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【編集者エッセイ】しんどさは、比べるもんじゃないし、比べられるもんじゃない。

5月26日に精神科医・藤野智哉先生の著書『「誰かのため」に生きすぎない』が発売になりました。
発売1か月で3刷りとなり、テレビでも注目の本として紹介されるなど、ご好評をいただいています。
このnoteでは、好評を記念して、担当編集者が「印象に残っていておすすめの3本は?」と考えた時に思い浮かぶお話を書籍の中から抜粋して紹介します。今回は第3回です(全3回)。

3回目は、先生のTwitterのフォロワーでもあった私が読んでホロリとさせられた言葉です。
先生の原稿が届く少し前に、介護していた母を亡くしました。しかし70代半ばでガン。年相応といえば年相応の死です。若くして母を亡くしたり、配偶者を亡くしたり、ましてや子どもを亡くしたわけではないので、あまり哀しみすぎるのも大人気ないのかなぁと思っていたのです。
でも、先生のこの言葉・お話を読んで、「比べるものではないなぁ。悲しいのは悲しい。しんどいのはしんどい、でいいのよね」と素直に思えました。
藤野先生の切れ味するどいけど、優しい言葉に慰めてもらったお話です。

大田原恵美(担当編集)

しんどさは、比べるもんじゃないし、
比べられるもんじゃない。


「会社ですごい嫌な人がいて。もう本当にしんどい」
「この間、大切なペットの猫が死んじゃって......つらい」
「子ども産んだら、仕事も家庭もやることいっぱいでめちゃくちゃ大変」
このように、自分のつらさやしんどさ、悩みを話したとします。

しかし、世の中にはこんなふうに返してくる人がいます。

「その程度の人はまだましよ。もっと嫌なやついっぱいいるよ。うちの会社の上司のほうがもっと大変なんだから」
「悲しいのはわかるけど、ペットくらいでつらいなんて言っちゃダメよ。親や子どもが死んだわけじゃあるまいし」
「子ども1人なんだから、まだまだ余裕よ。2人目産んだらもっと大変よ。私の姉なんて3人いるから、すっごくハードみたい」

言っている本人には悪気はないのかもしれません。
でもね、他人のつらさを勝手に推し量り、「つらさマウント」とるのは禁止です。

つらさやしんどさは比べるものではないし、比べられるものでもありません。
あなたにはあなたのつらさがあっていいのです。

あなたのそのつらさや、しんどさを、誰かと比べて我慢する必要はないのです。

もちろん、当たり前ですが、世の中には、もっとひどい状態の人や厳しい環境があるのは事実です。

でもだからといって、「あなたのつらさ」を比べて「まだましだから、つらいなんて言っちゃダメ」というのは違います。

あと、よく名言として紹介される言葉に、
「あなたがムダに過ごした今日は、誰かが死ぬほど生きたかった明日」
というものがあります。

「今日を一生懸命生きよう」という意味なのはわかりますが、でも「私がムダにした一日」と「誰かが強く望んだ一日」を比べなくてもいいのにな、とも思います。

あなたがムダに過ごした今日は、誰かが死ぬほど生きたかった明日ではありません。
あなた自身が生き延びた今日を、誰かに恥じる必要はないのです。

あなたの気持ちは、他人と比べる必要はなく、あなただけのものです。
つらい気持ちも、しんどい気持ちも、悲しい気持ちも、誰かと比べて我慢したり、「こんなことくらいで」と耐えなくてもいいんですよ 。

続きが気になる方に

ついがんばりすぎてしまう人たちへ
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著者について

藤野智哉(ふじの・ともや)
1991年生まれ。精神科医。産業医。公認心理師。
秋田大学医学部卒業。幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。
学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医者の道を志す。
精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。 障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見を発信しており、メディアへの出演も多数。
著書に『「自分に生まれてよかった」と思えるようになる本』(幻冬舎)『自分を幸せにする「いい加減」の処方せん』(ワニブックス)、『精神科医が教える 生きるのがラクになる脱力レッスン』(三笠書房)などがある。

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