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ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。(鴨長明「方丈記」)

鴨長明は世の中を常に動き、入れ替わり、変化し続けものと捉え、文字で表現しました。

リアル社会ってなんだろう

私たちは「リアル社会って一体なにを意味しているのだろうか?」という単純な問いからプロジェクトをスタートしました。

社会を構成しているのはもちろん人です。「仕事」という目的をもって集まればその組織は「企業」ですし、「勉強」をするために集まれば「学校」になります。

また、意図せずに組織が生まれる場合もあります。例えば渋谷のスクランブル交差点は青信号になるとばらばらの目的を持って渋谷を訪れた人々が(ある人は109へ行こうと、ある人はセンター街へ向かおうと...)一斉に横断歩道を渡りだし、大きな集団(組織)が生まれ、信号が点滅し始めるとその組織は消滅します。渋谷のスクランブル交差点の場合には、「横断歩道を渡りたい」という共通する目的が存在するのでこの組織が生まれています。

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会社も渋谷のスクランブル交差点にも共通していることはなんでしょうか?いくつかありますが、最も基本的だと思われるのは、「ある簡単なルールに従っている」、「人と人とが繋がっている」ことではないでしょうか?

会社などの目的をもって集まっている組織は当然、同僚や上司や部下、または取引先などの人と人との繋がりで成り立っています。会社には部署や業種業界のルールがあります。

では、渋谷のスクランブル交差点は?「人と人との繋がり」というとちょっと語弊があるかも知れませんが、四方八方から人が入り乱れながら前進する中で、「ぶつからないように前進して赤信号になる前に渡り切る」というルールのもと、周囲の人々の動きを観察しながら「あの人が右に進んでるから私は左に進もう」と無意識のうちに「会話のようなやり取り」をしながら多くの人はぶつかりもせずにスルスルと交差点を渡りきっているわけです。

このように、社会とはある規律(ルール)に従う人(ノード)と人(ノード)が繋がっている(リンク)ネットワークを意味しているのです。

リアル社会とは常に変化するネットワーク

また、リアル社会はいつも揺れ動いています。渋谷のスクランブル交差点は信号が青になるたびに人が出たり入ったりして、しかも毎回集団を構成する人々も進む経路も異なります。でも、最近駅周辺に建った高層ビルの上から覗くと、毎度同じような集団のかたちに見えます。

会社はどうでしょうか?社員も役員も毎日入社したり辞めたりはしません(そんな企業もあるのかも知れませんが...)。ですが、年単位でみると構成メンバーは変化し、動いています。ある会社は50年前と今とでは社員も役員も全く異なるのに、依然として同じ会社です。ある社員が辞めるとその社員の枠(ノード)を補充すべく新しい社員を迎え入れ、その社員は前任のリンクを再構成します(しない場合もありますが!)。

つまり、組織というネットワークを構成するノードは常に出たり入ったり変化し続けているのですが、リンクが切れない限り、その組織は存在し続けます。まさに冒頭の方丈記の、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」です(ちなみに、リンク切れすぎて組織の再構成が不可能になるとき、それは組織の「死」を意味します)。

Digital東京の本質

Digital東京はたんにSSIDにタグ付けして街の属性分析をするサービスではありません。常に動き続けているリアル社会を観察し、その組織ネットワークの本質を捉え、デジタル空間上に組織ネットワークを再構成します。

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例えばこの2020年1月2月の人の流れは、毎週きれいに同じような波形が繰り返していますが、その波を構成する人々は同じ人々ではないですし、それらの人々はこの波形を形作るためにやって来るのではありません。でも、おのおのの理由は分かりません(ブラックボックスです)が、結果的に、毎週同じような形が現れます。このとき社会は定常的であり、何もない、いわば普通の日常が流れています。

しかしながら、ある日から急激に凹みだしました。何かの原因でネットワークの状態(相)が変化したのです。私たちは事前にこの理由が非常事態宣言のせいだと知っています。しかしながら、中には理由が良くわからない変化もあるはずです。そのようなコホートごとに異なるであろう社会のフェーズ(相)の変化を観察し、意味や価値を見出すこと、それがオフラインデータの構造化プロジェクトであるDigital東京の本質です。

Oxyzen株式会社

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