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読書案内:マキァヴェッリを読む人のために〜【マキァヴェッリを読む】Part2


マキァヴェッリの著作を自分で読むための予備知識を得るために、いくつかの本を参照しました。
個々の著作に関わるものは、それぞれの読書感想を書き留める時にまた触れることになると思います。
ここでは、マキァヴェッリ全体に関わるもののうち、良い本だなと個人的に思ったものについて、先に紹介しておこうかと思います。
(たぶん後で触れるタイミングが難しいと思うので)

全体に関わる、つまり専門的な細かい話は少なくなる分だけ、マキァヴェッリについてあまり知らない方にも読める入門書が多めとなっています。

マキァヴェッリの生涯を知るために

塩野七生『わが友マキアヴェッリ フィレンツェ存亡』

ルネサンスというと、やはり塩野七生さんの歴史エッセイが最初に思い浮かびます。
ちょうどマキァヴェッリの生涯を扱った作品もあります。
マキァヴェッリへの独特な愛情を感じる文章で、読みやすくて気軽に面白く読めます。

佐々木毅『マキアヴェッリと『君主論』』

文学的な面白さを求めない方や塩野七生さんの文章が合わない方には、佐々木毅『マキアヴェッリと『君主論』』がコンパクトでいいかと思います。
タイトルからはわかりにくいのですが、この本の前半はマキァヴェッリの生涯と彼の祖国フィレンツェの歴史、後半は『君主論』の翻訳になっています。
文庫サイズにしては詳しい伝記が加わったコスパの良い本です。
実は私が最初に購入したマキァヴェッリ関連本だったりします。

セバスティアン・デ・グラツィア『地獄のマキアヴェッリ』

少し本格的なものであれば、『地獄のマキアヴェッリ』が面白かったです。
ピューリツァー賞を受賞したのも伊達ではありません。
ただし、ルネサンスの歴史などについてある程度の予備知識が要求されるのが玉に瑕。
下に挙げたモンタネッリの概説書などを先に読むといいのではないかと思います。

ロベルト・リドルフィ『マキァヴェッリの生涯』

他には、約2万円もしますが、ロベルト・リドルフィ『マキァヴェッリの生涯』もあります。
登場する人物や事件についての説明や注釈が三分の一以上を占めるので、読書というよりは辞書的な使い方になってしまいましたが…
マキァヴェッリの著作に触れる前に読むより、興味を持った方が更に理解するために読む方がいいかと思います(内容的にも価格的にも)

マキァヴェッリが言及する歴史的事件や人物を知るために

マキァヴェッリの著作には、古代ローマやルネサンス期イタリアの人物や事件が数多く登場しています。
マキァヴェッリは自分の主張を固める証拠として、歴史を引き合いに出しているのです。
そのため、これらの歴史についてあらかじめ知っておくと、マキァヴェッリの本が読みやすくなり、彼の主張もわかりやすくなります。

では、古代ローマやルネサンス期イタリアの歴史を手軽に知るためのいい本はないか。
ここでもまた塩野七生さんの著作群が最初に思い浮かびますが、さすがに全部読むのは大変です。

モンタネッリ『ローマの歴史』/『ルネサンスの歴史』

個人的にはモンタネッリを推したいところです。
特に『ルネサンスの歴史』は出色の出来で、ストレスなくサクサクと読み進めることができるうえに、内容もしっかりしています。
ルネサンス期イタリアの歴史の入門書でこれ以上の本はないんじゃないかと個人的には思っています。

マキァヴェッリの政治思想を知るために

鹿子生浩輝『マキァヴェッリ 『君主論』を読む』

マキァヴェッリについて書かれた入門書や小著はいくつかありますが、
鹿子生浩輝『マキァヴェッリ 『君主論』を読む』が1番出来がいいように思いました。

この本では、彼が生きた時代の政治情勢との関係にしぼって、マキァヴェッリの著作を読み解こうとしています。
後世の人々の読み込み、通時的な意義などをできるかぎり削ぎ落とした、ミニマムなマキァヴェッリ像がコンパクトにまとめられています。

フェデリコ・シャボー『ルネサンス・イタリアの〈国家〉・国家観』

●フェデリコ・シャボー『ルネサンス・イタリアの〈国家〉・国家観』無限社(岡崎)ISBN4944058004

こちらは、マキァヴェッリについて書かれた入門書ではなく、ルネサンス期全体に関わる専門書、論文集です。
この本では、国家、祖国、民族と訳されるような国家に関連するいくつかの言葉について、ルネサンス期の人々やマキァヴェッリがどう用いていたか、どう使い分けていたかを探っています。

マキァヴェッリが語った「国家」と近代以降の「国家」は、背景となる社会環境がまったく異なる以上、完全にかけ離れた存在です。
それにもかかわらず、同じ「国家」という言葉を通して、我々はマキァヴェッリの書いたものを読んで理解しようとしています。
同じ言葉を使うことで生じるアナクロニズムを避けるためには、良い本だなと思った論文集です。


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