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「男は日常が好き 女は記念日が好き」なんて時代遅れ?ベストセラー著者が読み解く❝令和のバレンタイン❞

ベストセラー『察しない男 説明しない女』の著者・五百田達成氏が、記念日に関する男女の考え方の違い、そして時代とともに変わりつつある記念日のとらえ方について考察します。

チョコレートのコミケ?

2月14日はバレンタインデー。 

ネット上では「チョコレート好きのコミケと化した」などとも言われていますが、本来(?)は「年に一度、女性から男性に告白する」という極めて恋愛っぽい(そしてだいぶ前時代的な)イベントです。

「恋人たちの記念日」としては、クリスマスよりよほど歴史が古く、1950年代に製菓会社主導でスタートしたと言われています。

さて「恋人たちの記念日」と聞くと、いつも思い出す光景がひとつ、私にはあります。

 

未来記念日

あれは20年ほど前のこと。季節は冬だったと記憶しています。

電車で隣に座った大学生女子が、それはもう熱心に、ケータイを見つめて指を動かしています。

 見るともなしに目をやると、どうやら、カレンダーに予定を打ち込んでいる様子。

「つきあって1週間記念日」

……。 

「つきあって2週間記念日」

……。

「つきあって3週間記念日」

 

そうやって彼女は次々と、未来のカレンダーに「恋人との記念日予定」を打ち込んでいきます。

 

「つきあって1ヶ月記念日」

「つきあって2ヶ月記念日」

「つきあって3ヶ月記念日」

……。

 

おそらくは、最近めでたくおつきあいが始まったのでしょう。その彼との交際記念日を、その予定を、黙々と登録し続ける。画面を切り替えては打ち込み、また切り替えては打ち込む作業は、いつ果てるともなく続きました。

その気迫におののいた私が、反射的に彼女の顔をうかがうと、そこにはまったくの無表情がありました。

デート帰りとおぼしき可憐な服装(当時流行していた白いコートを羽織っていたように思います)と、工場で単調なライン作業をこなしているような眼とのギャップが、私の心に深く刻まれました。

あれから20年。彼女はいまどんなオトナになっているでしょう?

登録されたおびただしい数の記念日は、無事、その日を迎えられたでしょうか?

 

男性は記念日を大切にしない?

一般に「女性は記念日やイベントを大切にする、男性は大切にしない」と言われがちです。

「彼氏が彼女の誕生日を忘れてて大変な目に遭った」

「夫が結婚記念日を忘れないように毎年googleカレンダーにリマインドしてもらっている」

そういった笑い話は枚挙に暇がないわけですが、そもそもそれって本当でしょうか? 「男性は記念日を大切にしない」というのは、今でも通用するお話なのでしょうか?

 

彼女を喜ばせたい大学生男子

昨年の12月、クリスマスシーズンまっただ中のこと。

知り合いの雑貨店主から聞いた話です。

いつもは女性客ばかりのそのお店に、ある日、ふたりの大学生男子が現れました。曰く「彼女へのクリスマスプレゼントを選びに来た」とのこと。もう一人は、その付き添いです。

「うーん、こっちかな?」

「いやいや、こっちじゃない?」

「はー、ドキドキしてきた。喜んでくれるかな?」

「だいじょうぶだよ、彼女、こういうテイスト好きそうじゃん」

「だよな、だよな、うん、これにする」

「いいと思うよ♪」

 

それはもう、ウキウキとキャピキャピと、プレゼントを選ぶふたり。

そこには「男のくせに」という「屈託」や、「はしゃいじゃって恥ずかしい」という「照れ」は、一切ありません。

ただただ純粋に彼女を喜ばせたい気持ち、クリスマスという恋のイベントを楽しみたいエネルギーに満ちあふれていました。

その光景を目の当たりにした店主は、「いまの男の子ってすごい……」と言葉を失ってしまったそうです。

 

