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バーチャルメンタルヘルスプラットフォーム "Grow Therapy" のシリーズC資金調達!【4/8発表: 米国デジタルヘルスニュース】

今回ご紹介するGrow Therapyは、バーチャルメンタルヘルスプラットフォームを提供する米国のスタートアップ企業です。同社は、患者、メンタルヘルスのセラピスト、保険会社を結び付ける仲介役のような役回りを担うとともに、患者とセラピストのマッチングのためのプラットフォームを提供しています。

Grow Therapyのウェブサイト画面と利用者向けソフトウェアの画面(Source:PR Newswire

今回の資金調達の発表によると、Sequoia Capitalを筆頭とする投資家グループから8800万ドル(約134億円@4/13時点の為替)のシリーズC資金調達を完了したとのことです。これにより、Grow Therapyは、民間の健康保険に加えて公的保険(メディケイドやメディケア)*の被保険者を含むすべての患者層に対して、価値に基づく行動ケアへのアクセスを提供できるようになります。

*米国では日本と異なり皆保険制度がないため、公的保険は高齢者などの一部の人に限られており、それ以外の多くの人は雇用主等を通して健康保険・医療保険に入ることが一般的です。

同社は、創業から4年ほどで従業員数が1,100名を超えている上に、12,000名以上のセラピスト等と既に契約をしており、更に300万回以上の患者利用があるという状態です。また、24の州で既に利用可能で、米国大手民間保険会社(Aetna, Humana, UnitedHealth, Anthem, Cigna and many Blues plans)を含む75を超える保険会社と契約済です。驚異的です。

米国のデジタルヘルスというと、コロナ禍による影響もあって以前からメンタルヘルス系のスタートアップの数は他の疾患と比べてもとても多く、そろそろ飽和状態になるのかなと個人的には思っていました。

しかし、まだまだSequoia等の著名投資家の大きなサポートを受けているところを見ると、まだまだ解決すべき課題・成長の余地はあるのだな、と感じています。また、メンタルヘルスサポートというと患者さんへの価値提供のところを私は注視しがちなのですが、同社サービスの価値は個人事業主的に活動するセラピストさんの課題解決の力が凄いためここまで伸びているのかな、と個人的には思っています。


About "Grow Therapy"

:米国
創立年:2020年
資金調達ラウンド:シリーズC
主な投資家:Sequoia Capitalなど
総調達金額:約 $178M
サービス:バーチャルメンタルヘルスプラットフォーム
事業モデル:Health Plan(民間の健康保険会社)及び公的保険であるメディケアと契約して売上を立てる。保険被加入者(患者さん)が利用可能。

同社の経営メンバー(Source: Fierce Healthcare


米国におけるメンタルヘルスの課題

近年、米国におけるメンタルヘルスの課題が深刻化しています。特に若者の間で不安や抑うつ症状の増加が顕著で、社会全体への影響も懸念されています。そのため、米国政府もメンタルヘルスの検査を推奨する新たなガイドラインを2022年と2023年に発表しています。

  • 米国予防サービス特別部会(USPSTF)のガイドライン改訂

2023年、The U.S. Preventive Services Task Force(あえて日本語にすると、米国予防サービス特別部会)は、19歳から64歳までの成人に対して、たとえ症状が現れていなくても、不安症の定期的な検査を推奨する新しいガイドラインを発表しました。これは、2022年に発表された8歳から18歳までの子供を対象とした検査の推奨に続くものです。

  • 若者のメンタルヘルス悪化: 2人に1人が症状を経験

KFF(Kaiser Family Foundation)が2023年3月に発表した連邦データの分析によると、18歳から24歳の成人の半数が2023年に不安や抑うつ症状を経験したと報告しています。これは、一方で大人全体ではその割合は3分の1程度のようです。

また、同社は、同社に関わる全ての関係者の課題を解決しようと試みております。三方よし、ですね。

  • 患者視点:オンラインでメンタルヘルスのサポートが受けられるサービスは非常に多いです。ですが、米国ならではの加入している保険のカバー範囲の問題で安価に利用できなかったり、自分が抱える特有の課題にフィットしたセラピストを見つけられない、などの課題があります。

  • セラピストの視点: 患者さんが保険適用範囲内 (英語で表現するところのin-netwokとほぼ同義) でセラピストからサービスを受けるには、セラピストも保険会社と契約してin-netwokに入る必要があるがその負担がある。また、その保険会社への医療費請求や、そもそも患者をマーケティング活動を通して集客しないといけないため大変。

  • 保険会社・公的保険の視点: 医療費をある程度抑えながら質が高く効果のある医療を提供したい。


サービス概要:患者向け&セラピスト向け

冒頭に私の個人的な見解を述べたように、患者さんに対する課題解決の部分だけ見ていては同社の魅力は十分伝わらないと思っています。そのため、患者さんから見た同サービスと、セラピストから見た同サービスの二つの側面についてまとめました。

  • 患者向けサービス:非常にシンプルで使いやすくなっています。使い方としては、1)自分が住んでいる州、加入している保険、メンタルヘルスの症状・疾患名(不安障害、ADHDなど)を選択する、2)セラピストのプロフィール一覧が出てくるのでを表示して、自分にぴったりのセラピストを選択する、3)予約管理画面で予約する、という流れです。

予約までの流れ
セラピストのプロフィール画面。
この画面にすべては収まり切らず、もっと多く詳細な情報が記載されている。
  • セラピスト向けサービス:セラピスト向けのダッシュボードは、セラピスト業務を効率的に管理するための機能が満載です。

  • ダッシュボード: スケジュール、タスク、収益、ショートカットが一目で確認できます。

  • 電子カルテ: 患者さんの連絡先情報を確認したり、サービスを提供した際のセッションの記録を作成したり、治療計画を更新したりできます。

  • 安全に利用可能なメッセージ機能: HIPAA*準拠の通信により、クライアントとのメッセージやファイルのやり取りを安全に行えます。

  • 予約管理: 自分の予定と並べて週ごとのスケジュールを確認できるので、予約漏れを防げます。

  • 無料マーケティング: オンラインディレクトリやセラピスト仲間からの紹介を無料で受けられます。

  • 請求と支払い: ダッシュボードから請求書を提出するだけで、請求業務は同社のチームが代行してくれます。

  • セラピスト向けサポート:セラピストは 患者ケアに専念でき、その他の雑務は同社のサポートチームがフォローします。

  • セラピスト同士のコミュニティ: オンラインコミュニティで何千人もの同社のセラピストと交流し、情報交換ができます。

*HIPAAは米国における医療保険の相互運用性と責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act)の略語です。HIPAAは米国保健福祉省(HSS)を規制当局とし、医療機関・組織に対し、個人データ保護に関するセキュリティ対策を義務付けています。

https://www.sompocybersecurity.com/column/glossary/hipaa
セラピスト向けダッシュボード

最後に

Grow Therapyは、バーチャルメンタルヘルスケアプラットフォームとして、セラピストと患者をつなぎ、質の高いメンタルヘルスケアをより多くの人に提供することを目指しています。

他にも同社と類似の競合他社のサービスもありますが、このようなサービスがお互い切磋琢磨し合いながらより良い医療の実現に向けて進んでいくといいですね。

おしまい。

※このブログ記事は、個人的な趣味で書いているものであり、あくまでも情報シェアのみを目的としています。

参考記事

参考;前回記事

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