おせち、食べてますか?〜現代におけるおせち料理の在り方を柳原先生と考える〜
みなさんは毎年どんなおせちを囲んでお正月を迎えていますか?
石井食品ではお正月が近くになるとSNSでおせちについてアンケートをしてみることがあるのですが、最近は作る派よりも、「買う派」「一部だけ買う派」の方が多くなっています。
(2024年10月7日実施 石井食品公式X調べ)
しかし、これは食への関心が高い石井食品のフォロワーさんだからこその結果!
あるインターネット調査* によると、そもそも過半数の人がおせちを食べないというのです!これは寂しいですね。
今回は、当社代表の石井智康と、今年のおせちを監修いただいた近茶流宗家 柳原尚之先生との対談を通し、現代におけるおせちの在り方について考えてみたいと思います。
みなさまが食文化に興味をお持ちいただくきっかけになれば嬉しいです。
お話ししてくれたのは
東京農業大学大学院修了。博士(醸造学)。
小豆島の醤油会社の研究員やオランダ帆船でのキッチンクルーの経験を経て、現在は、東京・赤坂にある料理教室で、日本料理、茶懐石研究指導にあたる。NHKきょうの料理などの料理番組出演の他、NHK大河ドラマなどの料理監修、時代考証も数々手がける。国内外で和食・日本文化普及活動を行う。2015年文化庁文化交流使、2018年農水省日本食普及の親善大使に任命。
1981年生まれ。2006年6 月にアクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ(現アクセンチュア) に入社。ソフトウエアエンジニアとして、大企業の基幹システムの構築やデジタルマーケティング支援に従事。14年よりフリーランスとして、アジャイル型受託開発を実践し、ベンチャー企業を中心に新規事業のソフトウエア開発およびチームづくりを行う。17年、祖父の創業した石井食品に入社。18年6月、代表取締役社長執行役員に就任。地域と旬をテーマに農家と連携した食品作りを進めている。
年始の食卓にある”おせち”はどう変わってきた?
— 今回、柳原先生に石井食品のおせちを監修いただくことになったきっかけを教えてください。
(石井) 石井食品が長年懇意にしている水産会社の社長様からのご紹介です。実は私のいとこの同級生である柳原先生には、幼少期に一度お会いしているようなのです。不思議なご縁ですね。
(柳原) 私の親友のいとこにあたります(笑)もちろん、幼少期の私のお弁当にも「イシイのミートボール」が入っていた記憶があります。
いつもであれば、監修のご依頼をいただいても自身が製造に関わらない場合はお受けしないのですが、自社の製造過程においては食品添加物を使用せず、さらにアレルギー対応おせちや食塩不使用おせちなど、多くの方においしいおせちを楽しんでいただきたいという本気の取り組みを伺い、お受けすることにしました。
— 運命的なご縁ですね!今回おせちでタッグを組んだ我々ですが、お二人のご家庭の食卓には、どのようなおせちが並びますか?
