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2021逆噴射小説大賞マガジン:読ませていただいたリスト

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記事一覧

限界共存リインカネーション

 世渡の今日は最悪だった。寝起きから神を名乗る精神異常ロリに求愛された次に薄い本ツル植物…

能田町交番、状況番号00

 夕闇差し迫り、しとしと雨の降る晩秋のある日。  能田町交番の脇に停まったカブから白菜と…

朝昼兼
2年前
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首と胴体の大戦争

「本当に、まさか麻薬が切れるとは思わなかったな」 獄門市市長、キョウジは嘆息した。首だ…

ベアー・コスチューム・カーレース

 車の中に、クマがいた。  厳密には、運転席に乗り込み、エンジンをかけ車を走らせたところ…

宮塚恵一
2年前
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レンズ越しのおっさん

 「もうちょっとこっち寄って~」と言いながら彼女を引き寄せる。上手く撮れたかな、と確認し…

半私半消
2年前
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アガットの鍵

「足痛くない?メローネ」 青年は少女に声をかけた。 黒い岩が転がる砂漠。 道無き道を進む…

最速箒伝説 Black Bamboo

 始まりは弾圧からの逃走技術だと言われている。やがて弾圧もそれを行っていた者どもも消え去り、その技術だけが遺された。  日本。AM12:00。晴れ。湾岸を流していた魔女のサリはすぐ前に箒乗りがいることに気がついた。サリのカスタムした樫の箒とは違う、ただの真っ黒な竹箒だ。だが丁寧に作られた箒であることは走りでわかる。 (へえ、乗り手もオールドスタイルってワケ)  三角形の帽子に黒のケープを着た顔の見えない相手にサリは短く口笛を吹く。相手が口笛を返せば勝負を受けたことになる。暗闇

恋の猿島

拝啓、カムラさんへ。 久しぶりの連絡が手紙なのは、どうしてでしょうね—— 当たり障りのな…

ばぷる
2年前
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人を呑む家

「人間を呑む家、というのがあるんだとさ」 羽田谷大輔は目の前の空き家を指さした。 羽田谷…

ヒプノシストラップ・オブ・ザ・エイリアン

 母は僕の手をがっしりと掴み、僕を睨みつけると頬を引っ叩いた。 「本当に馬鹿な子」  母…

宮塚恵一
2年前
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ダンジョン素潜り師 全裸のゼンジ

 どこまでも通路が伸びる赤い迷宮。地面が光り、闇の中で焚火をしているような空間であった。…

The Canon's back, or New Problem.

 すう、と呼吸を整える。すえた空気に混ざる、リン化合物の臭い。 「AGHRRRR!」「AGHRRRR!」 …

KOPE
2年前
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ラベージブリンガー

 気づいた瞬間、私の拳は眼前の男を殴りつけていた。  顔面に突然の一撃を受けて表情を歪め…

bluebird_kndk
2年前
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我らが風紀委員長

「先生、現代史資料集のこの部分なんですが……」  その生徒は授業用端末を差し出しつつ、困惑と諦めが混じった声色でそう言った。こういう相談を受けるのは何度目だろうか。  受け取った端末の画面を確認すると、それは21世紀初頭の産業について説明するページだった。情報通信技術の進化について説明する文章の後に、検閲済みと表示された空白。 「……確かに資料写真が非表示にされてるね」 「ここって現代産業の話ですよね。古い歴史とかで基準に合わない資料があるのはまだ分かりますけど……」 「