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【「はじめに」公開】FRIDAY FORWARD フライデー・フォワード あなたの可能性を引き出す52のヒント

 本書は、「人生が変わる」と話題の世界60カ国20万人が心待ちにする金曜配信のニュースレターを書籍化したもの。
 目標達成、時間術、やり抜く力、伝え方…読めば今日から始めたくなる ひらめきと気づきに満ちた新習慣を紹介しています。

 ダニエル・ピンク(『モチベーション3.0』著者)や、アダム・グラント(『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』著者)が絶賛の本書。
このnoteでは、冒頭部分「はじめに」を公開します!

読む人に「成長のきっかけ」を与えるメッセージ

 私が毎週金曜日に「フライデー・フォワード」というニュースレターを始めたのは、私自身が、毎日の生活にささやかな変革を起こしたいと思ったことがきっかけでした。それは、「朝の過ごし方の改善」です。これからは、1日の始まりを、早起きして静かに考えごとをしたり、書きものをしたり、前向きな気持ちになる本を読んだりして過ごそうと決めていました。

 けれども今日の世の中は、そんな簡単なことも思うように実行しにくいのです。私たちは朝の時間を、受け身でネガティブな気持ちでスタートしがちです。ニュースを見れば危機感をあおるような報道ばかり。ソーシャルメディアのアプリは新着メッセージでいっぱいです。ひと晩のうちに発生した問題を知らせる大量のメールも届いています。そんな朝は、まだ1日が始まらないのに、もう時間がなくなってしまったような気がするのではないでしょうか。

 ところが、毎朝ひらめきをくれるものを読もうと決めたのはいいのですが、心から共感して元気が湧いてくる読み物に、まだ出会ったことがありませんでした。格言集や、人にすすめられた本の多くは、どうも現実離れしているように思えたのです。
 でも、少し違った角度から気づきを得たエピソードや名言を、メールフォルダにためておいたものがありました。

 そこで試しに、私の会社、アクセラレーション・パートナーズの社員およそ40人に、毎週メールでメッセージを送ってみることにしました。あったらいいなと思うものが見つからなければ自分で始めればいいという、起業家なら誰もが知っている教訓を、私も学んでいましたから。そして、毎週のメールを「フライデー・インスピレーション」と名づけ、読む人が元気になるだけでなく、一歩突っ込んで考えさせられるエピソードを選ぶように心がけました。

 取り上げたエピソードは、会社の事業とはまったく無関係の内容です。それより、私自身が読みたくなるような、そして社員が仕事だけでなくプライベートの時間も含め、すべての面で向上するのに役立つものを書く、というのが、私の目標でした。金曜日の朝にメッセージを送ることで、週末の過ごし方が良い方向に変わればいいな、と考えたのです。

 そして、3週間ほどたった頃、社員からの返信が舞い込むようになったのです。メールを楽しみにしている、友人や家族にも転送した、などのコメントを数人がくれました。中には、何かに挑戦する足がかりになった、と言ってくれる人もいました。それはマラソン大会に参加することだったり、目標を定めて努力することだったり、仕事の効率を上げることだったりしました。それを知って初めて、私のメールは会社の枠を超えてほかの人たちの役にも立つのではないかと思ったのです。

 そのすぐあと、起業家の集まりで、それぞれの会社で取り入れた良い慣習を紹介し合う機会がありました。
 私は「フライデー・インスピレーション」を始めた経緯や、これが社員の好評を得ていることを話し、同席のビジネスリーダーたちにもぜひ同じようなメールを始めてはどうか、とすすめました。

 こうして何人かが「フライデー・インスピレーション」をそれぞれの社内で回覧したところ、何週間もたたないうちに、彼らの社員からも、私の社員と同じようなポジティブな感想が寄せられたそうなのです。これをきっかけに毎週のメッセージを独自に始めたCEOもいます。