(柳原) お正月にはおせちやお雑煮がないと始まらないですよね。私の料理教室では、12月はもちろんおせち料理の作り方も教えています。今はおせちを買って食べることが増えています。ただ、家庭の中にも伝統的に残っている味も伝承していきたいですよね。
おせち料理の中で「お雑煮」は歴史的には、お重に詰めるおせち料理よりも古くからお正月に食べられています。これまで全国のお雑煮を研究してきましたが、我が家は江戸雑煮です。毎年うちの子どもたちに鰹節を削ってもらうのが恒例行事になっています。その鰹節でお出汁をつくってお雑煮にしています。
いつも我が家は「四段重」に30品くらいを詰めていますが、全てのご家庭が多く作る必要はありませんので、少しでも召し上がってもらえたらいいと思います。
(石井) 昔は、父方・母方の両家で新年会があり、お正月といえば忙しい記憶でした。12月30日頃から、大人たちはずっとおせちの準備をしていた気がします。そしてお正月の家族団らんの真ん中にはおせち料理がありました。
今は大人数で集まることも少なくなりました。最近は娘のためにも石井食品の「イシイのキッズおせち」を用意していますよ。昔のように豪華なご馳走を用意することも少なくなり、過ごし方も大きく変わってきていますね。
昔は大人がつくる、大人のための味付けのおせちだったと思います。人が集まらなくなったので、子どもたちもお正月遊びのようなお正月らしさを味わえるものがなくなった分、子ども向けのおせち料理が発達したのもよくわかります。
おせちとは何か?そして、なぜ「今」おせちを作り、伝承し続けるのか
— 改めておせちとは何なのか、そして何のためにあるのかを柳原先生に教えていただきたいです。
(柳原) そもそも「食べる」ことは「生きる」ことです。近年は食べることに困らない時代になってきたので、「生きる」ことよりも食べる「楽しさ」が重視されるようになってきました。
「節供」という言葉がありますが、元々は「節会供御」が略されたもので、この言葉にはお祭事の時に食べる「おそなえもの・たべるもの」という意味があります。五節供など古くはいろいろな節供があり、その時々の料理がありましたが、現代では、お正月の料理を指すようになりました。そのような大切な儀式の時に、食べ物に願いを込めていただく文化は日本の文化の一つです。
特に大事な料理は三ツ肴(みつざかな)です。
数の子(子孫繁栄)
黒豆(健康)
田作り(豊作)
この3つを願いを込めて食べることで自分の力にし、一家の幸せを祈ったのです。
そもそも、おせち料理が「豪華な料理」とされるようになったのは、戦後の話です。昔のように大人数で囲んで囲んで食べることが少なくなり、たくさん作ることはなくなりました。しかし、お正月は豪華でなくとも、初詣にいくのと同様に、一年の幸せを祈っておせちをぜひ食べていただきたいですね。
(石井) 私は幼い頃から家業もあったので「おせちはおいしいもの」として育ってきましたが、最近では「おせちはおいしくない」と思っている方も増え、食べないご家庭も増えているようです。是非、柳原先生のおっしゃるような「伝統」を知っていただき、ほんとうにおいしいものを願いを込めて召し上がり、心を鎮めてお正月を迎えてほしいですね。
今の時代に合わせて楽しんでいただけるよう、石井食品の活動が日本文化を残す一助になればと思います。
(柳原) 今回協力させていただく中で驚いたのは、石井食品のおせちは発送直前に調理し、おいしい状態でみなさまのもとにお届けしていることです。大量生産だからといって、妥協せずにおいしさにこだわっているのがわかりました。
(石井) それが石井食品の創業から79年間続く「ほんとうの(真の)おいしさ」へのこだわりです。
これからのおせちの在り方とは?
— お二人はこれからのおせちはどのように在るべきだとお考えでしょうか?
(石井) 家族や近しい人とのコミュニケーションツールとして”食”があると考えています。おせちもお正月の節目の時を楽しい思い出にするために、石井食品としても今の時代にあった形を提案していきたいですね。家族団欒の場で、食育やおせち料理のいわれの発信をお子さんと学び、伝えながら楽しんでほしいと思います。
(柳原) 昔はお正月にお店が開いていなかったので、お正月を乗り切るだけの長期保存できるものを大量に作る必要がありましたが、今はそうではありません。今日食べるものをちょっとだけ作る、で良いのです。お重を用意する必要もなく、お皿で十分楽しめます。
おせちのスタイルは時代の変化とともにあるものです。形が変わってもよいので、伝統が凝縮しているおせちを大切にし、それぞれの思いを込めて召し上がってほしいです。そんな食卓でおせちについて子どもに話すことを、大人になった時いつか思い出してくれるかもしれませんよ。私も子どもたちにはそんな話をしています。
私たちも伝統を守るだけではなく、新しい形を提案していきたいですね。
— お二人ともありがとうございました。
一人前も、食物アレルギー配慮も。みんなにおイシイおせち
石井食品のおせちは三段お重から一人用、食物アレルギー配慮、減塩など、だれもが楽しんでいただけるおせちを用意しています。
*出典:2023年10月5日, Pontaリサーチ調べ, 男女1,000人に聞いた2024年おせちに関する調査