その芽吹きは、新たな世界で大樹となるか~「やまぐちデザインシンキングカレッジ」アドバンストプログラム・最終発表会~
こんにちは、デジテック運営事務局のやまたんです。
今年も年の瀬を迎えましたね。1年間、大変お世話になりました。年末年始は読書をするには絶好の時間。忙しくて積読状態だった本たちを、一気読みする方もいらっしゃるのではないでしょうか。やまたんも、その一人です。
年末と聞いてやまたんが連想する本は、東野圭吾さんの「ナミヤ雑貨店の奇跡」。冬の夜を舞台にした、あらゆる悩みの相談に乗ってくれる、不思議な雑貨店の物語です。
白紙の地図には、無限の可能性があることを教えてくれる、新たな年に向けてもお薦めの一冊ですよ!
「アドバンストプログラム最終発表会」開催
12月21日、やまぐちDX推進拠点「Y-BASE」で、アドバンストプログラムの最終発表会が開催されました。
第1期に引き続き、スペシャルゲストとして、村岡知事や慶應SDMの白坂成功委員長、県CIO補佐官の関治之さんに講評者として参加いただきました。ゲストの皆様、ありがとうございました。
この3か月間、民間企業や行政など様々な分野の受講生が5チームに分かれて、4つの地域課題にタックルしてきました。果たしてどんなアイデアが生まれたのか、発表順にご紹介していきます!
デマンド型公民館ショッピングモール「やまぐちの森のみせあそび」
先鋒を担ったのは、チーム「ぶちやっちゃる!」。中山間地域の買い物弱者をゼロにするというテーマに取り組みました。
その解決策アイデアとして発表されたのが、住民から日々の「欲しいもの」の情報を集めて、月1回「欲しい」に応えた店舗たちが公民館に集結することで、馴染みの皆さんとの談笑を楽しみ、その日は買い物を楽しんでもらおうというサービスです。
メンバーは、中山間地域の高齢者の買い物にまつわる3つの困りごとに着目。
1つ目は、「お店に来て欲しい」。近くに店舗がなく、バスも電車もない。歩いて行っても荷物も持てないし、お店が来て欲しいという悩み。
2つ目は、「コレジャナイ、は嫌」。移動販売車が来ても、過疎地では物が売れず、豊富に商品を持って来れないため、欲しいものがない。子ども達が代わりに買ってくれても、本当に欲しいものじゃなかったり。
3つ目、「見て選んで、話したい」。Web通販で買い物しようとしても、高齢者はスマホやパソコンが苦手な方も多い。それに、友達やご近所さんと話しながら買い物がしたい気持ちも。
そんな3つの困りごとを解消するサービスが、月に1回、公民館がショッピングモールに早早変わりするサービス「やまぐち森のみせあそび」。日頃は移動販売車が住民の要望を収集して、リクエストに応える店舗が月に1回、公民館に集結。その日はシャトルバスなどの移動もサポートします。
「コレジャナイ」を解消するため、スマホ等から送られてくるニーズを分析するアプリを開発。デジタルが苦手な高齢者を公民館や農協がサポートすることも想定したアイデアでした。
講評では、ビジネスモデルまで考えているところが良い、住民や店舗をマッチングするプラットフォームとしての可能性、地域コミュニティの活性化も期待できるなどの意見をいただきました。
山口県の魅力をギュッと凝縮!「やまぐちのいいとこつまみぐい」
2番手は、チーム「きらら☆発掘隊」。県外の人が山口きらら博記念公園に行きたくなるようにするためには?というテーマにタックルしました。
まずメンバーが考えたのが、山口県の抱える課題。
県外からの旅行者にとっては、山口県の観光地を全部回ろうとしても、案外離れていて、1日では全部回り切れません。
ビジネスでの出張者は、いつも空港でお土産を買うけど、他のお土産を手軽に買えないかなと思うことも。
山口県民も、県のよいところや、遊んで楽しい場所を、県外の方に伝えることが難しいと感じる時があるのではないでしょうか。
そこで、県央に位置してアクセスも良く、敷地も広い「山口きらら博記念公園」に山口県のいいところを集約して、山口県のグルメや買い物を手軽に楽しめたり、県民も地元の魅力を再発見できる「やまぐちのいいとこつまみぐい」を提案。
公園内に設定された岩国・山口・下関・萩の4つのエリアや、姉妹都市などから人気投票で選定する「エリアX」では、各エリアの魅力を集約した「グルメ」「体験」「学び」をまとめて体験できます。
