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挑戦者たちが、デザイン思考で未来を切り拓く!~「やまぐちデザインシンキングカレッジ」アドバンストプログラム・最終発表会(前編)~

こんにちは、デジテック運営事務局のやまたんです。高校や大学の出願倍率が新聞に載りはじめると、いよいよ今年も卒業と旅立ちの季節が近づいてきたんだなと実感します。卒業で私の頭に浮かぶ小説が、佐藤多佳子さんの「一瞬の風になれ」です。

高校陸上部を舞台にした青春小説で、個人競技のイメージが強い陸上をテーマにしながら、リレーチームでの絆や、先輩と後輩との信頼関係、部全体のチームワークなどが、繊細で臨場感豊かに描かれています。

終盤のインターハイのリレーで、メンバーの心が一つとなっていく場面の感動と興奮は、何度読んでも色あせません。新たな世界に一歩を踏み出す勇気を与えてくれる、2007年本屋大賞にも選ばれた、おすすめの一冊です!

ついにこの日が!アドバンストプログラム最終発表会

11月のスタートからはや4か月、2月17日に、アドバンストプログラムの最終発表会が開催されました。

スペシャルゲストとして、村岡知事や慶應SDMの白坂成功教授、県CIO補佐官の関治之さんを講評者としてお招きして、受講生の皆さんにとっての晴れ舞台です!

これまでの間、民間企業や教育機関、自治体などバックボーンの異なる23名の皆さんが4チームに分かれて、脱炭素や教育、子育てなど山口県が抱える課題について、DXを掛け合わせることで解決するアイデアを生み出すために、講義外も含めて熱心なディスカッションを重ねてきました。

そうした皆さんの姿をこれまで間近に見てきたやまたんとしても、今回の発表会は胸アツです!

冒頭には、村岡知事から本カレッジに対する想いや受講生への期待を込めたご挨拶があり、その後、広瀬先生からこれまでのアドバンストプログラムの概要や経過についてご説明がありました。

そしていよいよ、各チームの発表です!

働くパパママを支える子供向け料理体験学習教室「デリシャスタディ」

トップバッターは、チーム「大人の真剣ゼミ」

働くパパママの思いを支えるため、小学校進学に伴い両親の負担が増える「小1の壁」という社会課題や、食育や栄養に不安を抱える悩みにタックルした、小学校低学年向けの料理教室×体験型基礎学習「デリシャスタディ」

「今日はもう一仕事!」としたいんだけど、早く学童保育に迎えに行かないとマズいので、仕方なく仕事を切り上げなきゃ問題や、仕事に疲れて帰ってきたとき、食事の用意ってメチャクチャ大変すぎ問題の解決を目指します。

サービスは、スタッフが学童保育のお子さんをお迎えして教室に向かい、お子さん自らが調理して、バランスの取れた食事を食べながら、20時頃までお預かり。両親がお迎えに来て、帰宅後には、子どもがパパママ分も調理したお土産おかずがあるというものです。

レシピ確認での算数や、調理や食材観察での理科、買い物や配膳などを通じた生活力の定着など、体験型の基礎学習を提供しながら、最終的には料理にとどまらず、家事を家族でシェアするという意識を養うところを目指しているとのこと。

そしてデジタル要素として、包丁の安全支援IoTバンド「ほうちょう先生」を提案。食材画像や包丁の向き、加速度をセンシングして、状況に応じてスピーカーが喋ることで、お子さんの調理時に安全を守るバンドで、素敵なプロトタイプも披露されました。

安全支援IoTバンド「ほうちょう先生」のプロトタイプ

また、運営面では、ボランティアで食育の推進に関わる食生活改善推進員の参加、会場面では、小学校など公共施設の調理室や学校施設などを活用するイメージしているとのこと。

講評では、テーマが素晴らしく、料理という切り口での食のサステナビリティや脱炭素への関心喚起、デジタルでのマッチングを活用した農家や多世代などとの交流促進など、料理を通じた繋がりや広がりも期待できるのではなどの意見をいただきました。

若者で山口県に「楽しいこと」を作ってしまえ!「やまぐち ASOBI PROJECT」

2番手は、チーム「はなっこりー」

「山口県は楽しいところがない」と思っている若者が多いという課題にタックルして、山口県だからできる楽しい遊びを自分達で作り出し、山口県を好きになってもらおうという、本プロジェクト。

ターゲットは小学生~大学生で、まず小学生がやりたい遊びを考え、それを中学生~大学生が、学校の探究授業などで具体化・実現して、徐々に規模を拡大し、最終的には若者の山口県への愛着向上や地域活性化に繋げようというものです。

まず、子ども達は面白いアイデアを思いつくのかとの問いに対し、小学生2人が1時間で56個の遊びのアイデアを考えたというプロトタイピングで証明。

次は、その中から、ペンキで陣取りをする某有名ゲームを現実世界でやってみたい!という遊びの具体化をチームで実践。

「バスや電車でやって観光資源にできるのでは」「観光地でやったら面白い」「デジタルでプロジェクションマッピングもありだよね」など、具体化のアイデアも次々出て、面白い企画だから車を提供してもいいよという協力者も生まれたそうです。

そして考えた遊びが面白いのかを検証するため、中学生達に地元公園での陣取りを紙上で疑似体験してもらったら、口々に「面白い!」と言って、本当にできる日を心待ちにしているとか。

地元公園での疑似陣取り合戦でも、中学生達は熱中!

