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389 今だけ、金だけ、選挙だけ

はじめに

立憲主義という言葉があります。この言葉は、中学や高校の社会の学習で目にする言葉です。
この言葉を学ぶのは、私たちが生活をしている日本の国の根幹を担う考え方であるため、扱うのだと私は考えています。その立憲主義という言葉が、教科書に書かれているただの覚えるだけの用語になってしまうのではないだろうかと心配している気持ちを今日のコラムで、少しお話してみたいと思います。

立憲主義とは

元々の意味は、権力者の権力濫用を抑えるために憲法を制定するという考え方を立憲主義と言います。つまり、憲法を定めた上で憲法によって政治を進めていくという意味です。
日本でも大日本帝国憲法が制定されて以降、国民主権・権力分立・基本的人権保障の基本原理を伴った近代憲法が成立していきます。現在の憲法は1945年の終戦を契機に、GHQの指導の下、新たに日本国憲法として定められ今日まで変更することなく私たちの暮らしと共に存在しています。

崩壊の危機にある立憲主義

日本国憲法の前文の理解については、小学校6年生に対してであっても工夫次第で大変深い学習が進められるため、多くの学校で熱心な先生は大変興味深い授業を実践しています。
中でも、子どもたちの学校における自治活動などを行う上でも、選挙について理解することは意義があります。
例えば、憲法前文には「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」というはじまりがあります。日本では、憲法改正国民投票等では、直接民主主義的制度を取り入れていますが、基本的には国会や地方議会に代表を選出しておくるという、間接民主制を用いています。国民代表である国会議員を選出する選挙の中で国民主権というものを具体的に実現しているわけです。
ですから小学校でも学ぶように選挙には普通・平等・ 直接・秘密という近代選挙制度の基本原則があり、これは憲法上の原則となっているということも学ぶわけです。
しかし、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」という正当な選挙が、なされているかどうかが今まさに問題になっているわけです。

立憲主義の崩壊

不当に得た、または、用途を明らかにせずに用いていた政治資金や政策活動費が選挙に用いられていたとしたら、または、実際に広島や東京で起きたような現職の法務大臣や副大臣が買収行為に用いられていたとしたら、私たちは正当な選挙によって国民の代表を選んでいたことになるのでしょうか。
これが例え起訴されているので、違法な行為を法により取り締まっているとしても、裏金を用いて選挙活動をしているような国会議員が政権を担っている国家において、立憲主義は保てているのかという疑問が常に付きまといます。
さらに、政治資金規正法の抜け穴をつくり、裏金キックバック問題のような運用をしていた政権政党が、自らの犯した罪の再発を防止するために明確な抜け穴を準備した法案を提出しようとしているわけです。
このことをごく簡単に言えば、法を犯している可能性のある国会議員が法を立てるということがいかに危険かということが言えるわけです。権力者の権力濫用を抑えるために憲法を制定する、法律を制定することの重要性を権力者自らが無視し、自らの都合の良い解釈と抜け穴を用意した法律を作ることでその利益を得ようとしているとも考えられるわけですから、やはり立憲主義の崩壊を危惧する人は増えてしまうわけです。

理解できない、納得できない授業

理想と現実の中で私たちは生活を送り、学んでいます。権力者の権力濫用を抑えるために憲法を制定することを立憲主義とするならば、今日本で見られている政治不信は、立憲主義が崩壊しかけていることへの恐怖なのではないでしょうか。
権力者を仮に政権を担っている政党としたとき、国民主権が大きく発揮される選挙においてこの権力者が自らの当選のために今だけ、金だけ、選挙の結果だけ考えて、政策を実行し、多額の政治資金を運用していたとしたらと考えている人が多くなっているとしたら、やはり立憲主義への信頼が崩壊しつつあるのかもしれません。
改めて、透明で嘘のない政治を望む国民がどのような判断を選挙で行っていくのかが大切なのだと感じる今日この頃です。

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