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食品の表示にまつわるお話②~糖質・糖類・カロリーゼロと甘さひかえめ~

こんにちは。管理栄養士のTany.(タニィ)です。
食と健康に関する、小難しい国の基準や法令をわかりやすく伝えています。
今回は、食品表示法の中でも細かいところ、でも知っておくとちょっといいかも?ということをお伝えしたいと思います。

食品表示法にある栄養強調表示の基準

毎日の生活の中で、特定の栄養成分の不足や摂りすぎが気になることがあるかもしれません。
そんな時に、鉄分供給、食物繊維豊富、ノンカロリーなど、ある栄養素が多く入っている、もしくはあまり含まれていない、という強調表示があると、選ぶ際にとても便利です。
ただしこれらにも、どのくらい入っていたら栄養素が多いとか含まれていないとか言えるのか?の基準が決められています。
この基準を知っていることが、自分自身が求めている商品なのかどうかを見極める手助けとなります。

本来は一人ひとり必要な栄養素量が違うのですが、それをきちんとしようとすると完全オーダーメイドの商品開発が必要になってしまいます。それは至難の業ですね。
そこで日本の標準的な人を想定し、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」からその人の1日当たり栄養素の摂取の目安を定め、それを基準値としています。
その基準値は事業者向けガイドラインの48ページ(PDF56ページ)に記載されています。

<事業者向け>食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン 第3版
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/food_labeling_cms206_20201001_02.pdf

「1日に必要なビタミンC・・・」「1日の1/2の食物繊維が摂れる・・・」などの表現は、この基準を参考にしています。
(18歳以上、基準熱量2,200cal、等)

また事業者向けガイドラインの51、52ページ(PDF59、60ページ)には、栄養成分の高い、含まれる、強化された、含まない、低い、低減された、の基準も書かれています。

下の図1は、栄養成分の補給ができる旨の表示(多いことを示す)、栄養成分または熱量の適切な摂取ができる旨の表示(少ないことを示す)についてまとめたものです。

図1

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【含む旨を表示したい場合の基準値】
(例1)たんぱく質
たんぱく質は100g(ml)あたり栄養素等表示基準値の10%(5%)または100kcalあたり栄養素等表示基準値の5%と定められるため、
100gあたり8.1g、100mlあたり4.1g、100kcalあたり4.1g以上であること

(例2)食物繊維
100gあたり3gまたは100kcalあたり1.5g以上であること

【高い旨を表示したい場合】
【含む・・・】の基準の2倍量以上であること

【低い旨を表示したい場合】
(例3)熱量(エネルギー)
100g(ml)あたり40kcal(20kcal)以下であること

(例4)ナトリウム
100g(ml)あたり120mg以下であること

【含まない旨を表示したい場合】
(例5)熱量(エネルギー)
熱量は100g(ml)あたり5kcal以下であること

(例6)ナトリウム
100g(ml)あたり5mg以下であること

それ以外にも、強化された、低減された、という表現がありますが、これには従来品に比べてどのくらい差があるかの基準値が設けられています。
それに加えて、特定の栄養成分では、その差を25%以上とすること等厳しい基準が設けられているものもあります。

低カロリー、カロリーゼロ等書いてあると、ダイエットをしている人にとっては心強く思えるかもしれませんが、
飲み物でいうと上記の例の通り、熱量が「低い」は100mlあたり20kcal以下という基準ですので、500mlに換算すると100kcal以下となります。ペットボトル飲料1本で100kcal以下が低カロリーに感じるかどうかはその人によると思いますが、低カロリーも積み重なると摂りすぎになるかもしれません。
熱量を「含まない」も同じく、100mlあたり5kcal以下という基準ですので、熱量(カロリー)が全くのゼロでないことがある、ということは知っておいた方がいいかと思います。

糖質と糖類の表記による混乱

最近は糖質を制限するダイエットを行っている人もいるため、栄養成分表示において任意表示とされている、糖質、糖類が表示されているものを見かけるようになりました。糖質をあえて表示する場合は、推奨表示になっている食物繊維もセットにして表示することとなっています。

炭水化物の分類は図2の通り糖質と食物繊維の2つであるため、図3の通り栄養成分表示では糖質(g)と食物繊維(g)の合計が炭水化物(g)であることがわかりやすいように一字落としで表示してあります。
また糖質の中でも糖類の表示をする場合も、糖類が糖質の一部であることがわかりやすいように、糖質表記からさらに一字落としとなっています。

図2 炭水化物の分類

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図3 栄養成分表示例

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「糖質ゼロ」と「糖類ゼロ」は似たような表現に見えますが、「糖質ゼロ」は糖質(糖類+オリゴ糖+多糖類+糖アルコール)が含まれない基準を満たしているものですが、「糖類ゼロ」は、糖類(ブドウ糖や砂糖、果糖など)が含まれない基準を満たしていればよいので、それ以外のオリゴ糖や多糖類、糖アルコールは含まれていても問題がないのです。
糖質の摂取が控えられると思って「糖類オフ」や「糖類ゼロ」の商品を購入しても、糖質の摂取が控えられるとは限らない、と考えて、栄養成分表示をしっかり確認することをおすすめします。

実は基準がない「うすしお味」「甘さひかえめ」

減塩、低カロリーなどは基準値があって、それをクリアしないと表示できないのですが、うすしお味、甘さひかえめなどは味覚に関する表現なので基準値がありません。
したがって、メーカーが異なる似たような商品の間で、含まれている食塩相当量や糖類の量があまり変わらないにも関わらず一方にだけ「うすしお味」「甘さひかえめ」と表示されることがあり得ます。これも栄養成分表示を比較してみることで選び間違いを防ぐことができます。キャッチコピーなどに惑わされないようにしたいですね。

以上、参考になれば嬉しいです。

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≪参考資料≫
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200415_01.pdf
消費者庁/食品表示法

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_201009_1.pdf
消費者庁/食品表示基準

https://www.maff.go.jp/tohoku/6zi_koudou/attach/pdf/190718gaiyou-2.pdf
消費者庁/食品の栄養成分表示について

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/food_labeling_cms206_20201001_02.pdf
<事業者向け>食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン 第3版


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