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【いい夫婦の日】コミュニケーション研究家が答える『不機嫌な妻 無関心な夫』Q&A

はじめに

11月22日は「いい夫婦の日」です。

ちょうど昨年の今ごろ、「いい夫婦の日」に合わせるように『不機嫌な妻 無関心な夫 うまくいっている夫婦の話し方』を上梓しました。

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これはタイトルこそ少々おっかないですが、コミュニケーションの専門家として巷のたくさんの夫婦にインタビューを重ね、どうすれば夫婦は仲良くいられるのか、どうすれば会話を絶やさずに意思疎通をし合えるかについて書いた本です。

発売から1年、さまざまなメディアから取材を受け、また、多くの読者の方からご質問をいただきました。そこで今回は発売1周年ということで、この本に寄せられた質問・疑問に、一気にまとめてお答えしようと思います。

不機嫌な妻 無関心な夫 Q&A

質問「パートナーが読んでくれない」
回答「I話法で勧めてください」

この本は自分で言うのも何ですが大変好評で、

「夫婦で一緒に読みました」
「これはできてる、これはできてない、と楽しくチェックしました」

という、うれしい感想をたくさんいただきました。

「そんな理想的で素敵なご夫婦に、私から言えることはありません! なんだかすみません!」と恐縮してしまうほどでした。

いっぽうで「私は読んでも、相手が読んでくれないんじゃ意味なくないですか?」「さりげなく相手にも勧めたいのですが……」という声もたくさんいただきました。

この本には、「夫婦はいついかなるときも話し合うべきで、そのためにはこうしたらいい」ということが書いてあります。確かに夫婦のいっぽうだけが「話そう」と思っても、相手にその気がなかったら会話は生まれません。その意味では、少々相手に勧めにくい過激なタイトルだったかな、と反省しています(笑)。

とはいえ、もちろん、解決策はあります!
ポイントは本の中でもたびたび紹介した「I話法」です。

さりげなく相手の視野に入るように本を置いておく、というようなゼクシィ的「匂わせ」手法は、まだるっこしいだけでなく、うまくいかなかったときにストレスが溜まります。またそもそも、「夫婦は真正面から話し合いましょう」というこの本の趣旨に合っていません。

かといっていきなり、「ねえ、この本ぐらい読んでよ!」とグリグリと押しつけるのもいまいち。

そこで、「I話法」の登場です。

あくまで「私は~~だ」という「I話法」にのっとって、

「私はこの本を読んだら、すごく面白かった」
「僕はこの本を読んで会話の大切さに気づいた」

などと伝えましょう。

それで相手が「へー」と興味を示して読んでくれたらラッキーですが、そうじゃなくてもノープロブレム。あくまで、この本をきっかけに会話を始めることこそが大切なのです。

反応を示してくれなかったら、「私は面白かった」「僕はためになった」と、しつこく繰り返しましょう(笑)。

もちろん、「私はあなたにも読んでほしい」という直球もオススメです。


質問「話し合いがうまくいかない」
回答「We話法が万能です」

この本は、夫婦の本ではありますがコミュニケーションの本でもあります。

立場と意見が違う他人同士は、どのように意見を交わし合うべきか、その方法について書いたもの。「話し合いの基本」がテーマなので、夫婦以外の関係にも応用できます。

で、それはさておき、この本の通りに冷静にじっくりと話し合って、お互いが納得するゴールに到達するということは、夫婦の現実としては確かにないかもしれません。

そんな時には、これまた本の中で繰り返し紹介している「We話法」を意識してみてください。

「私はAだ」
「私はBだ」

という「I話法」は、それはそれでOK。それこそがスタート地点です。
で、次に進むべきステージこそが「We話法」。

家の問題、子どもの問題、親の介護の問題。
晩ご飯の献立、休日の過ごし方、ドライブの道選び。

何を話すときにも、常に主語を「We」で語るように気をつけましょう。

「夫婦としてどうしようか」
「俺たちの今後は」
「私たちの教育方針は」
「我々はどうしよう」

と、「対等なパートナーとして一緒に問題解決に当たる。押しつけもしないし、他人事にもしない」という姿勢を崩しさえしなければ、お互いが納得する結論にはならなくても、最悪の結果にはなりません。

夫婦とは「なんでも共有できている一心同体の家族」ではなく、最終的には「まったく違う価値観を持った他人同士」なのですから、ゆっくりじっくりと、すりあわせていくしかないのです。

焦りは禁物です。


質問「生理的にイヤなことでも話さなくちゃだめですか?」
回答「理屈”風”で構わないので、とにかく話してください」

私には、仕事柄か性格上か、コミュニケーション原理主義者の一面があります(笑)。

人と人は話し合うべきだ。
話さないと分からない。だから、話すのは正義。
話さないで察してもらおうとするのはよくないことだ。
大切な人ならなおさら。

と、うざいぐらいにそういうことを常日頃唱えているわけですが、当然「そんなもん、いちいち話してられるかいっ!」という声も、しばしばいただきます。

「理屈じゃなく、イヤなものはイヤ」
「話したくない、口も聞きたくない、ほっておいてほしい」

そう感じてしまい、話す気力も起きない、ということもあるでしょう。
わかります。いや、ほんとにわかりますって(笑)。

でもなあ。。。
そうですねえ。。。
うーん、ここだけは、私の最後の砦というか、譲れないポイントです。

話してください。
うまく言う必要はないので、とにかく言ってほしいです。

理屈じゃなく、イヤなものはイヤ、と思ったら、そっくりそのまま言葉にしてほしい、です。
話したくない、口も聞きたくない、ほっておいてほしい、と思ったら、そっくりそのまま言葉にしてほしい、です。

