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クイア・アイが刺さる理由は、誰もが抱える人生の絶望=疲れをどう乗り越えるのかを描くコンテンツだからじゃないかと思う話

昔から好きだったんだけど、最近ネトフリで観れるようになったからめっちゃハマって見てて。昔より全然面白さというか深度が違うんだよ。おばちゃんが年取ったからなんだけど!

要はファブ5(ファビュラス5の略)という、IKKOさんが5人いて、一般人を美容・食事・リフォーム・カウンセリングを通じ大変身させ、人生も変える、というバラエティ・ドキュメンタリー番組なんですけど。

おばちゃんすぐ感情失禁するんで、もう見てる間ほぼ泣きっぱなし。「見たら元気が出る」ってのはほんとその通りで、むちゃくちゃ完成されたコンテンツなんだけど、それがなぜなのかを考えてみたよ。

まず、変身させる一般人は必ずしも表立ってすっげえ大きな問題を抱えているとかすっげえ変わりたいと思ってるとかいう必要はなく、そもそも他者推薦で、なんかいい思いをしてほしいなという人徳があることが実は最低要件になってるところがでかい。

若い人だと変わりたいって人が多いんだけど、中高年もいっぱい出てきて、そういう人はだいたい仕事一直線だとか、他人のために滅私奉公してるだとかで自分をケアしていないよって人が多い。

で、それが刺さるんだな。

出てくるのは普通の人間で、掘ってみれば過去の辛いことだとか抱えている何かだとかがボロボロ出てくるんだけど、そう、普通の人間だれしもそんなのボロボロ抱えてるんですよ。

やらなきゃという思い込みや求められる役割、キャラクターで自分をがんじがらめにして、身動きが取れなくなって、実はもう溺れかけなんだけど、それに気づかないふりをして生きてることに気づいちゃう。

人生に絶望してもおかしくないぎりぎりのラインでなぜかヘラヘラ笑っているのは、そうすることで自分をなんとか生かしているからなんだって痛切に伝わってくる。

凡人なので。というかたとえ何をしてても派手に生きてても、人間は苦しみや悲しみをどんどん抱え込んでいくんだなというのを改めて。前にこんな記事を書いたんだけど、

同じように、肉体的にも精神的にも年を経れば経るほど、人間の中には悲しみや苦しみが溜まっていかざるを得ないと思うんよね。もちろん楽しみや幸せもあるんだけども。それはたぶん、人生を歩んでいくうえでの「疲れ」に近い。長い人生、行けば行くほど疲れるんだよ、当たり前だけど。しかもゴールに待ってるのは死。それを解放や赦しとみる人もいるけど。

そういう意味でも、当番組の「見たら元気になる」という宣伝文句は強い。実にそれ、それなんだ求められてるのは。

中高年のそういった地味な、しかし確実に誰にも起こりうる「疲れ」を、どのように処していくのかというのは現代に枯渇しているテーマだったりする。核家族化もあるけど、社会や人類の在り方が変化しすぎててモデルケースがそもそも見つからないとかある。

ドラマや映画、小説などの娯楽に人間が没頭する理由の一つは、先人や他人の知啓にあずかりたいからだと思うんだけど、まー特によく見られているテレビドラマなんかにも漫画なんかにもこのモデルケースが見つからないので中高年クライシスとか言われて久しいわけですよね。キムタクが同世代のロールモデルになってないとか。大泉洋に抜かれたとか。わかる気はする。

社会に出てるし働いてるし家庭も持ってるけど、すべてのバランスをうまくとってうまくやれてる人間なんてそうそういない。だから余計疲れるよね。鬱になったりケガしたり動かなくなったり失敗したり、仕事で成功してても家庭がおろそかだったり。どうしたらいいんだよっていう。

壊れている、足りていない、満ちていない、苦しい、きつい、疲れた…そんな何かを抱えながら人間はどうにか今日も生きている。

そこにファブ5がやってくるんですよ。IKKOさんが5人くんの(爆笑)

