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【前編】地域の学び舎「プラット」  活動報告会レポート~withコロナの時代に地域コミュニティが果たす役割とは?

千葉県市川市の閑静な住宅地に佇む一軒の古民家。ここにNPO法人ダイバーシティ工房が運営する地域の学び舎「プラット」が正式オープンしたのは、2017年8月のこと。学習塾や発達障害がある子どもたちへの支援、保育、シェルターや自立援助ホーム事業などを展開していくなかで、「どうしたら本当に困っている子どもたちと出会えるのか」と考えたときに、生活の近くに「いつでもぷらっと立ち寄れる」場があることの必要性を感じてつくったのが「プラット」でした。

プラット外観

オープン以来、小中学生を対象とした食事つき無料学習教室、コミュニティカフェ、地域のイベントスペース、そして時には一時的に逃げ場所が必要な子どもたちの宿泊場所として、さまざまな役割を担ってきました。しかし、2020年度はコロナ禍によって「プラット」が大事にしてきた“場を介しての交流”が難しくなり、模索の中での運営が続いています。

3月13日にオンラインで開催されたプラットの活動報告会では、コロナ禍のなかでの運営状況を共有したうえで、withコロナの時代における地域コミュニティが果たす役割について、3名のゲストによるトークを行いました。その内容の一部を活動報告(前編)とゲストトーク(後編)に分けてご紹介します。

ープラット活動報告ー
臨時休校で見えてきた子どもたちの姿

まずは、2020年度の学習教室の状況について、スタッフの宮坂奏子さんから報告がありました。プラットでは主に中学生を対象とした無料学習教室を、毎週月・金曜の18時~20時半に開いています。現在の参加者は毎週約18名。なかでも多いのは受験を控えた中学3年生です。プラットの大きな特徴は、半数近くが親や相談機関などを介さずに参加していること。利用の条件が柔軟で、親との手続きを必要としないため、「友達が友達をつれてくる」といった形で参加する子どもが全体の約27%を占めています。

無料学習

2020年2月末、市川市ではコロナの感染拡大を受けて市内小中学校などが臨時休校となりました。それに伴いプラットの学習教室もいったん休止。休止中は、初めての試みとしてオンラインでの学習教室を開催しました。

 「経済的な理由で塾に行くことができなかったり、家庭環境が複雑だったり、とくに心配な子どもたちを中心にこちらから声をかけて、マンツーマンでのオンライン学習の利用を促す形で行いました」と宮坂さん。
学校再開にあわせて、5月末には学習教室も再開。 コロナの感染拡大を防ぐために、人数制限を設けて時間入れ替え制にし、食事の提供を中止してお弁当を無料配布するなどの工夫をしました。7月には、それまで週1回だった開催を2回に増やして参加人数を分散。食事の調理も一度は再開しましたが、2021年になり再び緊急事態宣言が出てからはお弁当の配布に戻し、希望者には家族全員分のお弁当を渡しています。

 「子どもたちからは、給食がないので野菜が食べられない、家にWi-Fi環境がなくオンライン授業が受けられないといった声も聞こえてきました」。休校中だからこそ見えてきた子どもたちの姿があったと宮坂さんは話します。一方で、学習教室への定着率が高まり、学習に向かう姿勢が前向きになるなどの変化もあったといいます。

 「教室を再開すると全員が戻ってきてくれました。一斉休校で授業がなく、経済的な事情で一般の塾には通えないこともわかっているため、『プラットで頑張るしかない』という気持ちがあったのだと思います。一生懸命に質問したり、受験に向けて面接対策を頑張ったりする姿が、今年はとくに印象的でした。それから、終わりの時間になっても周りと話していて、なかなか家に帰りたがらない姿も見られました」(宮坂さん)

「おむすびプロジェクト」の始動

2020年度は定時制高校生の生徒たちとの出会いもありました。松戸市にある子ども食堂のスタッフから「生徒たちの様子を心配している定時制高校の先生がいるが、うちでは継続的な支援が難しい」という相談を受けて、11月から始まったのが「おむすびプロジェクト」です。

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先生によれば定時制高校には給食がなく、困窮世帯の子どもも多いため、空腹の状態で授業を受けている生徒がいるということでした。そこでプラットでは、授業前に食事ができるように、毎月第1・3金曜日に、コンビニの駐車場を借りて食材配布を開始。大学生インターンやボランティアがつくったおにぎりのほか、レトルト食品なども渡しています。このプロジェクトを始めてから、次第に生徒さんの表情も変わり、先生との関係性もよくなっていったそうです。こうした食の支援も、今後プラットで力をいれていきたい活動のひとつです。

また、コミュニティカフェの活動については、スタッフの長谷川綾子さんから報告がありました。プラットでは、地域の方々がボランティアでオーナーとなり、「産前産後ママのためのカフェ」や「介護家族のためのミニ相談会」など、さまざまな企画のカフェが運営されています。緊急事態宣言中は、カフェを一時中止にせざるを得ませんでしたが、代わりにオンラインサロンを計14回開催しました。

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6月~12月には、感染予防のため午前と午後に分け、各回3組限定と規模を縮小しながらカフェを再開。育児不安や人間関係で悩んでいるお母さんたちの姿も見られたと言います。深刻なケースに対しては、外部の相談支援機関につないだこともありました。

 「オンラインサロンを開催したときに、『家族以外の人と2週間ぶりにしゃべったよ』というお母さんがいて、すごくショックでした。家にこもらなければいけない状況ですが、家族としか話せない状況が続くとストレスがたまるのではないでしょうか」と長谷川さん。リアルで会うことが難しいなか、孤立しがちなお母さんたちの様子は気がかりです。

コロナの影響を大きく受けた2020年度でしたが、プラットカフェの開催は計58回(うちオンラインサロン14回)、オンラインを含めて計297名が参加しました。

>>イベントレポートは後編に続きます

(令和2年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業)
【編集・ライティング:中村未絵】

◆本イベントで報告されている内容をまとめた「地域の学び舎プラット活動報告集2020」をお読みいただけます◆

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プラット活動報告集表紙


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