各エリアでは、萩市見島の大凧「鬼ようず」の凧揚げ体験や、「瓦そば」など各エリアの推し麺販売、踏んで作る「岩国寿司」など、様々な体験を楽しむことができ、SLやまぐち号を連想させるミニSLで各エリアを繋ぎます。
お土産を購入するだけなら、入場しなくても各エリアのお土産を買える手軽さも。
アプリとも連携して、来場者ポイントやイベント情報を提供することで、より多くの方々に山口県を楽しんでもらいたいという仕掛けも考えられた、楽しいアイデアでした。
講評では、提供するコンテンツが非常に重要なポイントとなる、必ず来てもらえるターゲット層の設定が大事、県内の魅力の集約・発信によって県外への訴求力の向上に繋がればなどの意見をいただきました。
空き家活用電飾コンテスト「やまぐちイルミノベーションコンテスト」
3番手は、チーム「おもひでテイクアウト」。空き家を利活用して地域を活性化するためにはというテーマに挑戦しました。
空き家を巡る課題は色々ありますが、メンバーは「所有者が利用方法に困っている空き家」に着目して、こうした空き家を活用して地域を活性化できないかと考えました。
もう一つ着目した点が、「12月、山口市はクリスマス市になる」という点です。
山口市は、室町時代の守護大名の大内氏が、フランシスコ・サビエルのキリスト教布教を受け入れ、日本で初めてクリスマスが祝われた地ということで、市内各地でそれにちなんだ事業が展開されているのです。
そこで、このクリスマス市になっている期間に、市内の空き家や敷地を飾り付けて、県央部のサビエル記念聖堂を中心に空き家電飾コンテストを行い、地域を活性化しようというアイデアです。
また、イベント実行員会は耕作放棄地にもみの木を植林し、もみの木を電飾に利用するとともに、電飾イベントに見合った温室効果ガスの吸収を図り、Jクレジットの売却で事業運営費の一部を賄うという、ユニークな仕掛けも。
さらに、コンテストには「アーティスト部門」を設け、芸術家がコンテストに参加するとともに、作品製作期間やコンテスト期間には地域の小中学生や芸術を学ぶ学生と触れ合う機会を提供。
その他、市内会場をバスで巡り、イルミネーションを見て冷えた体を美味しい料理と温泉で癒す旅館組合とのコラボや、「日本酒を楽しむ」など空き家ごとに個性が楽しめるゲストハウスなど、地域全体に更なる価値が生むコンテストの魅力を熱弁してくれました。
講評では、コンテストをきっかけにリノベーションを通じて居住という家本来の機能を果たせるとより良い、シビックプライドの循環を生み出す可能性、YCAMや姉妹都市との連携も検討できるなどの意見をいただきました。
思い出の詰まった家をメタバースに保存「SSM(Sustainable Save Memories)進む」
4番手のチーム「ユニコーン★アベンジャーズDX」も空き家問題にタックルしましたが、同じテーマでも全く違うアイデアを提案。これがデザイン思考の面白いところです。
メンバーは、「なぜ空き家にしているのか」という原因を、①解体費用がない、②家に思い出がある、の2つと分析。①はどうしようもないので、②の原因で空き家の解体に踏み出せない人々をどうすれば救えるのかを考えました。
さらに、②のターゲットが抱える具体的な問題点を分析し、「昔、自分が住んでいた思い出のある家を壊すことに罪悪感がある」「ずっと所有していたいけど、維持管理が大変」という問題を解消する必要があると結論。
そこで提案されたのが、昔住んでいた家を、思い出とともにメタバースハウスとして保存するソリューション「SSM(Sustainable Save Memories)進む」です。
提供サービスとして、思い出のある家の3Dモデリングや思い出の写真・動画との連携、メタバース上のリアル住所への建築、NFT+ブロックチェーンでのオンリーワン化を提案。
解体資材を利用したミニチュアハウスや卒塔婆、メタバース空間での空き家解体体験イベントなど、ユニークなオプションも準備されていました。
特に面白かったのは、山口県と言えば「餅まき」ということで、「棟上げ」ならぬ「棟下げ」で餅をまく文化の創設。テレビで「餅まきイベント情報」が放送されるという、山口県ならではの着想ではないでしょうか。
