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岸田雅裕 『マーケティングマインドのみがき方』 東洋経済新報社,(2010)

この本は10年ほど前に出版された本。で,いろんな人にオススメして貸したりしていて,いつの間に無くしてしまって,また買ってなんてことをしていたら,今はなぜか家に2冊ある(写真参照/笑)。

普通,マーケティングの本だと最初にコトラーとかの話が来て,ビジネス環境の分析の話が来てSWOTだとかSTPとか3C,4P/4Cなんかの話が出てくる。で,販売の話とかブランドの話が出てくるみたいな感じ。

でもこれは,全然そんなことはなくて第1章の冒頭は「財布を落とすとわかること」なんていう全く変なところから始まっていく。でも,そんな中から「マーケティングを考えていくにあたっての基本的な立場というか考え方って,こんなことなんだよね」という風に気持ちの持ち方から入っていくのがとてもフレンドリー。

マーケティングって,企業の根幹にもとても関わってくる概念なんだと思うのだけど,そもそも企業の存在価値って「売上を上げて利益を稼ぐ」ということにあるわけではない。一時,米国で株主至上主義みたいな「会社は誰のもの→株主のもの」みたいな考え方もあったのだけど,今どきはお客さんのものだったり,社会のものだったりな考え方があるし,会社の存在価値というものも社会の中でどのような価値を提供できるのかといった視点で考えるようになってきている。

マーケティングの世界に知識から入ると,どうしても競合会社と戦って勝つみたいな意識が強くなってしまうし,そのためのフレームワークの使い方から学んでいくことになってしまう。マーケティングの世界では,戦略とか戦術とか,ターゲット,ポジショニング,エリアなんて言葉を平気で使うけど,これほとんど戦争の時の言葉と一緒なんだよね。なので,割と勝ったり負けたりという意識が強くなってしまうのだけど,企業としては勝った負けたよりも,どうやってお客さんに喜んでもらって長いお付き合いができるのかを考えていくほうがこれからの考え方だし,多分それは今後も変わらない。

この本は,そんな視点で,堅苦しくなくマーケティングとはどういうようなものの考え方をするのかみたいな内容で話が進んでいく。その中で,知識から入ってしまうと陥りやすい落とし穴,なんかもきちんと押さえてあって,今読み返してもなかなか憎いところをきちんと押さえてあるなぁという印象がある。

最近マーケティングに関わってますとか,知識は学んだけどといった人たち,あるいはズッポリとマーケティングの業務に携わっているんだけど,最近うまくいかないとか疲れたみたいに思っている人は,一度読んでみるといいんじゃないかな。

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