「男と女」は変わりつつある 

20年前、恋の記念日に取り憑かれていた女子大学生。

現在、恋の記念日を楽しんでいる男子大学生。

同年代ながらも20年の時を経て、それぞれの目に映る恋愛模様はずいぶん違いそうです(あるいは同じと言うべきか)。

男性と女性を取り巻く空気は、とくにこの10年、大きく変わりました。

「男らしさ」「女らしさ」を強要するような風潮はずいぶんと薄まりました。

「女子力」だの「男を上げる」だのといった言葉たちも、次々と死語になりつつあります。

 

「男女あるある」の功罪

私が『察しない男 説明しない女』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を発表したのは、実に7年半前のことです。おかげさまでベストセラーとなり、ちょっとした流行語にもなりました。

古今東西のエンタメ作品で、あるいは巷の世間話で、言われ続けてきたさまざまな「男女あるある」を、主にコミュニケーションの観点からまとめて総ざらい。

さらには表面的な「男と女」にとどまらず、「コミュニケーションとして2パターンあるとしたら、あなたはどっち?」「もし自分と真逆の人を目の前にしたら、どう接するべき?」まで踏み込んで考えた書籍、それが『察しない男 説明しない女』です。

そういう意味では、2022年の現在から見ると「いつまで『男はこう、女はこう』とか言ってるの? 時代遅れも甚だしい!」というそしりを免れない気もします。

 

いっぽうで、「当時からすでに表面的な男女の違いではなく、コミュニケーションに着目していたのは先進的だぞ」とお褒めをいただける気もします。

少なくとも「男と女、つまり、『自分とは違う相手』と通じ合うためには?」を考える入門書としては、それなりの価値があったのではと自負しています。

 

日本のジェンダーギャップ

繰り返しになりますが、日本の「男と女」をめぐる状況は、急速に変化しつつあります。

「男性と女性はイコールな関係になりつつあり、性特有の特徴なんてものはない。いちいち言い立てるのはハラスメントだ」という声もあるでしょう。

いっぽうで、「いやいや、そんなものは一部の先進的な都市部だけの話であって、土台はなにも変わっちゃいない。日本のいたるところに、旧来的な日本の男女観・決めつけは色濃く残っている」という指摘も根強くあります。

事実、日本のジェンダーギャップ指数(男女格差を数値化したもの)は2006年の発表以来、低値安定を続け、2021年は156か国中120位(前回は153か国中121位)という惨状を呈しています。

と、そういう大きな話は一旦置いておいたとしても。

 

『察しない男 説明しない女』で示したような「男はこう、女はこう」というフレーズの数々は、現代のリアルな肌感覚としてもちゃんと「あるある」なのか、それともすっかり「時代遅れ」なのか。

著者としては、純粋に気になります。

 

こんな人に読んでほしい 

さて、バレンタインデーから恋人達の記念日、「男女あるある」の真偽、日本のジェンダーギャップへと、話はあれこれ散らかりました。

もしあなたがいま、パートナーや身近な異性、あるいは性別に関わらず「合わない」と感じる相手(職場の同僚や友人)との関係に悩んでいるなら、『察しない男 説明しない女』は間違いなく役に立てると思います。

事実、発売から7年半たった今でも、SNS上では毎日のように「自分と違う性の理解が深まった」「パートナーとの関係がよくなった」という感想をいただいています。ありがたいことです。

20年前に偶然隣り合わせた例の女子大学生(いまはオトナになっている)が、この本を読んだら。

昨年雑貨店を訪れた例の男子大学生が、この本を読んだら。

いったいどんな感想を持つでしょう? 気になってしかたがありません。

あなたの感想もぜひ聞かせてください!

著者プロフィール

五百田 達成(いおた たつなり)
作家・心理カウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店・博報堂・博報堂生活総合研究所を経て独立。
サラリーマンとしての実体験と豊富なカウンセリング実績を活かした、人づき合いやコミュニケーションに関する実践的アドバイスが好評を得ている。執筆や講演の主なテーマは、「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」など。「スッキリ!!」(日本テレビ)、「この差って何ですか?」他、テレビ・雑誌など、メディア出演多数。
『察しない男 説明しない女』『不機嫌な妻 無関心な夫』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』シリーズは80万部を超えている(以上、ディスカヴァー)。
米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。
[公式サイト] http://www.iotatatsunari.com/


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