市に設立しました。当社はウクライナとのビジネスに精通しており、MUTEKIグループ社のパートナーです。よって現地社員が困難に打ち勝つ姿を日本に発信していきます。

【サイバー空間での攻防】
ウクライナでの悲惨な戦闘シーンは日本のメディアでも報道されていますが、戦闘は戦場だけではありません。近年はサイバー空間での戦いも戦争のフィールドとなっています。今回の侵攻でも、目に見えないサイバー空間での戦いが激しく行われました。例えば、2023年12月の初旬にはウクライナ最大の通信事業者であるKyivstar(キーウスター)社がハッカー攻撃を受けました。これにより、国の半分近い通信が停止し、通話やクレジットカードの決済なども停止しました。ウクライナでは電子決済が発展しており、日常生活へのダメージも大きかったでしょう。しかし、科学技術に自信を持つウクライナは迅速にシステムを復旧し、現在は日常に戻っています。ただし、ハッカーとの闘いは続いていくでしょう。

【家族を残して戦いに行く悲劇】
戦争は悲劇と苦痛だけではありません。その中で捕虜という悲しい現実も存在します。ロシアのウクライナ侵攻でも多くの人々が捕虜になっています。しかし、2024年初めに侵攻開始後から約49回の捕虜の交換が行われました。約半年間、捕虜の交換が滞っていましたが、230人の捕虜がウクライナに帰還し、喜ばしいニュースとなりました。ただし、戦争捕虜を乗せた飛行機が墜落したという報道もあり、痛ましい事実として哀悼の意を表します。 

久しぶりの再会に歓喜する人々

【クリスマスシーズンを狙った総攻撃】
 これは日本でも報道されましたが、この年末年始は大規模なロケット攻撃やドローンの攻撃が発生しました。ウクライナはクリスマスシーズンをとても重要視する国民です。ロシアの侵攻により、2023年に法律が改正されてしまいましたが、それまでは12月25日以外にも1月7日をクリスマスの休日と定めていました。法改正の理由は他でもありません、ロシアとの違いを強調したかったのです。その年末年始のウクライナ国民のささやかな楽しみでもあったクリスマスシーズンの大規模攻撃。市民の怒りと悲しみを大きく助長させたのは間違い無い事実です。永遠に忘れないと怒りを露わにする市民ばかりです。
最も激しい攻撃があった地域のひとつが、MUTEKIグループの本社があるハルキウ(Kharkiv)でした。かつて人口100万人以上が暮らしていた、ウクライナの科学技術の中心地です。12月29日の攻撃ではウクライナ側も27台のドローンと87発のミサイルを打ち落としていますが、それでも被害は甚大です。ちなみにその時発射されたミサイルはイラク製とも言われています。ロシアも世界中から武器を調達しているのでしょうか。年明け早々にもドローン90台の攻撃がありました。ウクライナ市民は本当に怒りと悲しみに包まれています。

攻撃を受けた建物

【戦禍の中でも外交を続けるウクライナ】
 一方戦争以外にも外交やデジタル国家への変革も積極的に推し進めています。外交面から整理しますと、昨年の12月14日、EUはウクライナの加盟を承認いたしました。これはウクライナ市民にとっても明るいニュースのひとつとして喜ばれています。20年間目指してきた国是がようやく叶った瞬間でした。あとは侵略戦争さえ終われば、ヨーロッパとの統合で、しっかりとした明るい祖国の未来をイメージできるところまでたどり着いたという、喜びの明るい希望でした。
これと並行して、トルコ、ルーマニア、ブルガリアとは個別に協定を結びました。ロシアの機雷が港や海底ケーブルなどの通信設備、黒海の海運インフラに危険を及ぼす可能性を排除するために、除去についての協定です。イギリスのスナク首相はウクライナのゼレンスキー大統領との間で、双方向の安全保障協定にサインしています。NATOの枠組みに準拠した安全保障を公式的に提供する最初の国、それがイギリスです。

【戦禍の中でもデジタルの推進を推し進めるウクライナ】
 デジタル国家の推進策としてはDiiaと呼ばれる政府のポータルサイトの拡充を中心に推し進めています。
例えば車の輸入。日本では想像し難いのですが、地続きのウクライナ国境では海外から車を買ってきて自分で運転して乗って帰るという車の輸入方法もひとつの手段です。その場合の税関手続きもDiiaを通じてデジタル化を推し進められます。今ではスマートフォンからの申請で、10分程度でリモートでもできるようになりました。汚職大国という悪名もあったウクライナですが、デジタル化の推進で透明性を図るという意図もあり、努力も進んでいます。
数々のミサイルは住人を恐怖に陥れ、建物に甚大な影響を与えました。ハルキウの街にはロシアの侵攻前には、約1万棟以上の高層建築物が建っていました。そのうち約5,000棟が損傷または破壊されてしまいました。結果として約15万人が住む場所を失いました。現在、これらの人々はハルキウの人道的なシェルターや他都市の政府提供の住宅に避難しています。そんな建物も復旧が進んでいます。
これも政府のポータルサイトDiiaを利用して損害の補償を申請することもできます。この申請もオンラインで処理され、申請者の銀行口座には修復に必要な資金が振り込まれます。攻撃が継続される中、政府は緊急支援を提供する枠組みを構築しました。壊れた建物の周りを清掃し、次に壊れた窓や輪郭、屋根を修復し改めて住める建物へと変貌させています。

破壊された建物も復興が進む

【ウクライナへ帰ってくる市民の増加】
ウクライナの国家国境警備隊の数字によれば2023年は3200万人の人々が国境を往来したと発表しています。これは2022年の同時期に比べると160万人多い結果でした。2023年のクリスマスの前の週には約40万人がウクライナに入国(帰国)した実績もあります。多くのウクライナ人は平和と安全が回復すれば、故国に戻りたいと願っています。

こちらも綺麗に修復された建物

【研究開発の前進とスタートアップの誕生は続く】
 コロナ前のようにユニコーン企業を輩出すべく、エンジニアは未来を見据えて勉学に励んでいます。軍事用として開発を続けてきたドローンではありますが、現在は小麦の輸出にも活用して運搬しています。1,000キロメートルを航行するドローンも誕生し、戦禍の中ではけが人の輸送などにも活用されていると噂されています。
Diiaを使えば5分から10分で、海外からでも企業の創業手続きが可能です。新しい創造のためには、スタートアップが沢山生まれることをとても重要視しています。登記の手続きをデジタルで簡略化することで、本業に専念できる環境を政府が先頭に立ちデジタル化を推し進めています。

キャベツをくり抜いた器のボルシチ

【ウクライナ愛を追及する市民】
また、ウクライナでは祖国愛を盛り上げるために、ウクライナ料理のレストランが流行っています。ボルシチ、実はウクライナ発祥の料理です。そんなボルシチを代表とする祖国愛を表明するウクライナ料理のレストランも年末年始の攻撃で大きく被害を受けました。日常食を提供するベーカリやコーヒーショップなど多数被害を受けています。でも、この街、この店が好きだった地元市民は、各々が好きな店舗をサポートし、資金を提供しあって三日以内には営業を再開させたという事実もあります。ビジネスも生活も人々が支え合って生活を送っています。

【最後に】
MUTEKIグループ社のウクライナ国内で日々奮闘する社員は常に言います。私たちはウクライナ全国民を代表して、「手助けしてくれる日本に感謝を持ち続けている」と。そして「戦争は続いていますが、近い将来平和が訪れると信じている」とも。

 当社はそんなウクライナをビジネスで支援していくことを目的としています。一日も早く実現する平和に向けて日々邁進していきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?