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【映画感想】 マジの天才のガチでおバカなイタズラ 『ブルース・ブラザース』

映画『ブルース・ブラザース』を見た。80年代の傑作コメディ・ミュージカル映画。今でも熱烈なファンが多い映画だ。

この映画をひと言で表現するなら、「おバカ映画」だろう。「コメディ映画」なんて言い方ですらカッコつけた感じがして似合わない映画。「おバカ」という茶目っ気ある表現がぴったりな気がする。

自分たちが世話になった孤児院を救うために、寄付金集めにバンドを始める主人公の2人。一見するとここからハートフルな物語が展開するかと思う。そんな予想は裏切られ、2人はどんどんと犯罪行為に手を染め、様々な人から恨みを買い、大騒動へと発展していく。

倫理的にも法的にも無茶苦茶をしていく主人公たち。ノッポとおデブのサイテーな2人組に、不思議と反感を覚えることはなく、逆にどんどんと惹かれてしまう。なぜだろうか。


それは、彼らのやっていることが子供のイタズラと同じだからだ。子供がイタズラで、なにか悪さをした時。本気で子供のことを嫌いになる人はいない。怒りながらも、大人たちのその顔には笑顔があるはずだ。

子供たちのイタズラを笑顔で受け入れる大人たちの心情としては、純粋な可愛さへの許容もあるだろう。だが、それと同時に「よくやった!」みたいな嬉しさもあると思っている。

なぜなら、大人たちも昔はみんな子どもだった。イタズラ心を持って、いろんな人に迷惑をかけていた。しかし、大人になるにつれ、そうした行為は社会に受け入れられないと分かり、我慢を覚える。でも、心の奥底ではイタズラをしたいという気持ちが、くすぶっている。人間の本性なんてそんなものではないだろうか。

そんな自分たちの我慢している欲望を、無邪気に発散するその姿に、怪感を覚えてしまう。嫌悪感はない。彼らに悪意はないからだ。彼らは人を困らせるために、犯罪行為をするわけではない。目的を達成するために、手段を選ばず暴れ続けているだけだ。

ふとした瞬間に大人が思うイタズラ心。そんな欲望を代わりにぶちまけ続ける2人の行動に痛快さを覚える。
「ここで謝ったりしないよな…平然と逃げ去るよな…?」そんな視聴者のイタズラ心に応え、2人の兄弟は痛快なイタズラを続けるのだ。


そう、この映画は視聴者を裏切らない。これが、名作として評価され続ける所以だと思う。

この映画に人生訓や、感動の涙を期待する人はいない。ポップコーン片手にガハハと笑うような、そんな低俗さを求めている。だから映画も、視聴者の求めるシーンを提供し続ける。

予算を使いたいだけとしか思えないくらいの大量の車がクラッシュしたり。そんなやりすぎだと思うくらいの過剰演出も、この映画は「そーいう映画だから」というメッセージがしっかりしているから、すんなりと受け入れられる。


音楽はホンモノ

そんなくだらない映画とセットになっているのは、豪華なミュージシャンによる、ホンモノの音楽。詳しいことはWikiを見ていただければと思うが、参加ミュージシャンはレジェンドばかりだ。アレサ・フランクリンをあんな使い方をする映画なんて、他にはないだろう。

ベースがくだらない「イタズラ映画」だからこそ、そこにあるガチの音楽とのギャップが魅力に映る。ただ、バカな人たちがバカをやっているわけでは、渋谷のハロウィン騒ぎと同じだ。

世間に評価されているような、プロの大人たちがイタズラをしていく。そんな映画だから、魅力的なのだと思う。

音楽自体が黒人音楽やスタジオミュージシャンへの熱いリスペクトを感じるような作りになっているのが良い。おバカな映画だけども、決して、音楽とそれを聞きにきた観客をバカにはしていない。


スピルバーグがカメオ出演していたりとか、小ネタ的要素・マニアック受けな要素が散りばめられたこの作品。

でも魅力の本質は、マジの天才音楽家たちがガチでおバカなイタズラをしてどんちゃん騒ぎしていること。その愉快なギャップを楽しむ映画なんだなと思った。



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