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KISSジーン・シモンズ『ミー・インク』日経BP (2016)

KISSのベーシスト兼ボーカルであるジーン・シモンズのビジネス成功本。

音楽がどうのとかロックの魂とはとか,そんな話は一切ない。
「どうやって音楽で生活していくのか」とかいう視点もない。その事業で利益が出ていないければ,さっさと見切りをつけろとまで言っているくらい。

ただ,そのアイディアとトライアンドエラーの精神はすごいなと思うわけで,自分のバンドのアイデンティティを商標登録しグッツ販売をするというビジネスモデルは先見の明があるとしか言えない。音楽業界ででこれだけの認知率を誇る商標はストーンズのベロとKISSのフェイスペイントくらいでしょ。
認知ということであれば初音ミクも匹敵するかもしれないが,初音ミクの場合には2次創作としてのマーケットコミュニティーの力が大きい。一方でKISSのフェイスペイントもファンコミュニティーではあるが,KISS自体が一元管理している点が違うと言えるだろう。

世の中で,「ロック=不良」というステレオタイプを作ったのかが誰かは知らないけど,彼の手にかかれば「それは,そのように振舞っている」だけである。「KISSはバンドであり,ツアーを行いながらライセンス事業と小売販売事業で利益を得ているビジネス」になるのである。

最後まで「勤勉であれ」「自分への投資」「P/L,B/Sの視点を持て」「常に失敗を恐れずにチャレンジ」が貫かれている点は,いわゆる成功本と同様です。

しかし,多角経営にもほどがあるだろうという感じで,なかなか面白うございました。なんかね,手広くやってる女好きの地方のおっちゃんそのまま(笑)。

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