SSMにより、「お金さえあれば、住み終わった家は解体するもの」という考え方が広く浸透した世の中をつくっていきたいという思いが伝わる発表でした。
講評では、思い出のデジタル保存が解決策となるのかの簡単なプロトタイプを行うと良い、メタバースハウスの利用シーンの掘り下げ、棟下げをイベント化する着想が面白いなどの意見をいただきました。
ご当地ヒーローが子ども達の郷土愛と環境意識を向上「絶滅危惧種ヒーローズ」
ラストは、チーム「いまからとびきりの話をします」。県立山口きらら博記念公園×子育てでより住みやすい街にするにはというテーマに挑みました。
まずメンバーは、「子育て」と「公園」の両面での困りごとを分析。
「子育て」では、子守りをYouTubeに任せていることの罪悪感や、子どもの元気を発散させる場所を探すのが大変、遊びだけでなく学びに繋がることをさせたいなど、親の立場での様々な思いが。
一方「公園」は、広大な敷地がある一方で回遊性が乏しく、また、自然観察公園をはじめ、保有するポテンシャルを活かし切れていない状況でした。
そこで提案されたのが、公園周辺で確認・保護・飼育される絶滅危惧種をモデルとしたご当地ヒーローが、教育や公園イベントなどとコラボするアイデア「絶滅危惧種ヒーローズ」です。
本編コンテンツでは、絶滅危惧種ヒーローズが子ども隊員をはじめとした環境保全を目指す人々と協力し、環境破壊から生まれた怪人と戦うストーリーを、定期的にYouTubeなどにアップ。
小学校が配布する1人1台端末での視聴も可能として、夕食を作る時間など、子どもの面倒を見れない時に利用できるようにし、ヒーローが宿題を教えたり自然雑学を紹介するなどの教育コンテンツも提供します。
また、リアル体験ともリンクして、公園でのヒーローショーや絶滅危惧種に触れる体験会などを実施し、公園周辺に生息するカブトガニの孵化・飼育体験プランも用意。
親子で同じ「推し」を持つことで生まれる絆を力に変え、自然を自分たちで守ることで、山口県への愛着と誇りを持つことを目指した、独創的なアイデアでした。
講評では、生成AI等を活用したVTuberなどの可能性やライセンスフリーでの広域展開、現状分析に基づくコンテンツの提供の重要性、教育と連携して継続的な成長や学びを提供する点が面白いなどの意見をいただきました。
講評者から受講生へ
最後に、今回講評をしていただいた3名のスペシャルゲストの皆さんに、全体講評をいただきました。
関補佐官
アイデアだけでなく、誰がどうやるかというビジネスモデルまでよく考えられていて、すぐやったら良いなと思うものが沢山ありました。我々Code for Japanは、地域課題を、行政だけでなく市民も一緒になって解決することが大事だと思っています。皆さんの発表も、他人ごとではなく自分ごととして考えられていました。次のステップを、小さくても良いので、チャレンジしてもらえると嬉しく思います。
白坂委員長
お伝えしたいことは3つ。まず、アイデアは社会実装することが大切なので、自分たちのアイデアを次どう進めるかをぜひ考えて欲しいと思います。次に、イノベーティブなもの探しを続けて、アイデアを出す力、価値を見つける力、価値を伝える力を磨き続けていただきたい。最後に、コミュニティの大切さ。今回のメンバーはデザイン思考を実践する際に、叩き台を一緒に作ってくれる仲間にもなります。コミュニティを最大限活用して下さい。
村岡知事
この3か月間、山口県や地域が抱える課題の本質をしっかりと捉え、解決に向けた様々なアイデアを考えてきた皆さんの意欲と能力の高さに、心強さと大きな期待を感じた発表会でした。異なるバックボーンのメンバーで取り組んだチームづくりやデザイン思考を活かして、それぞれの企業や地域などが抱えている課題の解決に取り組み、活躍されることを期待しています。
講評者の皆さんのお言葉どおり、全チームとも素晴らしい発表でした。受講生の皆さん、大変お疲れ様でした。
ここまでお読みいただいた方の中には、最終発表会の模様をもっと詳しく知りたいと思われている方もいるのではないでしょうか?
ご安心ください。今回もアーカイブをご用意しています!2期生の熱いプレゼンを是非ご視聴ください。
アドバンストプログラム第2期も、来年2月の交流会が最後のイベントとなります。もちろん、最後まで余すことなくnoteでお伝えしたいと思います。
それでは、良いお年を!