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10_堕_地

「あはは。今生はふたりもオトしちゃった」「くそ、しくじった」

静寂。支えてくれる手を失った揺り籠、我々が(というよりは紺色ひとりによって)陥落させた彼らの巣、の残党を一人残らず抹消し(これも紺色が)、国王の居たはずの玉座を、僕と、彼女と、だけが二人占めしている。

・・・彼女は六肢満足、僕は不満足な状態で。今までのお預けを清算するが如く、まあその、ええと、熱烈な愛を注がれている。

「最近は負け

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02_Ally_of_Fragmented_Wings

タイトル:継翅連合/Ally_of_Fragmented_Wings
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キャプション
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継翅連合とは;
飛ぶことのできる者たちのうち_
何らかの身体的・精神的欠陥を_
人災・天災その他により被った_
あるいは生れ以て体得した_
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羽翅
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のことを指す/連帯意識は;程々_
互いに近すぎず_遠すぎず_緩慢_
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目的は、憎悪対象への相互支援。
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主たる題目として、
人類文明の繁栄支援とそ

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05_Secret_Collapse

「君」の目覚め すぐに気が付く自分

君さえいなければ、どれだけ空虚な生を繰り返していたことだろう?

きっと誰も求めず、誰からも好かれようなどと考えはせず、

薄暗い、窓のない小さな部屋で永遠と過ごしていたいと思っただろう。

ここは彼女の構築したセキュリティ・エリア
時おり外敵は発生するが、それでも居心地は悪くない

ここは彼女の構築したセキュリティ・エリア
時おり外敵は発生するが、それでも居

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01_Fly_Out_Lost_Prototype

熱病の夜、がらんどうの嵐を一直線に駆け抜ける。
今夜は荒れると噂する風たちはいうが、幸運なことに雨はまだ見えない。残り少ない熱を惜しまず吹かす・・・早く安全圏へ逃げ込まなきゃ。

日が落ちた後もなお湿度は高く、天が蓋をして地上を密室にしたかの様。そのドームを熱風が掛け、逃げる僕の背を追い越して彼方へと向かってゆく。
空しい僕らにとり、歓迎すべき熱ではない。今のひと吹きで道端を横たわる同胞が一体、躰

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09_天繭崩落

「ねえ」ざあざあ。打ち付ける黒い雨の中、私達の視線の先から滝として流れ落ち、ある軍団は我々に突撃を試み、ある群れは悪意の音波を浴びせながら、その実生命の危機に怯えて僕の横を通り過ぎ、あるグループは失意に満ちて墜落してゆき、また、その中に留まることを決めた者たちも...少なからず。「こんなことして、良かったのかしら」「...」

ばり、ばり、高度数千を滞空している僕ら、その頭上にまだ伸びる、三里ほど

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07_暴風、錯乱の雨

何が起こっているのか、そのアクシデントの主体であり張本人であり加害者である僕にも、そしてそれが何故起こったかについても、わからない。目の前に確かにある光景、僕によって四肢を剥奪され、翅を散らされ、荒れ狂う僕と真反対、静かに霧雨を流す紺色。

どうして僕はこんなにも怒っているのだろう?どうして僕は彼女に怒っているのだろう?どうして僕は、真っ当に怒りを晴らさず、対象を歪めてしまっているのだろう?…

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04_落涙

思えばこのときは僕が静で、隣にいたキミが動であった、ひとの真似ごとをして下界に降り、公然猥褻を避けるため、わざわざ銀座の店を襲ってファーコートを用意してやったのに「ケモノ臭いのはイヤ!」火口に放り投げる妹、アレこの時代の貨幣換算だと幾らになるのだろう、兎角来世を覚悟の首都占領は空振に終り、南米とASEAN海域から植物だけをかき集めて苦節48時間費やした緑のドレス、ウキウキで飛び立つ〇〇、俗世幾万ド

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