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親がする「最初の大きな仕事」とは? キャリア40年のカウンセラーが厳選「教育に関するアドラーの言葉7つ」

フロイト、ユングと並ぶ心理学三大巨頭の一人である心理学者・精神科医のアルフレッド・アドラーは、「教育」に力を注いだことでも有名です。
100年ほど前に世界で初めて児童相談所を作り、子どもの教育はもちろん、親や教師に対して講演やカウンセリングを行っていたといいます。
そんなアドラーによる教育に関する言葉を、『超訳 アドラーの言葉』の編訳者であり、ご自身の子育てにもアドラー心理学を生かしてきた岩井俊憲氏がご紹介します。
(※以下の7つの言葉は、『超訳 アドラーの言葉』より抜粋したものです。)

子どもに「対等な人間」として接する

子どもに対して、上から目線でものを言っていませんか?
子どもは、大人に比べれば未熟な部分が多いかもしれませんが、誰もが未熟さを抱えた者同士、一人の対等な人間として接することが大切です。
100年ほど前に、すでにアドラーは、「親と子どもは対等の関係で」と言っていました。アドラーの視点の新しさに驚きを感じます。
もちろんその教えは、現在のアドラー心理学にもしっかり受け継がれており、親と子であっても、教師と生徒であっても、カウンセラーとクライアントであっても、「同じ対等な人間」「横の立場」でいることが大切だとされています。それが親と子どもの大事な人間関係の土台なのです。

私たちは、自分の子どもに友人として、あるいは対等な人間として接するべきだ。

『超訳 アドラーの言葉』

怒っても問題は解決しない

子育てをしていると、つい「なんでいうこと聞かないの!」「ちゃんと勉強しなさい」などと怒ってしまったり、「何度も同じことを言わせないで。だいたいあなたは……」などとお説教を始めてしまったりする人もいることでしょう。
私自身の子育てをした経験からも、また、多くの悩んでいらっしゃる親御さんの話をうかがってきた経験からも、理解できます。
そんなときにお伝えしたいアドラーの言葉が、こちらです。
親にとっては耳の痛い言葉ですが、噛み締めておきたい言葉です。

子どものライフスタイル(※日本語ではしばしば「性格」と訳されることもあるが、アドラーはライフスタイルと表現した)形成を考えたときに、重要なことを指摘しておきたい。 「罰を与える」「叱る」「説教する」という方法は、子どもにとっていい影響はないということだ。
「どこを変える必要があるのか」という点を、子どもはもちろん大人もわかっていないなら、いくら叱っても何も成果はない。
「なぜ叱られたのか」「どこを変えるべきか」などを理解できない子どもは、ずる賢くなり、 臆病になるだけだ。
その子のライフスタイルの原型は、罰や叱ることでは変えられない。 その子の中では、すでに、「ものごとの意味づけ」「どのように受け取るか」といった認識のクセ・方法ができ上がっていて、そのクセ・方法を通して、「罰を受けた」「叱られた」という経験を受け止めるからだ。
まずは、原型、根底にあるライフスタイルを理解しないと、何も変えることはできない。

『超訳 アドラーの言葉』

「社会の一員」であるよう育てる

勉強も大事ですが、アドラーは「社会の一員である」ことを最も大切にしています。 社会の一員として働き、人類の一人として貢献できるような人間になることを教育の基本においています。 そのことが実感できる言葉を2つご紹介します。

家庭や学校の役割は、子どもたちが、社会の一員として働くことのできる人間であるよう、人類の一人として貢献できるような人間であるよう教育することである。
こうした家庭や学校で育ったとき、子どもは勇気をもち続けることができ、人生の課題がふりかかってきたとしても安心感をもって、他者にもメリットがあるような建設的な解決策を見出すことができる人間になるのである。

甘やかされた子どもたちも、憎まれたタイプの子どもたちも、みんな共同体感覚をもっていない。他の人に関心をもっていないのだ。
甘やかされて育つと、「自分の幸せ」にしか関心をもてなくなる。
憎まれて育つと、「仲間がいる」ことを知らない。「仲間の存在」を経験したことがないからだ。 その結果、自己中心的な関心だけが育っていく。
だが、これらの傾向は、けっして生まれつきのものではない。生まれてから数年の経験から学んだことなのだ。
これらの問題の根底にあるのは、子どもたちが「共同体(社会や家庭)」に属しておらず、受け入れられてないと感じてしまうことから起こりえる。
「社会の一員である」という意識も、このような状態では子どもの中に育たない。

『超訳 アドラーの言葉』

親がする「最初の大きな仕事」とは?

