【おすすめ本】タフな15歳にはなれなくても(村上春樹/海辺のカフカ)
今週もこんにちは。ウガンダに来ました。雨季と乾季の境です。雨が朝夕に降るけれど、昼間は乾いた風が吹いています。
今週の一冊は村上春樹「海辺のカフカ」。noteの読書記録を読んでいてもやっぱり村上春樹は数が多く、その注目度を再認識させられます。
本作は15歳の少年が家出し、四国の図書館で暮らしながら、自分にかけられたある種の呪いを解くために戦う物語です。B面として、不思議な力を持つ老人ナカタさんの冒険が描かれ、二人の運命は数奇に絡み合っていきます。
▼▼今回の本▼▼
前置き。僕個人は村上さんが好かれるのと同じくらい批判される理由もよく分かります。しばしば批判されるのは女性の描き方が性差別的だという点ですが、僕はむしろ何気ない言い回しの雑さが気になることが多いです。
文中の「相手」はクレーマーの中年女性ですが、眉ひとつ動かさないことで「健全な女性ではない」ことが示唆されています。でも、誰に頬を赤くしようがしまいが女性としての健全さ(そんなものがあるとして)とは全然関係がないですよね。
さておき、僕は「カフカ」が好きです。主人公が15歳なのがすごくいい。年齢相応の不完全でいびつなパワフルさが作品に漲っています。中でも序盤、少年が家出をするバスの車内の描写などが印象的でした。
こんなふうに夜の闇を眺めたことが自分にもあったな、と思うのです。愛や強さが何かなんて今も分かっちゃいないけど、少なくともそれが何だろうかと今よりずっと必死で悩んでいた時期があったな、と。
あとは、ナカタさんと佐伯さん(図書館長)が話をするシーン。心に欠損を抱える二人が、初対面にもかかわらず深く理解し合う様子が胸に迫ります。
僕はカフカをたしか大学生の頃にはじめて読みました。タフな15歳にはなれなくても、人生というものが形を現し始めたあやふやな時期のことを、本作を読んでいると思い出します。
(おわり)
▼▼前回の本▼▼
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