04_落涙

思えばこのときは僕が静で、隣にいたキミが動であった、ひとの真似ごとをして下界に降り、公然猥褻を避けるため、わざわざ銀座の店を襲ってファーコートを用意してやったのに「ケモノ臭いのはイヤ!」火口に放り投げる妹、アレこの時代の貨幣換算だと幾らになるのだろう、兎角来世を覚悟の首都占領は空振に終り、南米とASEAN海域から植物だけをかき集めて苦節48時間費やした緑のドレス、ウキウキで飛び立つ〇〇、俗世幾万ドルの夜景を求めて、追従する三千の群勢、放っておく僕、今はマルクスの『自省録』が気になっている、20時間ほどして救難信号、百五十のボロボロの使者、矢鱈動物性の体液が付着している、胸騒ぎの僕、手勢を連れて迎えにゆく、僕の跡を雷鳴がトレースする、土砂降りの神奈川県、散発する停電、今はそれどころではない、出発地から20分程を要して降り立った歌舞伎町、捜索に邪魔な生命、露払いが街を火の海にする、間に合わない消火隊、23区は翌朝までには灰になる、どこだ、探せ、近づく鼓動、いた、このマルホールの下だ、開けろ、但し慎重に、工作隊が仕事をする、この間も小さき仲間たちは側溝を伝い中へ、下へ、開いた丸、降り立つ僕、そこに〇〇はいた、まだ生きてはいた、但しーーー

「…ねえ。にんげんってさ」全天が星で満ちる、拠点に戻った僕、は隣の〇〇を手当しながら、様々話に相槌を打っていた、その中、「もっと、すてきで。わくわくさせてくれるものだと思ったんだよ。でも…」静かな鼓動、間もなく彼女は落ちる、しかし、その中に潜む炎に僕が気付かない訳はなく、「いろんな、ひとがいるんだ。べつにいい。やさしい人はいるかもしれない、けど、きょうはそうではなかった。キミはどうしたい。」「アタシはーーー」点火。翌朝キミの姿は亡く、活動を始めた黒と赤の口からきこえる、もう間もなくこの星は灰で覆われ、しばらく太陽を見なくなることだろう。こんかいの僕の生も残り少ないなか、彼女に見つからないよう隠しておいた…オキニのジャックダニエルを煽り、この世界の終焉をひとり見届けるのだった(了

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