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PMF(プロダクト/マーケットフィット)とはなんぞや

<Product/market fit >
Product/market fit means being in a good market with a product that can satisfy that market.
製品/市場に適合するとは、その市場を満足させることができる製品を持って、良い市場にいることを意味します。
出所:https://en.wikipedia.org/wiki/Product/market_fit#Interpretations

PMFは経営学でいうポジションニング派なのかという疑問

PMF(プロダクト/マーケットフィット)って,何だろう。「良い市場にいる」ということは,いわゆるポジショニング派とどう違うのかな?

しかし,スタートアップ系の人たちって言葉を作るのはとてもうまいなぁ,と思いつつ,何が「現在のビジネスシーン」を示すヒントになるのか?という点で考察をしてみようかと。

経営戦略理論におけるポジショニング派とケイパビリティ派

経営戦略の歴史を少しだけかじってみると,大きな二つの潮流があり,一つはポジショニング派で,もう一つがケイパビリティー派と呼ばれています。
※詳しくは下で紹介する「経営戦略全史(確立編)」あたりを読まれるとよくわかります。この本は漫画ですが,とてもわかりやすくおすすめです。

ポジショニング派とは,企業は利益を出すのが目的であるので,自分たちの提供する商品やサービスがもっとも価値が高く利益の出るマーケットをどのように選択するのか(あるいは構築するのか)が重要であると考えます。ポーターは,それを実現するためには「徹底的に差別化の可能な市場を選択する差別化戦略」か,「コスト的に優位に立つ立てるマーケットを選択するコストリーダーシップ戦略」か,それとも「ニッチ市場に集中する」のかの三つの戦略があると語っています。

一方,ケイパビリティー派とは,ポジショニングだけじゃなくて「7S」と呼ぶ戦略(Strategy),組織(Strcture),プロセスや制度(System),人材(Staff),スキル(Skills),経営スタイル(Style),価値観(Shared Value)といった要素が大切であり,いわば企業としての総合的な能力の方が大切と語っています。代表的な例としては,ピーターズの著作「エクセレントカンパニー」が有名です。

で,その後も色々な考え方が出てくるのですが,基本的には「儲けられるマーケット(ポジショニング)」に重きをおくのか,それとも「儲けられる組織(ケイパビリティ)」を重視するのかみたいな考え方の違いといっても良いでしょう。

ケイパビリティ派のポジショニング派への反論

また,ケイパビリティー派はその後,実は同じマーケットにいても企業によっては収益率や企業力が異なるケースがたくさんあるのはなぜだろうか,という疑問から,経営資源(=土地や工場などの有形資産+ブランドや特許などの無形資産+7Sのケイパビリティ)に着目し,資源の使い方が良ければ持続的な競争優位説につながるのだというリソースベースドビュー(RBV/Resource Based View)の考え方に発展していきます。

ポジショニング派の主張とPMFの類似性

で,論争の中でポジショニング派のポーターが提示しているのが,「商品サービスの集中」「顧客のニーズへの対応」「アクセスのしやすさ」なのですが,これが現在のスタートアップで注目されているグロースハックやアジャイルな商品開発と重なり合うといわゆるプロダクトマーケットフィットという考え方と合致するのではないでしょうか。

つまり,
・自分たちのコアとなる商品やサービスに集中する
・まずは世に出し,顧客ニーズやジョブを理解し顧客を作る
 →マーケットを作るのが先。顧客ニーズへの対応とアジャイル的な開発
 →「顧客を作る」という部分はキラキラした言い方だと「顧客の共感を掴む」と言えるでしょう。
・顧客とのスムースなアクセスを確保する。
という感じですね。

さらに、これを顧客のニーズをダイレクトに取り入れるビジネスモデルと組み合わせるとD2Cという考え方にも繋がっていくのではないかなと思います。

臨機応変なコンフィギュレーション

ただし,これだとポジショニング派の主張を現代風に取り入れたスタイルにしかなりません。どういうことかというと,経営戦略の流れにおいては,ポジショニングが大事なのかとかケイパビリティ(RBV)が大事なのかという2極的な論争ではなく,両方のバランスを保ったマネジメント(コンフィギュレーション)であるべきであるとも考えるようになってきています。そうすると,上記のポイントがポジショニング派の現代版焼き直しだとすると,ケイパビリティー(RBV)派の現代版焼き直しも導入する必要が出てくるのです。

つまり,Product/market fitに着目しすぎて商品とマーケットの適合性のみを考えるだけでは,ポジショニング派が批判されたのと同じように「同じマーケットにいるのに企業によっては収益率も成長率も異なっている状態」,最悪の場合には「マーケットは正しいのに自社だけが成長しない」という状態になってしまう可能性があるのです。さらには,もしそのような状態になった場合に,商品とマーケットについての視点だけでは,そこから抜け出す方法を探すことができないとも言えるのです。

まとめ-PMFが有効なのはスタートアップ時のみ,囚われ過ぎるのはNG

ですので,スタートアップとはいえProduct/market fitに囚われすぎることなく,発展期におけるポジショニング重視の戦略と,状況に応じてスケールあるいは事業強化のためのRBV視点の戦略をきちんと意識することが必要になってくるのだと言えるのではないでしょうか。



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