プロジェクトの具体化に向けては、必要な資金はネーミングライツや体験ブースなどで企業から調達、学校の先生の負担を軽減するため、遊びのコーディネーターを配置、学校や校区の垣根を超えた活動拠点であり、アイデア発表や起業家とのマッチングの場ともなるスタートアップカフェの運営などが提案されました。

講評では、子どものアイデアに驚く声や、専門知識を有するプレイリーダーや既存施設との連携、デジタルとフィジカルが組み合わさることの面白さの追求などについての意見をいただきました。

未利用資源×デジタル×コオロギで脱炭素を実現する「フタツボシ」

3番手は、チーム「シロクマからの感謝状」

世界的な人口増加で脱炭素や食糧難などの深刻さが増す中、環境負荷の低い食材を取り入れて暮らしの中で脱炭素化に貢献できないかという課題にタックルしました。

山口県は、産業・工業プロセス部門におけるCO2排出量の割合が全体の7割と全国平均の約2倍、1人当たりの排出量は約3倍と言われています。

そこでチームでは、山口県のコンビナート群の廃熱と空きスペースを使いながら、ブロックチェーンを組み合わせて、飼育の環境負荷が低いタンパク質としてのコオロギ、そして温室効果ガスの削減による売却益を目指す「フタツボシ」というサービスを提案。

まずコオロギは飼育での温室効果ガス排出量の少なさや、雑食、室内飼育・早期出荷可、味もエビみたいで美味しいという特徴から、未来のタンパク質として注目され、国内でもスタートアップ企業出資などの動きがあります。

チームは、コオロギの最適飼育温度が30度という点に着目し、県内コンビナート群の敷地内で飼育し、高温燃焼の熱源を温度管理に活用することを提案。

また、データをみんなで記録・管理でき、改ざんができないブロックチェーン技術を活用して、コオロギの餌履歴や、排熱利用など環境負荷をかけずに育ったことを記録し、食べるときの抵抗感の緩和や、Jクレジットなどのマーケット参入を可能とするサービス内容を説明。

発展形では、餌によって味が変わるコオロギの特徴を生かして、フグやみかんなど県特産品の廃棄食材を餌にしたブランド化や、見た目の抵抗感を緩和するため、パウダー化によるふりかけ・出汁の素での事業展開などもアイデア披露されました。

発表会場にはコオロギの試食コーナーも!

講評では、脱炭素の巨大市場化が確実視されている中での本サービスの有用性や、餌履歴や飼育環境負荷のブロックチェーン記録による展開の可能性、山口県のコンビナート企業との連携などについて意見をいただきました。

世の中から子どもの孤食をなくしたい「ハイテクノロジ-弁当箱Sara」

ラストは、チーム「コソダテニッキ」

核家族化の進展などによって、全国で20万人以上の小中学生が一人で食事を取る「孤食」をしており、食事時のコミュニケーション不足や子どもが調理を行う場合のリスク、健康状態の把握などの課題が発生していることに着目して、最新のハイテクノロジーがつまった弁当箱「Sara」を提案。

重厚長大型の工場労働が多く、保守的な性的役割分業意識が根強い山口県で、ひとり親家庭や共働き家庭をターゲットとして、Saraによって「温かい」食事とコミュニケーションを提供しようというアイデアです。

Saraにできることは大きく5つ。

まず、スマホの遠隔操作やAIでの生活認識によって、食事の温度調節(温め・冷却・保温・保冷)を実施。

2つ目に、ARグラスを活用したホログラム等により、親がチャットで打ち込んだ内容を喋ったり、子どもの行動に応じたコメントなど、親子のコミュニケーションを支援

3つ目に、ARグラスの耳元に咀嚼センサーを搭載し、子どもがしっかり噛んでいるかモニタリングしたり、虫歯の早期発見を実現。

4つ目に、利用者同士でマッチングできる機能を搭載し、一人で食事する子どもの食事への関心を高め、豊かな食事環境を提供

最後に、Saraでの調理に最適化され、栄養バランスも考慮された食事カードリッジの提供です。

全員が交代しながらプレゼンターを務めるチームも

Saraが重視した点は、食事に関して便利なものや健康的なものは豊富にある中、親子の精神面にもアプローチしたサービスがこれまでないところであり、子ども達の孤食を解消することで、親子のコミュニケーションをはじめ、誰もが継続して築けるキャリアや、契約農家との連携による安心・安全な食品の提供など、サスティナブルなウェルビーイング社会を目指すサービスであることがプレゼンされました。

講評では、テーマ設定への評価や、温度調節機能の技術的実現性、食事における親子のコミュニケーション確保の重要性、育児ニーズが多様化する中での選択肢としての可能性などについて意見をいただきました。

特別対談は後編で

ここまで読んでいただいてお分かりのように、各チームとも熱いプレゼンが展開され、講評者の皆さんからも示唆に富んだ講評があり、会場のボルテージは上がりっぱなしでした。

この数カ月間、受講生の皆さんの学ぶ姿を傍らから拝見していたやまたんにも、受講生のデザイン思考が研ぎ澄まされ、またチーム力が目覚ましく高まって、今日の発表を迎えたことがひししひと伝わってくる、各チームとも本当に素晴らしい発表でした。

受講生の皆さん、本当にお疲れ様でした。ブラボー!!

発表会の様子は、以下のアーカイブ配信でご覧いただけますので、各チームの詳しい発表内容がお知りになりたい方は、ぜひアクセスしてください!

また、発表会の内容が盛り沢山で長文となったので、スペシャルゲスト3名による特別対談のレポートは以下の後編でご紹介しています。貴重な対談内容となっていますので、こちらもぜひご一読下さい!



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