 私は、「フライデー・インスピレーション」を役立ててもらえる場がほかにもあるのでは、と思い、登録すれば購読できるようにして、名称も「フライデー・フォワード」に変えました(しょっちゅう転送(フォワード)されていたからです)。そして300人ほどの知人に送信してみました。

 内心、「なんですか、これ」とか「送信リストから外してください」といった反応を覚悟していましたが、そんな返信は1つもなく、むしろ、社内のときと同じようにポジティブなフィードバックばかりでした。さらに、数カ月後、『Inc.』誌(北米で発行されている、中小企業経営者向けの月刊誌)に、「私が唯一読むニュースレター」という見出しの投稿記事が掲載されたのを機に、わずか1週間のうちに何千人もの人が購読登録をしてくれたのです。

 今では、毎週、60カ国以上の国で合計20万人を超える人が、「フライデー・フォワード」を読んでくれています。

 広い読者に届くようになるにつれ、「フライデー・フォワード」は私にとっても大きな存在になっていきました。毎週メッセージを書くことが、私の「要となる習慣(キ ーストーン・ハビット)」(訳注1)になったのです。ひらめきや気づきを与えてくれるエピソードを発掘し、それについて思索することで、前向きな気持ちで1日を始められるようになり、同時に、まわりの人たちの向上をサポートする責任感も湧いてきました。

 私が毎週選ぶトピックは、私自身が習得したい、上達したい、と思っていることに関係しています。ですから、おのずと一つひとつのメッセージに熱が入ります。私は「フライデー・フォワード」の記事を、自分自身の体験や時事問題に関連づけるようにしています。トピックは、読者のバックグランドに関わりなく、どこに住んでいる人でも理解できるものであるよう注意を払います。そして、それぞれの読者が自身に照らして考える機会を持てるように、内容に関する問いかけで記事を結んでいます。

 「フライデー・フォワード」が好評を得た理由は、おそらく、メッセージの内容が成長の足がかりになること、ふだんの生活に応用できることだと思います。現実離れしたトピックは選びません。自分のコンフォート・ゾーン(居心地の良い範囲)を押し破り、自分の限界を問い直すことを促すエピソードばかりです。成長は努力なしにはあり得ません。良い変化は、挑戦を促すはたらきかけがあってこそ起こるのだと、私は固く信じています。

 それは、現在、特に必要とされるものだと言えるでしょう。人が成長するのは、苦しい状況に追い込まれ、自分の可能性を狭める思い込みを克服したときであるのは明らかです。

 ところが、現代社会は、成長につながる努力を阻む構造をどんどん作っています。困ったことに、多くの子どもたちが「雪かき式子育て(スノープロウ・ペアレンティング)」をする親たちに育てられているのです。わが子の行く手にある障害物をどけたり、ならしたりするのが親の役目だと思っている親たちです。

 この子たちが受ける学校教育は、順応する生徒や物分かりのいい生徒をほめ、創造性をないがしろにしています。学校を卒業した子どもたちを待っているのは、同じ関心や意見を持つ者同士がソーシャルメディア上で作り上げる世界です。ソーシャルメディアは、アルゴリズム機能により、ユーザーの好みに合わせた情報を提示します。そして、誰もが、自身の体験から選りすぐったベストのものを、さらに美化修正して投稿するのです。そんな毎日に空しさを覚え、疲れ果ててしまう人も少なくないでしょう。

 この悪循環を断たなければいけません。建設的な意見をぶつけ合って互いを奮い立たせ、相手を励まし、同時に、相手がベストを尽くせるように背中を押してやらなければいけません。「フライデー・フォワード」に込めたメッセージは、ほんの小さな、しかし大事な第一歩です。

 ほとんどの人が、能力を100パーセント発揮せずに毎日を過ごしていると思います。でも、私たちには、自分が望む人生を実現する能力がもっともっとあるはずです。それを実現していくことで、まわりの人が同じような成果をあげられるようにサポートすることもできるのです。

