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209 大学と地域


はじめに

早いもので今年もあとわずかとなりました。大学共通テストに向けて最後の追い込みをしている学生も多いことと思います。
一方で、いよいよ推薦入試系の結果が続々と出てきていますが、国公立、私立を全体で見てみると雰囲気的にはおよそ半分くらいがもう進学先を決めているような状況に見えます。
さて、今日の教育コラムは、昨日の地方創生に関わる記事に続いて大学と地域の関係について二つの視点で少しお話してみたいと思います。

地域枠

現在、国立大学の約6割において卒業後の将来において、地元に就職することなどを条件にした「地域枠」を設けています。この取り組みは、地方大学を中心に行われているもので、医学部や教育学部といった学部においてこの制度を導入していることが大半です。
目的は、都市部への人材の流出を防ぐことが主な目的です。高校を卒業し、地元の大学に入学し、地元の医療や教育、産業の担い手として地域に尽くすという入学から就職までを約束されたこうした制度は、学生にとっても家族にとっても魅力的なものです。
国立大学を中心にこうした方針を進める背景には、人口減少と過疎化が進むという日本の深刻な社会変化にあります。人が減ることで人材が不足する以上に、過疎地域では医師や教員の絶対数が不足します。また、過酷な長時間労働の実態は就労希望者の減少を生み出しています。こうした実態を踏まえて、各地域は官民学一体となった対応を要望しているというわけです。

地域貢献

話は変わり、次にある調査についてお話ししたいと思います。その調査とは、大学における地域貢献度の調査です。日本経済新聞社が約2年ごとに実施しているこの調査は、十数回にわたって行われてきたものです。
この調査は、全国765の国公私立大学のうち518大学からの回答をもとにまとめられたものです。調査の項目は、「大学の組織、制度」「学生・住民、教育制度・社会人教育」「企業、行政」「SDGs・グローバル」の4分野で構成されています。
地域との関係や協力体制などについて設問がありその結果を基に順位付けされた結果が次のようなものとなりました。

【大学の地域貢献度の総合ランキング (トップ10)】
1位「名古屋市立大学」公立
2位「信州大学」国立
3位「徳島大学」国立
4位「大阪公立大学」公立
5位「鹿児島大学」国立
6位「島根大学」国立
7位「近畿大学」私立
8位「佐賀大学」国立
9位「大阪大学」国立
9位「山口大学」国立

1位の名古屋市立大学は2019年が5位、2021年に初めてトップに立ち、今回2連覇を達成しています。同大学では、最近も区役所と連携して小中学生対象の「薬学教室」を開催しています。また、健康と福祉のために大学がどのように貢献できるかを考えるシンポジウムや、社会人・専門職へのリカレント教育などを実施しているということです。

大学が地域で育てたい人材

大学が地域に貢献しようとする際、あくまでも地域の取組みの主体は住民で あり、それを大学は支援するという姿勢を大切にしています。
主体性が地域になければ、地方の課題解決は達成されないわけです。また、大学の地域に対する支援が長期に渡る場合、地域の主体的な発展を阻害する可能性もあるのです。
大学という場所には「教育をする」ことと、「研究をすること」という二つの命題があるわけですが、「地域貢献をすること」は第三の命題になりつつあるのです。大学という人的にも物的にも整った知の拠点がどのように作用するかは、地域の活性化にも直結する大切な視点なのです。
地域枠の増加や普及は、大学の地域貢献にもつながるように考えることはできないでしょうか。将来的に地域で働く若者たちが増えることは、もしかするとこうした大学と地域が一体となった取り組みの中に大きな解決策があるのかもしれません。
しかし、入学の条件が地元地域で就職することというのは、なかなか変化の激しい現代の社会においては難しい条件だとも考えられます。皆さんは、こうした地域枠の拡大と普及、並びに大学と地元地域との連携についてどのように考えるでしょうか。

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