いやもちろんファブ5もたくさん抱えてんのよ。だからすぐ泣くの、おばちゃんと一緒(笑)。改造したクライアントのその後を見ながらすぐ泣く。一番喜んでたりする。ていうかファブ5はゲイだったりなんたりで人よりおそらく抱えてるものが多くて、でもだからこそできることがあり感銘を与えることができるんだな。ここで勝ち組が来たところで「自己責任でしょ」とかで終わるもんな。始まらん。笑

で、ファブ5は何をするかっていうと、つまるところ「不要不急の文化的豊かさを怒涛の如くぶち込む」のです。コロナで自粛してる場合じゃねえぞ!笑

ゆっくり時間をとって買い物をして手作りの料理をする。本国アメリカ版、アスパラガス初めて食べる、とか、こんなに美味い料理初めてだよ!とかで泣くほど喜ぶ人が出ます。

最高のサロンでヘアスタイルを変え、ブティックでお洋服を買う。これで外見が変わり、自意識も変わるので、この辺でクライアントの表情や人格が大きく変化しますね。

おうちや職場、お部屋のリフォームが行われる。なにげこれが一番感動する人が多いので、家(自分の巣)はやはり最も大事なポイントなんだな、というのを痛感しますね。

そして、文化担当のカラモさんを中心に、それぞれのアクティビティを通してクライアントをカウンセリング・コーチングしていく。これが本当に上手い!びっくりするぐらいコミュニケーションがうまい。おばちゃんがコミュ障名だけじゃないと思う。対話ってこんなに助けになるのかよ、他人とのコミュニケーションってこんなに豊かで心地よいものなのかよ、と衝撃を受けるレベル。

クライアントは禊をして憑き物を落とし、変化し、豊かさを得るんです。

結局金なんだけどね!!!

いやーもう、手作り料理とかほんとに娯楽の域じゃないですか。おばちゃんちにそんな余裕はねえよまじで。料理好きだけど。

住み心地のよくセンスのいい家があって、着れば気分が上がる服があって、鏡に映る自分が好きになれる髪型があって、ゆったり料理できる余裕があって、それを美味しく食べる時間があって、仕事があって家族がいる。

結局ね、健康で文化的な最低限の生活って結構お高いってことなんだと思います。これが万人に行き届く世界、夢だわ。でも本当にかなわないのかしら。セレブになりたいんじゃない、フツウになりたいんだ、そのフツウがお高いんだ。そうよね、我々の今の暮らし、昔の貴族の暮らしだものね。

少なくとも~2000万くらいの予算と、2週間の休みがあれば、だれでもファブ5と同じことはできる。

やっぱ人間、稼いどくことだな。

でも、金と時間があっても方法がわからなきゃ意味はないし、金と時間があってこの方法を取れば人間の豊かさ、幸せって叶うんだ、というモデルケースを知ることができる、それが何よりのこのコンテンツの強さなんですよね。

あと、そもそもゴールが見えないまま働き続けるのも、無駄な不安を抱いて頑張り続けるのもつらい。これぐらいのお金を稼いで、あとはゆっくり死ねればいいやというめどが立つのもめちゃくちゃ大事なんじゃないかな。

火星でも稼いでも何を買ってもうまくいかない、何を買えばいいのか分からないというのも不幸だし。何が君の幸せ~♪何をして喜ぶ~♪わからないまま終わる~♪そんなのは嫌だ~♪とアンパンマンも歌っておりますが、これ分からないと本当に人生大変だしどうやっても絶望しかないので、少なくともファブ5が提示している「健康で文化的な最低限の生活」は非常に汎的な答えであるし、それが自分に向くか向かないか、ほかの答えを探すべきなのかを判断するためにも見て損はないと思いますで!

おばちゃんはさっさと終の棲家を得て引退したい。小銭ください。

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