親は子どもに対して何ができるのだろうか。
ふと、そんなことを考えてしまう親御さんもいるでしょう。
アドラーは、「親の一番初めにする大きな仕事」として、この言葉を残しています。
簡単ではありませんが、とても大切なことです。

親の一番初めにする大きな仕事は、自分の子どもに「信頼できる他者がいる」という経験を与えることだ。
のちに親はこの信頼感を、家族、友人、学校、地域社会、人間社会というように、子どもがいる社会のすべてを包み込むまでに大きく広げていかなければならない。
もし、親がこの最初の大仕事に失敗してしまったら─ すなわち、子どもの関心や愛情、協力を得ることに失敗したなら─ その子どもは共同体感覚や仲間とつながっている気持ちをもつことが難しくなるだろう。
どんな子どもであっても、本来、「他者に関心をもつ能力」はもっている。
けれども、 この能力は、育てて鍛えていかなければいけない能力だ。それができないと、子どもの成長に大きな弊害が出るだろう。

『超訳 アドラーの言葉』

「教育困難な子ども」の特徴とは?

社会に出て、活躍できる人、幸せになる人はどんな人だろう。
アドラー心理学では、すべての問題は「人間関係」からきているとしています。そして人間関係がうまくいくためには、「他人の幸せに関心がもてるかどうか」が重要です。

「どうすれば、自分は社会にとって有意義で建設的な存在となりえるのか」の問いに対す る答えはシンプルだ。
他者を思いやること。他者に関心をもつことである。
友情、人間への関心、宗教や政治、結婚、愛......これらはすべて対人関係の課題である。
これらの分野で、他者の幸せに関心がもてるかどうかが大切だ。
私たちが教育困難だと感じる子どもたちは、他者の幸せに関心がもてない。こうした子どもたちは、共同体感覚、楽観主義、勇気を欠いている

『超訳 アドラーの言葉』

もって生まれたものをどう生かすか

私が、アドラーの言葉の中でとびきり好きな言葉のうちの一つです。
体質や性格、才能など、一人ひとりが生まれつき与えられたものは異なります。けれども、その違いを嘆くのではなく、もって生まれたものを「どう生かすか」の視点がとても重要なのだと思います。
ライアントであっても、「同じ対等な人間」「横の立場」でいることが大切だとされています。
それが親と子どもの大事な人間関係の土台なのです。

アドラー心理学の観点からすると、「もって生まれたもの」に、そんなに大きな意味は ない。むしろ重要なのは、子ども時代にもって生まれたものを「どのように生かすか」ということのほうだ。

『超訳 アドラーの言葉』

超訳 アドラーの言葉 エッセンシャル版
フロイト・ユングと並ぶ「心理学三大巨頭」の一人であり、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーが提唱したアドラー心理学。
アドラーは、古くから欧米での人気は高く、『人を動かす』のカーネギーや『7つの習慣』のコヴィーらに影響を与え、「自己啓発の祖」とも言われる。2010年代に日本においても人気が高まり、関連本が数多く出版される。
「相手の感情や行動にふりまわされなくなった!」「自分の考え方が少し変わってラクになった…」など人間関係の悩みにきくとともに、ビジネスや教育、医療の分野で幅広く役立つ。
本書は、そのアドラーの言葉から168の言葉に厳選し、コンパクトにまとめた1冊。名言集だから、読みやすい。アドラー心理学の入門書にも最適!

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