思っているだけでは通じない。
言わないとわかってもらえない。

それが、人と人が一緒になにかをする(生きる、行動する、決定する)ときの鉄則です。

ですから、うーん、ここだけは強情でわからず屋のようですが、「話してください」とお答えするしかありません笑

ちなみに、話すこと、中でも、「~~だから~~だ」と、理屈っぽく話すことには意味があります。

理屈じゃなくていいんです。理屈っぽく、でいいんです。
雰囲気でかまいません。ノリでかまいません。

それでも、話さなくてムッと押し黙っているよりもよほどマシなのです。

ここで、ひとつ小話を。

ハーバード大学が行った有名な実験があります。

今まさにコピー機を使おうとしている人に対して、列の後ろから、「ごめん、先に使わせて!」と頼む際、

1 「とにかく使わせて」という要求だけを言う
2 ウソでもいいので、何かしら理由をこじつけて言う
3 「急いでいるから」と、本当の理由を言う

という3つの場合、それぞれが受け入れてもらえる割合は

1 60%
2 93%
3 94%

でした。

つまり、何かを頼むときには、理由をつけたほうが相手は納得しやすいというわけ。

しかもこの実験の面白いところは、2と3の結果があまり変わらないところにあります。

本当の理由でも、こじつけの理由でも、結果はあまり変わらない。
理由なんて「何かしら」でいいのです。理由っぽければいいのです。
理路整然風でいい。説得風でいい。それだけで、相手は気持ちがいいし、納得しやすいというわけ。

私は以前、妻から「上手く言えないんだけど、なんかイヤだから、やめて」と言われたことがあります。

何についてだったかなあ、食器の洗い方か、布巾の干し方か。とにかく、妻から「そのやり方はNOだ」と言われたわけです。当然、「え?」「まじで?」「は?」と、身構えますよね。そこで言われたのが、「なんかイヤだから、やめて」でした。

「なんかイヤだから」、これって、あんまり理由になってないですよね?

それでも不思議と「なるほどね。なんかイヤなのか。それならしかたないね」と、受け入れたことをいまでもよく覚えています。

これも、「~~だから~~してほしい」という、理屈風、理路整然風の言い方になっていたから、私も納得できたのです。

困ったら、理屈”風”。
ぜひ、使ってみてください!


質問「顔を見るのもイヤなんです」
回答「専門の機関に相談してください。でもその前に……」

この本は、夫婦の会話について書いた一冊です。
会話だけでなく、一緒に行う判断やつい言ってしまう口ぐせ、スキンシップやセックスレスなど、あらゆるコミュニケーションに言及しました。

幅広い読者のみなさんに役立てていただけると自信を持っています。

が、それでもなお。

本当に顔も見たくないし、声も聞きたくない。
すでに関係として終わってるのだ。
そもそも、私たちの結婚生活は、コミュニケーション以前の問題なのだ。

そういう方もいるでしょう。
ということであれば、すみません。
正直、この本がお役に立てる点はなさそうです。

専門の夫婦カウンセリングサービスに相談するか(実際にそれで関係が改善した夫婦を何組も知っています)、離婚という選択肢を考慮に入れるか。

ですが、まさにそうなる寸前、ぎりセーフ、というか、ぎりアウトかも、そのすれすれですー、という夫婦には、まだギリギリ、この本がお手伝いできる点があると信じています。

仲良しの夫婦がもっと仲良くなるために読まれることは、この本にとってうれしいことではあります。

でも同様に、危うくなり始めた、関係がぎくしゃくし始めた夫婦にも届けばいいな、この本が助けになればいいなと、心から願っています。


おわりに

夫婦生活は、長いです。
人生120年時代などと言われる中、子どもが独立していき夫婦だけで過ごす時間も長くなるいっぽうです。

20年後、30年後に、いい感じの夫婦になっているためにも、手遅れになる前にぜひ手にとっていただければ、と思います。

さて、最後に、昨年の刊行時に友人夫婦からもらったうれしい感想を掲載しておきます。これは、涙が出るほどうれしかった。

「今までのいおたさんの本の中で、いちばんよかったです。
一回読むだけでなく、これから毎年この時期に読み返して夫婦の関係を振り返っていきたいと思います。ありがとうございました」

どうです? 泣けませんか?

いい夫婦の日は、一年に一度の「夫婦」の記念日です。

互いの「誕生日」でもなく、「結婚」記念日でもなく、まさに「夫婦関係」について考える日、感度を高める日。

ぜひそのお供に、『不機嫌な妻 無関心な夫 うまくいっている夫婦の話し方』をお役立てください!

2021年 11月22日
五百田 達成

\一部を無料で読めます/

書籍紹介

『不機嫌な妻 無関心な夫 うまくいっている夫婦の話し方』
1540円 (税込)  
ページ数:240ページ
発売日:2020/11/20
ISBN:978-4-7993-2679-4

著者紹介

五百田 達成(いおた・たつなり)
作家・心理カウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店・博報堂・博報堂生活総合研究所を経て独立。
サラリーマンとしての実体験と豊富なカウンセリング実績を活かした、人づき合いやコミュニケーションに関する実践的アドバイスが好評を得ている。執筆や講演の主なテーマは、「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」など。「スッキリ!!」(日本テレビ)、「この差って何ですか?」他、テレビ・雑誌など、メディア出演多数。
『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』シリーズは50万部を超えている(以上、ディスカヴァー)。その他の著書に15万部突破の『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』(新潮文庫)などがある。
米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。
[公式サイト] http://www.iotatatsunari.com/

【ベストセラーの制作舞台裏】編集者インタビュー


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