見出し画像

417 長い文章が読めない

はじめに

社会的な問題ともなりつつあるものとして、長い文章を読む力が低下しているという問題があります。約5割程度の子どもたちが長い文章を読む力が低下しているとも言われています。
このような問題と合わせて、ICTを取り入れることで紙とペンで学習するよりも学力が低下するといった議論が浮上しています。SNSなどをつかったやり取りでは、文字制限があったりできるだけ短い文字やサインで会話をしたりすることを求められるため、短い文章でやり取りすることには長けているのかもしれませんが、興味のない文章を長く読む力は低下しているかもしれません。今日の教育コラムでは、文章を読む力について少しお話してみたいと思います。

学習障がいの側面から

最初に、生活習慣的な力の低下についてではなく、LD(学習障がい)の側面から見ていきたいと思います。
LDの一つに、ディスレクシアという状態があります。知的発達に遅れはないものの学習面で困難のある児童生徒のことを考えた時に、学習面で著しい困難を示している場合があります。その理由が、読み書きだったとき、もしかするとディスレクシアによるものかもしれないのです。
約4.5%が日本では最も近い数字だと言われていますが、割合としては決して少なくありません。研究の進んでいる欧米の調査では、ディスレクシアの人口比率は10~15%と言われています。
研究が進んでいくと日本のディスクレシアの人の割合がもう少し増加するでしょう。

(出典:平成25年版障害者白書第1編第2章「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」)

ディスレクシアと似たような障害として失読症が考えられますが、実態とすれば大きな違いがあります。ディスレクシアは発達性学習障害の1つだという話は先程したとおりです。
一方で、失読症は脳の損傷によって起きる高次脳機能障害の1つですので、後天性と先天性という違いがあります。治療法や対処法も非常に似ていますが、根本の原因が違うということです。
有名な話では、映画俳優のトム・クルーズさん、元アメリカ大統領のジョージ・W・ブッシュさんやノーベル物理学賞アルベルト・アインシュタインもディスレクシアであったという話を聞いたことがります。
関心を持った方は、日本財団のホームページを覗いてみてください。この障がいについて理解を深めることができます。

知っておくだけで変わる対応

ディスレクシアは文字から情報を得ることや考えたことを手書きで出力することが苦手です。つまり、インプットとアウトプットの場面において文字を認識するという行為がその妨げとなるのです。
したがって文字を正確に早く認識したり、書き表したりすることが平均的な人と比べると劣ってしまいます。授業についていけなくなってしまう原因ともなるわけです。
文字で認識できなければ音声や映像で学べばいいですし、手で書くのが苦手でもパソコンで入力することで速さも正確さも補えます。また、音声で入力してもいいわけですし、インプットしてもいいのです。ICTを活用することで学力が下がるという議論は、断片的な手法による成果を一部の結果のみを取り出して特定の人たちに当てはめて議論しているにすぎません。
それぞれの状況に応じて、また、各内容に応じてアナログとデジタルをハイブリットで用いればよいだけなのです。紙と鉛筆がもたらした発展に匹敵する、またはそれ以上の発展をICTは現にもたらしていますし、その効果や運用方法は今後も研究の余地がたくさん残っています。

身近な文字で表現し、コンパクトに伝える技術の向上に努めている現代社会の風潮は、ビジネスシーンにも影響を受けています。効率化や生産性の向上などなど、時間や量をコンパクトにする力は、現代社会においては重要な力なのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?