4 つの力の引き出し方

「フライデー・フォワード」は、最初から、読む人に成長のきっかけを提供することを目指していました。しかしメッセージを書き続けて3年ほどたち、前著『ELEVATE 自分を高める4つの力の磨き方』の構想を練り始めたときに、骨子となるテーマがはっきりと浮かび上がったのです。メッセージの趣旨を一つひとつ突き詰めてみたところ、大きく分けて4つある「キャパシティ・ビルディング」の要素のいずれかに当てはまることに気がつきました。

「キャパシティ・ビルディング」とは、より高いレベルの結果を出すため、そして自分の資質を引き出すために必要なスキルを、探求し、習得し、磨く方法です。キャパシティ・ビルディングは、精神、知性、身体、感情の4つの部分に分けて考えると理解しやすくなります。
 精神のキャパシティを広げるためには、自分自身を掘り下げ、自分が人生に何をいちばん求めているのかを見極め、毎日の生活を自分の信条に沿うものにしなければなりません。そのプロセスは、まず、自分の中核となる信念や価値観をはっきりさせることから始まります。この最初のステップを難しく感じる人も多いでしょう。自分を見つめ直し、長所や短所を見定めることになるからです。

 充実した人生を送るには、精神のキャパシティの成長が必須です。自分の人生の目的地がわかっていないと、多くの時間とエネルギーを、脈絡のない、見当違いの方向にムダに費やしてしまう恐れがあります。まずは自分が最も望むものを見極め、毎日の生活をその探求に則したものにするといいでしょう。

 私たちが自分の思考力、学習能力、計画能力をどう伸ばすか、自制心を持って遂行するかどうかは、知性のキャパシティ次第です。知性のキャパシティを広げるには、ゴールの設定とその達成、良い習慣の確立、学び続ける姿勢が求められます。つまり、あなたのオペレーションシステムをアップグレードすることだと理解してください。
 知性のキャパシティが大きくなるほど、同じエネルギーでより多くの成果を上げられるようになります。

心と身体の健康や運動能力を高めるのが、身体のキャパシティです。私たちの脳が人生の水先案内をしてくれるとすれば、日々の力仕事を任されるのが身体です。ですから、心と身体の健康を保ち、ストレスをコントロールし、睡眠をじゅうぶんにとることはとても重要なのです。身体が消耗して緩慢になったり、脳が疲労したりすると、何をするのも困難になってしまいます。
 身体のキャパシティを広げるプロセスは、単にダイエットや運動に取り組むことではありません。ストレスの対処法や、壁にぶつかったときの乗り越え方を身につけることでもあるのです。

 感情のキャパシティは、困難な状況や難しい人間関係にどう対応するか、意義ある人間関係を保てているか、ということと関わっています。たいていの人にとって、感情のキャパシティを広げるのは簡単なことではありません。感情をコントロールしたり、自分の長所短所を見極めたり、周囲の状況や人々が自分の期待や予測と違う現実を、ある程度は受け入れたりしなければならないからです。
 感情のキャパシティが大きな人は、困難にぶつかったときに比較的早く立ち直ることができます。この人たちは、元気のもとになるような良好な人間関係を保ち、逆に、エネルギーを消耗する付き合いは避けているのです。

 前著『ELEVATE』では、キャパシティ・ビルディングとはどういうことか、また、そのプロセスを自分の人生に取り込むにはどこから始めればいいか、ということをお話ししました。本書では、皆さんが人生にポジティブな変革を起こしたくなるような、現実に即した、とっておきのストーリーの数々を紹介します。

本書の活用のしかた

まずおすすめしたいのは、朝の時間を、目的意識を持って、ポジティブな心構えで過ごすために本書を利用すること。どのメッセージにも、その根底には、気づきや学びを与える主題があります。それを朝の思索やジャーナリング(書く瞑想)に生かしてみてください。
 次に、本書をヒントに、まわりの人にもそうした気づきや学びの機会を与える立場になってほしいのです。その人たちとは、友人、家族、同僚や部下、あるいは学校の教室の生徒たちかもしれません。私にとって今までで最大の学びは、そのような関係で与えるインスピレーションには、思いがけず大きな効果をもたらす可能性があると知ったことです。あなた自身の経験談やあなたが得た教訓が、まわりの人の力になるのです。そうしたエピソードを人に伝えたり、あるいはもう一歩進めてディスカッションを始めたりすることで、自分が向上するのと同時に、まわりの人の向上をサポートできます。

 ひょっとしてあなたは、「自分の人生でさえやっとの状態で、とても人の役になんて立てない」と思いましたか。自分を過小評価してはいけません。誰もが、少なくとも毎日1人の相手にひらめきを与える力があるのです。今日、何か1つ小さなことを実行してみてください。あなたが感動したエピソードや言葉を、誰かに伝えてください。私の経験では、ほんの小さな気遣いが、大きな結果につながることがあります。あなたの言葉を誰かがちょうど必要としていたなら、なおさらです。

 誰もが、心の奥底では、気づきや学びの機会を求めているものです。あなたが本気でその人の成長を支えようとしているのがわかると、相手は意外なほどすんなりと、意欲的に応じてくれるはずです。互いにけなし合うことは今すぐやめて、互いを高める方法を探しましょう。人は、おとしめ合っているうちに、良心が失われていきます。逆に、共に向上していけば心も磨かれていきます。

 気後れすることはありません。簡単に揺るがない大きな変化を生むには、むしろ小さなことから始めるのがいいのです。それがキャパシティ・ビルディングの基礎になります。小さな、しかし目的のある変革を積み重ねていくのです。

さあ、今日から始めましょう。

(訳注1)チャールズ・デュヒッグが『習慣の力』(渡会圭子訳、早川書房、2019年)で提唱した概念。生活は習慣の集積であり、その核となっている1つの習慣を変えると生活全般が好転するということを多数の事例を挙げて解説している。原書はDuhigg,Charles. The Power of Habit: Why We Do What We Do in Life and Business. Random House, 2014.

目次

第1章 精神のキャパシティを広げる
――人生の目的地を思い描こう
人生に何をいちばん求めているか

01道徳観を育てよう――良いほめ方・悪いほめ方
02霧が晴れる瞬間――自分の本音に耳を澄ます
03ビューティフル・デイ――後に続く人の心に何を刻むか
04幸せになってほしい――相手の幸せを無条件に願う
05ワークライフバランスの迷信――達成度は「質」で測る ほか

第2章 知性のキャパシティを広げる
――しなやかな心構えで、積極的に学ぼう
長期的なゴールと、短期的なゴールを設定する

14一夜で成功は収められない――自分に言い訳をしない
15過干渉をやめる――そばで見守り、励まそう
16緊急と重要のマトリクス――優先順位を見直そう
17早起きは得する――自分に合った朝の習慣を作る
18運がいいということ――チャンスに備える
19ワールドクラスの努力――小さなことにこそベストを尽くす ほか

第3章 身体のキャパシティを広げる
――心と身体の健康に気を使おう
睡眠やストレスに目を向けよう

27「土壇場に強い」の理由――本番に向けた準備が大切
28人生、山あり谷あり――困難を乗り越え希望につなげる
29汗水流して――ゴールまでの道のりは4つに区切る
30壁を越える――あきらめない強さ
31人格コーチング――結果や成績ではなく人格を見る
32ペロトンの原則――チームを引っ張るとき、陰で支えるとき ほか

第4章 感情のキャパシティを広げる
――自分を狭める思い込みを克服しよう
自分の感情を理解しよう

40エナジーバンパイア――消耗する人間関係から離れる
41感謝の心を行動に表す――喜びの連鎖を始めよう
42言葉の持つ力――効果的な伝え方を考える
43愛と憎しみ――考えの違う他者に心を開く
44バラの花とトゲとつぼみ――的を射た質問をする
45疑問を持つ――オープンに話し合い、共に考える ほか

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